私は中学の頃から海外に憧れを抱き、「英検などの資格試験で問われる英語と、ネイティブの先生と話す英語はちょっと違うな」と思っていました。家族で海外旅行をした際に接したキャビンアテンダント(CA)も素敵だと思い、留学制度が充実している駒澤大学高等学校を選びました。1年間留学は、1人で乗る飛行機の緊張感から始まりました。でもCAの方がとても優しく気にかけてくださって、リラックスした気持ちで留学のスタートを切ることができました。
私のホストファミリーは、コロンビアから移住してきた家族です。スペイン語混じりの英語だったので最初は理解するのが難しかったけれど、ゆっくりと話しながらたくさんコミュニケーションをとってくれたので、段々と理解が深まっていきました。滞在先にはイタリアからのホストメートもいました。こちらはイタリア語混じりの英語です。学校でも色々な国の文化や背景をもつクラスメートがいたので、今思えば多種多様な英語を学べた1年間でした。
数学や理科の授業も受けました。最初はわからないことだらけで、自分の英語力のなさを痛感しました。3カ月くらい過ぎると徐々に手応えを感じ始め、ディスカッションに加わることができるようになりました。
カナダの英語授業は日本の授業とは全く違っていました。日本の文法の授業は文章を訳しながら学びますが、現地校では本を読んだり映画を観たりして感想を述べ、クラスメートと意見を交わし合い、プレゼンテーションすることもありました。グループでプレゼンテーションをする際には私も意見を出せるようになり、プレゼンの資料作りも経験しました。教科書を使うことも少なくて、インターネット上の文章や文学作品、さまざまなテキストが題材になっていました。駒澤高等学校でも1人1台iPadを持っていますが、現地でもiPadは文房具の一つとして活用していました。
一番強く感じたことは、現地校の生徒たちは、それぞれが自分の意見をもち、将来へのビジョンを思い描いていることです。「大学で学びたいことがあるから、今ここで学んでいる」ということを、しっかり語ることができる姿を見て、私も大いに刺激を受けました。でも、“おいしいもの”や“かわいいもの”が好きなのは、日本の高校生と同じです。日本のアニメも大人気で、私より詳しい生徒がたくさんいて、カルチャーフェスティバル(文化祭)の時には、たくさんの人が日本の人気アニメのTシャツを着ていました。
8月に帰国して9月から駒澤大学高校での学校生活が再スタートしましたが、自分の意見を発することを恐れなくなったと感じています。留学に旅立つ私を安心させてくれたCAの方のように、「誰かを安心させる存在になりたい」という夢を描いていたけれど、帰国前は無理だと思っていました。でも今は「とりあえず何にでも挑戦してみよう!」という気持ちです。
進路については、留学制度が整っていたり、留学生を数多く受け入れたりしている大学を視野に入れています。将来はさまざまな国の人と関わり、お互いに助け合うことのできるような仕事に就きたいと思います。
1年間留学を経験した上甲さん(前列中央)。ホストファミリーと一緒に。
平田先生から上甲さんへ
日本の学校では教員が問いかや提案をして、生徒は選択するだけというのが一般的ですが、1年間留学を経験した生徒は、「自分はこうしたい」「こんな目標がある」「こんなアイデアがある」という明確な意見をもっています。上甲さんが帰国した姿を見て、自主性や積極性が育っていることを感じています。1年間留学には上甲さんのほかに4人参加したのですが、全員が目覚ましい人間的成長を遂げていました。
1年間留学は、姉妹校と直接交渉ができるので、人数制限なしに参加できる制度です。平均的には毎年5人程度が参加します。現地スタッフと本校の国際交流委員が直接つながっているので、保護者の方にも安心していただいています。
留学とは、渡航して数日のうちに夢見ていた海外生活が現実の生活となります。留学前のワクワクした気持ちだけでは乗り越えていけないこともあります。私自身も高1の時に1年間留学を経験しているのですが、困った時やホームシックになった時、一番頼りたいと思ったのは同じような経験をした大人でした。両親には気恥ずかしくて頼ることができません。同級生は同じ目線なので、不安を解消できないこともあります。そこで本校は、国際交流委員の教員が何かあればすぐに連絡が取れる体制を敷いています。
本校で1年間留学に参加する生徒の数は増えています。社会情勢や経済状況の不安もありますが、人生の重要な糧となる国際交流活動は、これからますます充実させていきます。