下北沢成徳高等学校は、音楽や演劇など、サブカルチャーの街として人気がある「下北沢」にある女子の伝統校です。今春、思い出がたくさん詰まった学び舎を卒業した大学生4名に集まってもらい、下北沢成徳の魅力をたっぷりと語ってもらいました。
座談会出席者
- Hさん(上智大学文学部哲学科1年)
- Tさん(成蹊大学文学部日本文学科1年)
- Kさん(駒澤大学文学部社会学科1年)
- Nさん(中央大学国際経営学部国際経営学科1年)
- 司会/小川和昭先生
下北沢成徳高等学校は、音楽や演劇など、サブカルチャーの街として人気がある「下北沢」にある女子の伝統校です。今春、思い出がたくさん詰まった学び舎を卒業した大学生4名に集まってもらい、下北沢成徳の魅力をたっぷりと語ってもらいました。
小川先生皆さんが大学生となって約3カ月が経ちました。それぞれの近況から教えてください。
Hさん国際色豊かなキャンパスで学んでいます。海外にバックグラウンドをもつ友人たちも多く、英語や中国語などの多様な言語が自然と飛び交う環境のなかで、とても刺激的な大学生活を送っています。
Tさんアットホームな校風のもと、入学早々からゼミを通して何でも話せる友達ができました。日本文学という自分が好きなことを学ぶことができる環境に身をおき、とても満足しています。
Kさんワンキャンパスの総合大学ということもあり、キャンパスにはいつも大勢の人がいて活気にあふれています。留学生も多く、英語、中国語、韓国語、スペイン語など、その人の言語に合わせたコミュニケーションも楽しんでいます。
Nさん学部の一番の特徴が英語を使った授業が多いことで、留学生の数だけでも約半分を占めています。一方、大学入学に合わせて戻ってきた帰国生も多いです。そうした国際色豊かな環境のなかで、新しい価値観のようなものを次々と発見し、日々新鮮な気持ちで大学生活を送ることができています。
小川先生皆さんが高校受験をするなかで、下北沢成徳を選んだ理由を聞かせてください。
Hさん国際系の大学に進むことを高校卒業時のゴールにおいていたからです。国際色豊かな授業が多くある国際コース(現・グローバルエデュケーションコース)を選択した理由も、そこにあります。
Tさんきっかけは中学時代に通っていた塾の先生から、「下北沢成徳なら、きめ細かに面倒を見てもらえ、苦手な英語も伸ばしてくれる」とアドバイスをもらったことでした。事実、卒業までに英検2級まで取得することもでき、それが大学受験時のアドバンテージにもなりました。
Kさん最も注目したのは、3年間で4年分の学びができるクォーター制(4期制)でした。中学時代はなかなか勉強に本腰を入れられない私でしたが、逆に授業日数の多いクォーター制なら、自分を変えられると思ったからです。
小川先生私はKさんの担任でもあったのでよく覚えているのですが、本当に入学した頃から頑張って、成績がどんどん伸びていきましたね。
Kさんありがとうございます。
Nさん父も祖父も外資系企業に勤務していたので、2人とも英語ができるのです。中3の時に家族で京都旅行に行った時、海外からの観光客に道案内をする父の姿に憧れました。自分も本気になって英語を学びたいと、そう決意した時に知ったのが、英語教育に定評のある下北沢成徳でした。それともう一つ、「下北沢」という街にも魅力を感じました。
小川先生皆さんは入学した時から既にコロナ禍で、非常事態宣言が発令されるなかで、やむなく自宅学習に終始せざるを得ない時期も経験しています。いろいろな気持ちがあったと思いますが、改めて当時を振り返ってみてください。
Hさん突然、高校生活がシャットアウトされてしまったので、初めは目標がもてなくて辛かったです。気軽に外出することもできない厳しい環境でしたが、そんなある日、何かしようと考えたのが『英字新聞愛好会』の立ち上げでした。インターネットで英字新聞を読み、次第に自分でも記事を書くようになり、結果的にいい思い出作りができました。
