東京高等学校の選抜クラスが行っている『朝学習』は、英語力向上のための特別な時間。「先生に言われたからやる」のではなく、生徒たち自らが「自身の英語力向上のために小テストをする」と決め、毎朝10分間の英語小テストに挑んでいます。
東京高等学校の選抜クラスが行っている『朝学習』は、英語力向上のための特別な時間。「先生に言われたからやる」のではなく、生徒たち自らが「自身の英語力向上のために小テストをする」と決め、毎朝10分間の英語小テストに挑んでいます。
東京高等学校では2年次から5つのカリキュラム編成(文系Ⅰ類・文系Ⅱ類・文系Ⅲ類・理系Ⅰ類・理系Ⅱ類)となります。さらに、文系・理系ごとに成績優秀者が選抜されたクラス(=選抜クラス)も設けられています。この選抜クラスは授業内容が高度で進度も速く、講習会や学習合宿などへの積極的な参加が奨励されています。
そんな選抜クラスで特別に用意されている時間が、生徒主体で運営されている『朝学習』です。級長が時間になるとテスト用紙を配り、スタートの合図と同時に生徒たちが英語の小テストに挑みます。ちなみに、答え合わせも自分たちで行い、得点を集計して担任へ提出するところまで、全て生徒たちの自主性に委ねられているという注目の時間です。
「基本的に生徒の登校時間は8時25分なのですが、生徒たちには高1の時から『8時15分~8時30分までを、朝学習や朝読書の時間として有効的に活用しましょう』と声かけをして、そこから始まったのが現在の『朝学習』です。選抜クラスの生徒たちは、高2の時は週2回、高3になってからは毎日『朝学習』の時間を使って英語の小テストに取り組むようになっています。私はそんな生徒たちの主体的に学ぶ姿勢を見て、とても頼もしいと思っています」
目を細めてそう語るのは、地歴・公民科の竹広美和先生です。竹広先生も同校の卒業生で、後輩たちの頼もしい成長ぶりに目を見張っています。
「朝学習では毎朝、20題からなる英語の小テストに取り組んでいるのですが、その時間帯には私たち教員が教室にいることはありません。教室にいるのは生徒たちだけで、定刻の8時15分になったら級長が問題用紙を配り、自分たちでテストを始めて、答え合わせまでして担任に提出するというルーティーンです。その全てを生徒たちが担当しており、そんな自主性が選抜クラスの生徒たちの素晴らしいところだと思っています」
それでは、実際に『朝学習』に参加している高3生の声を聞いてみましょう。
Мさん「英語はあまり得意な教科ではありませんでしたが、毎朝の『朝学習』を通して、まず単語力が格段に向上したことを実感しています。初見の問題を見て“これはわかる!”と手応えを感じる機会が増えたからです。『朝学習』にしっかり臨むことを目的に、参考書『VINTAGE』(ヴィンテージ)を活用した前日の自宅学習にも力を入れるようになりました。ちなみに、『朝学習』のスタートは8時15分ですが、それよりも前に来て何かしら取り組んでいる人もいます。私は級長として、8時15分にテスト用紙を配り始めるので、その5分前には着席するよう心がけています」
Hさん「『朝学習』で英単語テストをやっているおかげで、志望大学の過去問に向かっている時に解きやすいといいますか、むしろハッキリ『わかる!』と実感することがよくあります。『朝学習』へ臨むにあたり、やはり自宅学習も欠かせません。『朝学習』でのテスト範囲は事前に発表されているので、前日にそれを軽く確認して、登校する電車の中でもう一度、それを確認するような感じでやっています。個々人で『朝学習』に対する心構えは異なりますが、やはり頑張っている人は良い結果を出しているので、刺激をもらっています」
Aさん「英語はあまり得意なほうではありませんが、『朝学習』があることで、英語を勉強する習慣づけができたことはラッキーでした。小テストの出題範囲が定期テストの出題範囲と重なることもあるので、学んだことは絶対に無駄にならないと思います。また、確実に点数を取れることで『次も頑張ろう』というモチベーションアップにもつながっています。学ぶことの楽しさを実感しながら、成績も伸びているのがうれしいです。テストの結果は担任の先生が節目ごとに集計して発表してくれるのですが、結果が出るとまた次のやる気につながります」
Yさん「『朝学習』の効果は、中間テストや期末テストの成績が上がっていることからも明らかです。高3になった今は模試も多いのですが、『朝学習』用の勉強が模試の対策とリンクしている点も心強いです。単語や熟語の理解度が上がったため、テストに向かうこと自体が楽しくなりました。大学受験が間近に迫った今、体調管理も重要なので、『朝学習』を起点に規則正しい1日を送ることを心がけています。毎朝8時に教室に入り、8時15分のテスト用紙配布まで最後の見直しに努めています。適度な緊張感もあって教室は意外と静かです」
それぞれの感想をイキイキと語る生徒たち。そんな一人ひとりの言葉に耳を傾ける竹広先生も本当にうれしそうです。
「本校の生徒には、勉学、部活動、学校行事においても、常に“自主的に動く”というところで、いろいろな選択肢が与えられています。例えば『朝学習』にしても、8時15分には教室に入るよう指導はされてはいますが、そこで何をするかはそれぞれなのです。『絶対にこれをしなさい』という強制ではなく、今回ご紹介した『朝学習』のように大枠だけがあって、その中で自分が何をするかを自ら選んで、主体的に実践できる環境があります。そこで、選抜クラスの生徒たちは、そこにプラスアルファして『英語のテストをしよう』と自分たちに必要なものを選び取って実践しているのです。私たち教員はそんな生徒たちの未来を楽しみにしています」
全てをガチガチに固めるわけではなく、緩やかな方向性だけを指し示し、そこから生徒自身がどう動くのかを、自分たちの裁量で考えていけるところに選抜クラスの魅力があるようです。
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