伝教大師最澄の『一隅を照らす』を建学の精神とする駒込高等学校。この言葉は「その人がおかれたその場にあって、ひたむきな向上心をもって全力を尽くす人こそ国や社会の宝である」ことを意味します。その精神により、SDGsの権威である東京都市大学大学院環境情報学研究科の佐藤真久教授を招いた『SDGsから日本と世界の社会問題について考えるワークショップ』が11月18日(土)に開催。併設の駒込中学校の生徒も参加していました。ワークショップ終了後、高1生と高2生に話を聞きました。
伝教大師最澄の『一隅を照らす』を建学の精神とする駒込高等学校。この言葉は「その人がおかれたその場にあって、ひたむきな向上心をもって全力を尽くす人こそ国や社会の宝である」ことを意味します。その精神により、SDGsの権威である東京都市大学大学院環境情報学研究科の佐藤真久教授を招いた『SDGsから日本と世界の社会問題について考えるワークショップ』が11月18日(土)に開催。併設の駒込中学校の生徒も参加していました。ワークショップ終了後、高1生と高2生に話を聞きました。
「複雑性に向き合い、“学習”と“協働”を連動させる探究モードへ ~ワクワク・ドキドキ・課題研究、地域課題解決をつなげるしくみを考える」。これが同校の生徒に向けたワークショプのテーマです。
「今日は、SDGsを理解するのではなく、“SDGsの本質とは何か”を一緒に考えていきます。では皆さん、今から27年後の2050年、日本はどんな社会になっていると思いますか? 生徒同士で議論して、その結果を教えてください」
佐藤教授は生徒たちにこう告げると、生徒たちから「地球温暖化が進んでいると思います」「AIによって仕事が奪われるのではないでしょうか」「科学の進歩によって今よりもクリーンな世界になっていると思います」といった意見が返ってきました。
「2050年を考えると、さまざまな問題が出てきます。例えば“高齢化の問題”といえば、日本やヨーロッパの問題と捉えられる傾向にありますが、今はベトナムやタイもこの問題を抱えています。また、温暖化により、シベリアの凍土が溶けて、コロナのようなウィルスが再び発生するかもしれません。このように考えていくと、気候変動の問題は環境の問題だけではなく、経済や社会の問題とつながってくることがわかります。そのため、さまざまな角度で物事を見ていくことが、これからは非常に重要になってくるのです。
皆さんが学んでいる駒込高等学校は、他者のために役立とうとする『利他』の心を大切にしています。他者とは他国の人々だけではなく、自然や環境も含まれると思います」(佐藤教授)
そして佐藤教授は「社会課題解決中マップ」を切り抜いたカードを生徒に配付。これはNPO法人ETIC.(エティック)が制作したマップです。複雑に絡み合う日本の社会課題を31のテーマに整理し、約600のアクション事例とともに可視化しています。カードには1枚につき「マイノリティの人々の幸せ向上」「安心し子育てできない社会」「自然体災害大国日本」など31の課題の1つが記されています。
「この中から興味あるテーマのカードを3枚選んでください。そして違う学年の生徒とグループを組み、その理由を発表し合いましょう」(佐藤教授)
その後、佐藤教授は生徒たちを2グループに分け、自分たちが選んだテーマがどのようにつながるのか机上に並べるよう指示を出します。次に、カードの上にSDGsの目標が記されたカードを重ねてもらい、“どうしてそのようにつなげたのか”を一人ひとりに発表させました。そして、佐藤教授は次のように語りました。
「自分が関心のある社会課題や、学校の授業で学んでいること、自分が取り組んでいる探究活動など、SDGsをこれらと連動させて考えると、理解が深まって本質が見えてきます。また、自分の将来のキャリアを考えていくことにもつながるはずです。これからは、SDGsを問題解決の面から捉えるだけでなく、自分のあり方や生き方と連動させて考えてほしいと思います」(佐藤教授)
中1の時、ボランティア部に所属していた僕は、中国の北京に青少年赤十字が主催するボランティア研修に参加し、SDGsの取り組みを初めて知りました。この研修で中国の人や韓国の人と意見交換をするなかで、人生観が大きく変わり、自分の将来の夢が見つかりました。“難民の子どもたちを教育の面から支える”という夢です。そのために、上智大学の総合グローバル学部に進学し、国際協力機構のJICAや国連の職員になりたいと思っています。
また、高1の冬から3カ月間、オーストラリアのクイーンズランド州に3カ月留学をしました。この留学での経験を通して視野が大きく広がり、英語力も上達して、自分の成長を実感することができました。今回、僕がこのワークショップに参加したのは、こうした背景があったからです。
ワークショップで僕が「社会課題解決中マップ」から選んだのは「世界が注目する水資源問題」「復活できるか水産王国日本」など環境に関するカードです。日本が水資源の豊富な国として世界から注目され、その宝庫である森林などが外国から買われていることや、海洋汚染で魚が捕れにくくなることに、以前から関心をもっていたためです。行政がこうした問題を解決しようと努めているにも関わらず、改善しないことに疑問を感じていました。
今日、グループで意見を交わしながらカードをつなげていくことで、点と点をつなげて面にすることの重要性が理解でき、さまざまなことに納得できました。またSDGsに関して、ひとつの問題からではなく、地球全体を見て、目標を達成していくべきだと改めて気づきました。佐藤教授の講義は理解しやすく、あっという間に時間が過ぎ、大学で学ぶことへの期待がますます高まっています。
私が学んでいる『国際教養コース』では、海外にルーツをもつ生徒や帰国生が数多く学んでいます。みんな英語の勉強に意欲的で、なかには英検1級をもっている生徒もいます。こうしたグローバルな環境で学ぶうち、私は世界に向けて大きく視野を広げたいと思うようになりました。そこで、文部科学省が運営する留学支援制度『トビタテ!留学JAPAN』に応募し、奨学金を得てアメリカ留学することを目標に掲げています。この制度には審査があり、たとえ合格しなかったとしても、チャレンジすることに大きな意味があると考えています。
今回、私がこのワークショップに参加したのは、ボランティア部に入っていて社会貢献に関心があったこと、世界各国が抱える諸問題について深く知りたかったこと、『トビタテ!留学JAPAN』の審査委員を務める佐藤教授から貴重なお話を聞けると思ったことが理由でした。
ワークショップで私が選んだカードは「日本でも起きている食料問題」「日本が一歩先ゆく高齢化社会」「チャンスに変わるか?人口減少」の3枚です。食料問題が途上国だけのものだと思い込んでいたこと、私が住んでいる街では高齢化が進んでいること、コンビニエンスストアに行くと外国人の店員さんが多く「これが海外の人にとってのビジネスチャンスなのだ」と感じていたことから選びました。そして、みんなで話し合って「じわじわ広がる教育格差」「先進国なのに高い相対的貧困率」「非効率すぎる政治・行政」のカードの周りに「高ストレス社会からの脱却」など、さまざまな問題のカードがつながっている配置を考えました。
みんなの意見が興味深く「こういう意見もあるんだ」という“気づき”がたくさんあり、刺激になりました。また、みんなの意見が違っていても、最後はひとつにまとまったことで、“明確な目標をもつことの大切さ”も学びました。自分の殻を破れたような気がします。
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