2年連続で東京大学への現役合格者を出している狭山ヶ丘高等学校。先生方はどのような進路指導を心がけているのでしょうか。進路指導部長の市成敏明先生と、昨年度まで3年間「難関国立進学コース(I類)」の担任を務めていた石田慎介先生に、その“こだわりの指導”について語っていただきました。
2年連続で東京大学への現役合格者を出している狭山ヶ丘高等学校。先生方はどのような進路指導を心がけているのでしょうか。進路指導部長の市成敏明先生と、昨年度まで3年間「難関国立進学コース(I類)」の担任を務めていた石田慎介先生に、その“こだわりの指導”について語っていただきました。
市成先生進学校である狭山ヶ丘高等学校には毎年、「高いレベルで大学受験に臨もう!」と、そんな意欲ある生徒たちが大勢入学してきます。
石田先生そうですね。本校には、「難関国立進学コース(Ⅰ類)」、「特別進学コース(Ⅱ類)」、「総合進学コース(Ⅲ類)」「スポーツ・文化進学コース(Ⅳ類)」の4コースがあります。そのなかで私が2021年度から3年間、担任として受けもったのがⅠ類の生徒たちでした。
市成先生私もⅠ類の生徒たちの英語を担当していましたが、実に仲が良いクラスでしたね。付属中学校からの内進生と、高校受験を経て入学してきた生徒たちが“ポジティブに刺激し合っている”関係とでもいいますか、お互いに「頑張るぞ」というような、ある意味とてもひとつになったクラスだったような気がします。
石田先生中高を6年間のタームで学ぶ内進生の場合、公立から来た生徒の進度に比べると、内進生のほうが主要教科の進度が少しだけ速いので、高1最初の成績ランクでいきなり上位に名を連ねる生徒が出てきます。ですから高校から入った生徒たちには、「あれを越すぞ!」と言っています。
市成先生気合いを入れるわけですね。
石田先生そうです。一方、内進生には、「抜かれるぞ!」と(笑)。
市成先生意欲をかきたてるわけですね。
石田先生はい。そうはいっても高校生同士ですから、両者に溝のようなものは全くありませんが、ライバル心はあったと思います。逆に、そうした雰囲気を生徒たちが楽しんでいるというか、お互いを尊重し合っているところもクラスの結束につながったと思います。
市成先生わかります。もっというと、「ライバルだからお互いの手の内を見せない」ということではなく、教え合う、学び合うという雰囲気が醸成されているのが、石田先生の受けもったⅠ類の特徴でしたね。今どきの高校生の心の優しさと、そうはいっても「自分は絶対に第一志望の大学に行くんだ」という強い意志が、バランスよく備わっている感じですね。
石田先生難関国立大学をめざすⅠ類といっても、勉強ばかりしているのではなく、部活動との両立で頑張っている生徒もいれば、クラス全員が団結して学校行事にも取り組むというのが、狭山ヶ丘高校の良さでもあります。
市成先生そんな雰囲気から、今春(2024年度)の大学合格実績として、学校全体で国公立大学=45名、早慶上理とICU(国際基督教大学)=43名、GMARCH=121名という好結果が生まれました。石田先生のクラス(Ⅰ類)では、具体的にどのような進路指導をされたのでしょうか?
石田先生ベースになったのは“3年計画による進学指導”というものです。めざすところは、あくまでも第一志望の大学にチャレンジさせるということです。
市成先生学力が思うように伸びなかった場合、「1ランク下げよう」となりがちなところを、初志貫徹で「もっと頑張っていこう!」ということですね。
石田先生そのとおりです。高2の最後には全員が第一志望の大学を絞り込んで、「自分は〇〇大学を受験します」と公言する状態にもっていきました。同時に、共通テストの点数を見るまでは、「志望校を変えたほうがいいのでは」という話は一切しないことを約束しました。
市成先生そうした場合、途中で保護者は不安になったりはしませんか?
