栄東高等学校の2年生が、校外ALとして2023年11月に沖縄・長崎・福岡の3県10カ所を巡る旅に参加しました。現地での体験をより有意義なものとするために、事前学習として班別に各地の歴史・文化、見どころなどを調べ、知見を深めたうえで参加。参加した高2の2人にお話を聞きました。
栄東高等学校の2年生が、校外ALとして2023年11月に沖縄・長崎・福岡の3県10カ所を巡る旅に参加しました。現地での体験をより有意義なものとするために、事前学習として班別に各地の歴史・文化、見どころなどを調べ、知見を深めたうえで参加。参加した高2の2人にお話を聞きました。
Iさんまず沖縄でイメージするのは「温暖な気候」「米軍基地」「首里城」「美しい海」「シーサー」で、長崎は「原爆の被害」「異国情緒あふれる街並み」「島が多い」ですね。
Uさん沖縄は「米軍基地があって、アメリカのような雰囲気」「リゾート地」。長崎は「江戸時代の国際貿易の拠点」「歴史的な遺産がたくさんある」というイメージです。
Iさんクラスによって事前学習の取り組み方は異なります。私のクラスは7班に分かれて、ほかの班と重複しないようにテーマを決めました。そのテーマで調べ学習に取り組み、パワーポイントにまとめてクラス内で1班10分間の発表を行いました。私の班は沖縄、長崎、福岡の伝統行事・伝統工芸品について調べました。
各班のテーマは、1班「軍艦島」/2班「各県の伝統」/3班「沖縄の海洋生物の生態系」/4班「PayPayドーム」/5班「各県のご当地グルメ」/6班「志賀島」/7班「大浦天主堂」です。
Uさん私の班は、沖縄が「美ら海水族館、首里城、国際通り観光スポット、グルメ」について、長崎は「軍艦島、ハウステンボス、グルメ」について調べました。事前学習の直前まで定期試験だったため、深い学習まではたどり着けませんでしたが、出来ばえとプレゼンテーションはうまくできたと思います。
1日目 | 沖縄「首里城」見学 |
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2日目 | 沖縄「美ら海水族館」見学、マリン体験(シュノーケリング、バナナボート) |
3日目 | 沖縄「国際通り」の自主研修、福岡市内で班別行動 |
4日目 | 長崎「長崎原爆資料館」「平和公園」見学、長崎市内で班別行動(中華街や出島など) |
5日目 | 長崎「軍艦島」訪問、「ハウステンボス」訪問(英会話プログラム) |
6日目 | 福岡「太宰府天満宮」見学 |
Iさん福岡と長崎で実施された班別行動が印象的でした。それまで一部が班別行動で自由に動ける時間が設けられていて、事前に班の仲間と計画を立ててはいたものの、どこへ行っても人がたくさん並んでいて時間がかかるなどアクシデントばかりでした。福岡と長崎では、その都度臨機応変に対応しなければならなくて大変でしたが、班全員の協力によって“臨時の計画”もうまくいき、協調性と自立性が養われました。
Uさん印象的というよりは、みんなとの楽しい思い出という意味で「マリン体験」を挙げたいです。友達とマリン体験をするなんて、関東近海ではまずできないことだと思うので、とても貴重な経験でした。高校入学後、体を動かす機会がだんだんと減ってきたこともあって、この修学旅行で存分に自然と触れ合うことができて、日々の勉強の疲れを癒すことができました。学習面では、簡単に行ける場所でなないという点で「軍艦島クルーズ」です。今は廃墟となっていますが、静寂のなかで“圧倒される迫力”を体感しました。
Iさん沖縄は日本とアジア諸国との中間に位置し、琉球王国として日本や中国、東南アジア各国との中継貿易を展開してきた歴史・文化があること。そして日本では珍しく温暖な気候に育まれた緑豊かな自然があることなど、座学では得難い視点で学ぶことができました。
Uさん長崎は西欧文化が浸透していて、教会も街になじんでいたように思います。沖縄はアメリカの領土だった期間が長いことから、街に溶け込んだ英語の看板などが目を引きました。魔除けのシーサーも、沖縄独自の風習、文化から生まれたものなのかもしれません。
Iさん平和学習の一環で、長崎原爆資料館を訪れたのが最も印象的でした。バスガイドさんから永井隆博士(※)のお話を聴いたり、当時の写真や資料を実際に見たりするなかで、今ある平和は戦争の歴史の上に成り立っていることを痛感しました。
※原爆で妻を失い、自らも右側頭部動脈切断という重傷を負う。心身ともに傷つきながらも、大学や病院の人々を率いて被爆直後から負傷者の救護にあたった。その時まとめた救護記録で、博士は全治療経過だけでなく、その後の放射線障害として将来あらわれるであろう症状についても的確に論じた。『長崎の鐘』『ロザリオの鎖』『この子を残して』など多くの本を書き残し、長崎の復興を願い、平和を祈った。こうした生き方は原爆の後障害に苦しむ人々や、復興に立ち上がろうとする人々の心の支えとなり、被災した子どもたちに希望を与えた。
Uさん長崎の中華街で立ち寄ったお土産屋さんで、「出島の花火大会」があることを教えていただきました。みんなで見る花火は格別でしたし、地元の方の優しさに触れることができました。
Iさん原爆については歴史の教科書などで学んでいましたが、原爆資料館では原爆の脅威や凄惨さがよりリアルに感じられ、自分にとって未来を見つめ直す良い機会になった旅でした。
Uさん学習体験では、原爆資料館や街並みなど教科書やテレビなどの映像で見るのとは異なり、神聖さや活気、その場所の周辺に広がる雰囲気など、実際に行って体験することの意味を学びました。
一方、班別行動では限られた時間のなかで好きなところへ行けるのですが、全員の要望を満たす大変さや、協力し合いながら“いかに葛藤の時間を短縮するか”など集団行動の大変さを感じることもありましたが、遠慮し合いながらも少しずつ本音で話せるようになり、絆が強まったと思います。
Iさん日本の核保有について考えてみました。日本は核を保有すべきかすべきではないかという問題ですが、「すべきではない」と考えています。核は外交をするうえで“強力な切り札”になり得ますが、非核三原則というルールを自ら破ることになり、何十年も日本が主張してきた平和そのものが一瞬にして無に帰してしまい、平和を願う人々の思いが届かなくなってしまうからです。今、世界で北朝鮮やパキスタンなどの核保有国が問題になっていますが、一人ひとりが核に対する正しい知識を身につけることが大事だと感じています。
Uさん帰宅後、家族と話題を共有しました。そして改めて訪問した場所や体験したことを振り返りました。5泊6日間は机上では学べない多くのことを学び、体験し、一生の思い出になりました。
Iさん原爆資料館では、実際に体感してこそ得られた知識がたくさんありました。今後も実際に現地を訪れて、いろいろな「こと」や「もの」に触れる機会をたくさんもち、貪欲に知識を吸収していこうと思います。
Uさん書籍やインターネット、人から聞いた話を基に事前学習をしていても、時間の流れや季節によって状況は大きく変わっていきます。そもそも静止画や文字で伝えられる情報には限界があります。現地の音や匂い、その周辺の環境も含めて、実際に自分の目で見て体験することの大切さを学びました。現地の視察だけに留まらず、実際にやってみることも含めて、これからの生活や今後の進路に生かしていきたいと思います。
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