
大成高等学校では、2023年度よりセブ島(フィリピン)での海外研修がスタート。夏休みの2週間、ホテルに滞在しながらビサヤ諸島にあるフィリピン大学のキャンパスで研修を行い、フィールドワークに取り組む体験型語学研修です。初年度となる2023年8月、高1から高3までの生徒15人が参加しました。
従来、海外研修はオーストラリアでの語学研修として実施していましたが、コロナ禍による中止期間を経て渡航先をセブ島へ変更したのには、「語学を学ぶだけでなく、世界の社会課題を考えるきっかけにしたい」という思いがあったのです。研修に同行した英語科の大高先生にお話を伺いました。
「このプログラムは語学研修にとどまらず、SDGsの基礎知識や社会問題を学んだうえで、ワークショップに参加します。例えば環境問題であれば、午前中にフィリピンのゴミ問題や貧困について学び、午後にはかつて『スモーキーマウンテン』と呼ばれた場所を見学します。『スモーキーマウンテン』は、幾重にも蓄積されたゴミが自然発火して煙を上げていたことからそう呼ばれています。周辺にはスラム街があり、そこに住む人々、特に子どもたちがゴミを集めて生活していることが問題となっていました。今は国の政策でゴミ処理場となっていますが、ゴミを集めて生計を立てている人たちの仕事をなくすわけにはいかないという問題もあります。
このように、世界には簡単に解決しない問題があることを知り、どうしたらいいのかを考えることも、このプログラムの一つの目的です。
プログラムを企画しているのは「教育が国を変える」という理念のもとに活動しているNGO団体で、SDGsにもある「すべての人に教育を」の目標を軸にプログラムを作っています。そのため2週間の研修期間中には小中高校生との交流があります。現地の生徒・児童と日本の高校生との交流を通して、教育機会を提供することが目的です。
トイレやお風呂など生活習慣の違いから、同世代の人たちが何を考え、どんなことを感じているのか、自分たちと共通することと違うことなど、生徒一人ひとりに多様な気づきがあったと思います。フィリピンは比較的近く、日本と比べたら物価も安い国です。将来、仕事で関わることもある人たちとの交流は、今すぐではなくとも、将来何かの役に立つはずです。
何よりも、15人の仲間と一緒に取り組んだ経験は、普段の学校生活には見られない人間関係を築くことができたようです。“数値化”できないこの経験は、長い人生において、きっと豊かなものをもたらしてくれるはずです」