
原田 豊 校長先生
1958年、東京都出身。大学での卒業論文は「夏目漱石の思想」。大学卒業後に淑徳与野高等学校の教壇に立つ。その後、浦和学院高等学校の教頭を経て、2009年、東京都市大学等々力中学・高等学校の副校長に就任し、共学化に向けた準備及び進学実績向上のためのシステム構築に尽力する。2012年、同校校長に就任。2024年春、武蔵野大学中学校・高等学校の校長に就任。
原田 豊 校長先生
1958年、東京都出身。大学での卒業論文は「夏目漱石の思想」。大学卒業後に淑徳与野高等学校の教壇に立つ。その後、浦和学院高等学校の教頭を経て、2009年、東京都市大学等々力中学・高等学校の副校長に就任し、共学化に向けた準備及び進学実績向上のためのシステム構築に尽力する。2012年、同校校長に就任。2024年春、武蔵野大学中学校・高等学校の校長に就任。
高校時代、国語を教えてくださった恩師がいました。その先生は教育に関して揺るぎない信念をもっており、指導はかなり手厳しいものでした。授業が始まるまでに小説ならあらすじを、評論文なら要約をノートにまとめておかないと厳しく叱責されるのです。そんな先生が私にとって決して忘れてはならない恩師となるのです。
当時、文化祭で私たちのクラスは映画を撮影して上映しました。脚本を担当したのは私です。それを読んだ先生は「誰だ? これを書いたのは?」と教室に響きわたるような声で叫びました。私はまた何か間違いをして怒られるのかとどきっとしていたのですが、先生は私の書いた脚本の出来を褒めてくださったのです。しかも、絶賛してくださいました。
私はもともと思想書や歴史書が好きでした。そこに厳しい先生から脚本を評価していただいた喜びも手伝い、大学で国文学を専攻することに決めました。そして「将来は教員になろう」と思いました。高校には、この恩師をはじめ、個性豊かな先生方がそろっており、自分の考えを自由に自信をもって生徒に語っていました。その姿に魅力を感じていたからです。
大学を卒業した私は、私立の高校2校で教えた後、東京都市大学等々力中学・高等学校に移り、副校長・校長として15年間務めました。そして2024年の春から本校の校長に就任することになりました。本校は『熱量』と『チャレンジ』をテーマに探究活動などに力を注ぎ、進路実現と人格向上、そして『well-being(ウェルビーング)』をめざす学校です。『well-being(ウェルビーング)』とは「皆が幸せを感じること」を表します。そこで、思考力や対話力を鍛え、将来、世界に貢献するための次世代型の授業や多彩な行事が用意されています。いずれも『熱量』と生徒の満足度の高さが伝わってきます。
また、一人ひとりの夢を叶えるためにコース制を導入しています。コースは、医学部や国公立大学・難関私立大学をめざす『ハイグレード』、海外大学や国内にある国際系難関私立大学をめざす『PBLインターナショナル』、併設の武蔵野大学も視野に幅広い進路をめざす『本科』の3つです。どのコースも生徒たちのプレゼンテーション力やICTツールを使いこなす力は高く、学校は活気にあふれ、進学実績も向上しています。
私は校長として、こうした本校の教育をさらに充実させ、生徒の可能性をこれまで以上に伸ばしていきたいと考えています。その最も重要な力となるものが、「メタ認知能力」というものであります。もう少しかみ砕いて言えば、「自学自習力」と言ってもいいでしょう。この力を身につけさせるために現在、本校が活用しているさまざまな学習アプリケーションなどを整理しながら、一つのシステムを作っていきたいと思っています。
ただ、新たなシステムを作る以外にも、教師が普通に行っている毎日の授業のフレームワークをそろえるだけで、生徒の自学自習や基礎力は定着するものだと考えています。もう少し具体的に言えば、授業の最初は、本時の目的や学ぶ意味を「ガイダンス」して「展開」に入ります。授業の終わりは学んだことを明確にして「ふり返り」、それを使って解ける「課題」を提示します。後は課題が取り組まれていることを「確認」し、十分でない生徒にはきちんと「再指導」や「コーチング」をする。この6つのスキームがどの授業においても確立されていれば、生徒の自学自習力と各教科の基礎学力はますます高まると考えています。
最近、「問題を解決する力」ということがよく言われています。しかし問題を解決する力以上に、問題意識をもち続けられる力が大切です。社会にある諸問題はそう簡単に解決するわけではありません。一生をかけて取り組むべき課題です。問題解決に向けた、人の心を揺さぶるプレゼンテーションは技能として必要でしょう。しかし、これはあくまでも途中経過に過ぎません。「プレゼンが成功した。みんなを感動させた」という達成感だけで完結させるのではなく、「自学自習力」によってさまざまな問題に対する解決策を常に考え続けられるようになってほしいのです。
もうひとつ重要なものが、常に不動の一点を見つめて生きるプリンシプルをもつことです。プリンシプルとは「主義」や「信条」を意味し、生き方の大原則となります。誰からも尊敬され、真のグローバルリーダーとして社会に貢献する上で必要不可欠な要素です。本校の精神は、仏教の根本精神を基礎とする人格教育です。本校ではこの精神に基づき、自分自身を見つめ、思いやりや感謝の心を育む教育を実践しています。この精神こそ、プリンシプルになり得ると思うのです。
本校には黙念して手を合わす「朝拝」の習慣や、「宗教」の授業があります。プリンシプルを胸に高い志をもった生徒を育てるために、これまで以上に仏教の精神にふれる機会を増やしていきたいと考えています。
本校で学ぶ生徒には、こうした姿勢や力を培うとともに、失敗を恐れずにチャレンジしてほしいと思います。そして、失敗を何度も繰り返し、その失敗を通して、強い心を培ってほしいと考えています。
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