石田先生なるでしょう。だからこそ、保護者会ではっきりと「そういう方針でやっていきます」とお伝えしました。「お父さん、お母さん、どうか口出しをせずに見守ってあげてください」ともお願いしました。
市成先生私もそこが大事だと思います。なぜなら昨今の大学入試そのものが、親御さんが経験した頃とは全く異なるものだからです。したがって、どのコースにも共通して言えるのは、第1に、生徒もそのご家族も含めて、漠然とした不安感を払しょくしてあげること。第2に、「自分はこの大学を堂々とめざしていいのだ」という、そんな励ましを送り続けることだと考えています。
石田先生ところで、本校の進路指導の特色として、「進路ガイダンス」の充実が挙げられますね。
市成先生そうですね。「進路ガイダンス」は各学年、各学期に数回コース別に行っています。その目的はただ一つ、第1志望の大学に向けた、“明確な目的意識をもたせる進路指導”を徹底している点にあります。
石田先生私の指導ポイントの一つもそこにありました。「志望校のランクを下げるのは、受験勉強をやりきってからにしなさい」とか、「現役で戦えないのだったら浪人しても無理だよ」とか、そういう強いメッセージを高1の時からずっと変わらずに投げ続けていました。
市成先生なるほど。大学受験というものは時々、大きな不安に襲われることもあるデリケートなものです。だからこそ、本校の卒業生を招いて行う「進路講演会」も有効なのです。
石田先生「進路講演会」は良いですね。自分と年齢差が少ない先輩の受験体験記だからこそ、生徒たちも真剣に耳を傾けやすいですからね。
市成先生そうです。東大に現役合格を果たした先輩の話だけでなく、最難関の私立大学に進学した先輩たちの話もリアルに胸へ迫ります。特に心に響くのは、どの卒業生も「塾や予備校に行かなくても合格した」「だからあなたたちにもできるんだ」と、確信を込めて語ってくれる言葉です。私たちにとっても本当にうれしい言葉です。
石田先生そもそも頑張っていない生徒はいないわけですから、保護者には、「絶対にダメ出しはしないでください」とも伝えるようにしています。逆に生徒たちには、「成績はきちんと自分から見せるように」とも伝えています(笑)。大学受験の主役はもちろん生徒たちですから、私たち教員は生徒一人ひとりを、まず信頼してあげることも大切にしたいと考えています。
市成先生石田先生は大学受験に臨む生徒たちに対して、教員としてどのようなスタンスで臨むことがいいと考えていますか?
石田先生核になるのは「対話」だと考えています。もちろん、ただ単におしゃべりするということではなく、こちらからメッセージを投げかけるだけでもなく、生徒のほうから教員に向けてメッセージを発信してもらうことを意識した対話を心がけています。
市成先生たしかに生徒たちのほうから話しかけたくなる、そんな雰囲気をつくることは重要です。まさに相手の胸に響く、“言葉のキャッチボール”ですね。
石田先生だと思います。こちらの目線を生徒の目線に下げてしまったら、それこそ世間話になりますが、そうではなく、きちんとした面談などの場で、生徒が考えていることを自分の口から言わせるような下地を普段からつくっていくということです。
市成先生生徒一人ひとりのやる気を喚起させて、モチベーションを高く維持してもらう進路指導ですね。それはもう本校の進路指導の大きな特色といっても過言ではありません。
石田先生どこの大学を出たかではなく、「大学で何を学んできたか」が本当に問われる時代になりました。だからこそ、「自分はこれをやりたくて、頑張って進学した大学の学部・学科がここです」と、胸を張って未来をつくっていってほしいと思っています。
市成先生本当にそうですね。「自分はどうして大学に行くのか?」とか「大学で何をしたいのか?」とか、自らに問い続けた結果として、それぞれの第1志望校への進学が実現するのですから、その熱い想いは最後の最後まで貫き通してもらえるよう、私たちも全力で応援したいと考えています。
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