世の中にある数多くのデータを用いて、課題を解決する方法を導き出していく「データサイエンス」の世界。データサイエンスは社会人として必要なスキルであるばかりでなく、今や大学入試の小論文にも活用される分野だけに、未来を生きる高校生にとって必要不可欠な学問といっても過言ではありません。指導にあたる数学科主任の重住洋貴先生にお話を伺いました。
世の中にある数多くのデータを用いて、課題を解決する方法を導き出していく「データサイエンス」の世界。データサイエンスは社会人として必要なスキルであるばかりでなく、今や大学入試の小論文にも活用される分野だけに、未来を生きる高校生にとって必要不可欠な学問といっても過言ではありません。指導にあたる数学科主任の重住洋貴先生にお話を伺いました。
下北沢成徳高等学校では今、データを“見る”“集計する”“扱う”の3つの力を養成するために、高2生全員が授業としてデータサイエンスを学んでいます。指導にあたるのは数学科主任の重住洋貴先生です。
「本校では高2生全員がデータサイエンスを学ぶ目的について、『物事を多面的な視点で取り組めるようになってほしい、考えられるようになってほしい』と定めています。例えば、ヘルメットを被らせた幼児を自転車に乗せ、保育園へと向かうお父さん、お母さんの姿は街中によくある光景ですが、『なぜお父さん、お母さんの多くはヘルメットを被っていないのだろう?』と、疑問に思ったことはありませんか? そのヘルメットの装着率をある期間、統計としてまとめ、その数字から社会問題として問題提起していくのがデータサイエンスの世界なのです」
世の中にある物事の疑問を、主観ではなく多面的にとらえ、考えていくところにデータサイエンス活用の面白さがあるようです。
「データサイエンスという言葉自体は難しく感じるかもしれませんが、実際に取り組んでみると、自分がなんとなく疑問に思っていたことの一つひとつが、数字によって解き明かされることに面白さを感じる生徒が続出します。なお、データサイエンスの授業を通して身につけたスキルを基に、生徒たちは夏休みに『東京都統計グラフコンクール』への応募に向けた作品を制作するのも一連の流れとなっています」
高2でデータサイエンスに触れることにより、大学に合格するための暗記主体の“受験数学”から、数学本来の面白さに目覚める生徒が増えていると重住先生は強調します。より良い人生プランを設計するためにも、もはやデータサイエンスは誰にとっても必須の学びと言えそうです。
「初めてデータサイエンスという言葉を聞いた時、私は少し不安でした。なぜなら、パソコンでExcelを使うのが苦手だったからです。表やグラフから必要なことを読み取るのがデータサイエンスの基本と言われても、ちょっと無理かな……と思いました」
そう話す西村さんですが、実際にデータサイエンスに触れてみると、意外に自分と相性が良いことを感じたと振り返ります。
「そのきっかけは、データサイエンティスト協会(以下、DS協会)によるデータサイエンティストの仕事体験(名称『データサイエンス講座』)を、学校で開催してくれたことでした。データサイエンティストの方々が、現代社会においてどのような仕事をしているのかという概要から入り、実際にその仕事の一部を体験できるプログラムです」
ちなみに、『データサイエンス講座』の課題は、生徒一人ひとりがコンビニエンスストアのデータサイエンティストになって、新たな出店計画を立てるというものです。提示された3つの候補地のなかから、どこに出店したらよいかを各グループに分かれて考えていきます。
「感想を一言でいうと、コンビニの出店計画は意外と楽しかったです。ただ公式を覚えるのが大変で、正直、そこは苦労しました。それでも公式がスッと頭の中に入ってしまうと、すぐさま、どのデータを読み取ればいいのかということが自分で判断できるようになるのです。それ以来、いつも利用している家の近くにあるコンビニの経営状況にも関心を寄せるようになりました」
「小学生の頃から“海洋汚染問題”に関心がありました。ただ、海洋ごみに関するデータは膨大すぎるので、どのデータを使えばいいのか迷いました。そこで役に立ったのが、データサイエンスの授業で学んだ知識でした。統計ポスターの制作にあたり、工夫したのは見せ方です。淡いパステル調の色使いをベースに、どの年代の人が見てもわかりやすいように、円グラフや棒グラフを大きめに描きました」
「はじめは『データサイエンスって何?』という感じでしたが、私が興味をもっている経済分野と関連があると聞き、だったら思い切って挑戦してみようと思いました。データサイエンスのなかに『統計』があることを知ったのも大きかったですね。高校段階で早くも大学で学ぶことを先取りできたことは、私にとってとても有意義なものになりました」
楽しそうに話す髙橋さんを終始支えてくれたのは、わかりやすい説明で指導してくれたDS協会から派遣された講師の先生方でした。
「DS協会によるデータサイエンティストの仕事体験(『データサイエンス講座』)は、未知なるものとの出合いとでも言いますか、大学進学からその先の世界を模索中の私にとって、新たな世界観を与えてくれるものでした。各種データ分析に必要な公式や専門用語を覚えることは簡単ではありませんが、“何のために学ぶのか”という目的が明らかになると、集中力が高まることを実感できました」
一方、下北沢成徳には高2生全員が参加する『未来探究』というゼミナール形式の活動があります。経済分野に関心を寄せる髙橋さんは、この『未来探究』でジェンダー平等に取り組んだ生徒でもあります。
「もともと経済系の学部・学科に進学したいと考えていましたが、高3の夏を迎えた今は、“ジェンダー”と“経済”を関連付けて学ぶことができる学部・学科に絞り込んで勉強しています。こうした具体的な進路を描けるようになったのも、高2でデータサイエンスの面白さを体験できたことにあると考えています」
「私は以前から“フォーマルな場面における女性の装い”に関心がありました。下北沢成徳の制服にはスラックスもあり、寒い冬はとても便利なのですが、世の中にはまだまだ“女性の正装と言えばスカート”といった固定概念も少なくありません。私はそんな社会を変えるきっかけになったらと思い、“ジェンダー平等”と“正装“について考察してみました。黒地にピンクのタイトルで、統計グラフの意図を強調しました」
この学校の掲載記事をピックアップしました。