Tさん休校になってすぐに学校から送られてきたのが、数学と国語と英語の問題集でした。比較的簡単な内容だったので、けっこう楽しんで解答を返していました。その次に送られてきたのが、段ボール箱に詰まった課題の数々でした。各教科とも1カ月で取り組むという内容のもので、高校3年間で一番勉強したのではないかと思うくらい夢中で取り組んでいました。
Kさん自宅にいても孤独感みたいなものはなかったですね。逆に自分のペースで勉強できるので、精神的にも楽でした。でも、緊急事態宣言が解除され、学校に行くことができるようになると、「やっぱり対面っていいものだ」と思いました。一気に友達ができました。
Nさん高校受験が終わってすぐに友達を作りたかったので、Twitterで「春から下北沢成徳に通います」「国際コース(現・グローバルエデュケーションコース)に行きます」って発信しました。そこからLINEとかインスタにつながるようになって、入学式前にはけっこうクラスの半分くらいの人は知っている状態でした。入学式でお互いに、「そういう顔だったんだ!」って(笑)。
小川先生そんなことがあったとは知りませんでした(笑)。
小川先生学校行事はどうでしたか?高2の文化祭あたりから少しずつ、コロナ禍に配慮しながら学校行事は再開しましたが、皆さんが学校行事を通して感じたこと、成長できたことを聞かせてください。
Hさんやっぱり高2の文化祭が一番印象に残っています。当時は生徒会副会長でしたが、制限があるなかで、せめて文化祭だけは実施しようとなった時、何ができるかを実行委員会のみんなと考えました。そうしたなかから生まれたのが映像作品でした。
Nさんとても素敵な映像作品でしたね。
Hさんみんなとリアル対面ができない分、せめて映像を通して成徳生の元気なところを表現したいとの想いを作品に込めました。高3の先輩方が受験勉強に向かうなか、高2の私たちで全ての編集を担当しましたが、“みんな同じ学校にいるんだ”というような一体感が生まれた気がして、映像制作に携わった苦労が一瞬にして喜びに変わりました
小川先生先生たちもよく覚えています。本当に素晴らしい映像作品でした。
Tさんクラスの一体感ということでいうと、やっぱり高2の修学旅行(3月)ですね。みんなで九州に行きましたね。友達の私服姿を初めて見ることができてうれしかったです。
Nさんわかる!
小川先生本来はオーストラリアの修学旅行でしたが、オーストラリアが入国制限をしていた関係で、急きょ九州に変更したのです。
Tさんそうだったんですね。でも、立命館アジア太平洋大学で学ぶ留学生と交流したり、長崎の原爆資料館で平和について学んだり、とても有意義な日々でした。高校生活は半分以上過ぎていたけれど、そこで一体感は生まれたと思います。
Kさん私は高3の体育祭(5月)ですね。体育祭は最初で最後、1回しか経験していないので、とても印象に残っているからです。もともと体育祭が好きな私ですが、各学年の生徒が躍動する姿を見てとても感動しました。
Nさん私も一つに絞るとしたら高3の体育祭かな。高2の時からタイプロ(体育祭プロジェクト)の実行委員でしたが、高2では残念ながら中止になってしまったので、もう全力で運営に携わりました。とはいっても、高1・高2で体育祭を経験していないので、全員が「初めまして」の体育祭です。全てが手探り状態でしたが、逆に実行することの難しさを学んだり、リーダーシップを体験できたりで、それが一番自分自身が成長できた機会になったと思っています。
小川先生改めて下北沢成徳での3年間を振り返ってみて、良かったといえることは何ですか?
Hさん数学を英語で学ぶ『Math English』(マス・イングリッシュ)の時間があったことです。ほかにも家庭科の授業をオールイングリッシュで行う時間もありましたね。正直に言いますと、当時は「何の意味があるのかな」と思っていましたが、例えば、大学の授業で英語の論文を読んでいると、「この単語、知ってる!」みたいに、『Math English』などをやっていたからこその専門的な単語と出合うことがあるのです。下北沢成徳の英語教育って、やっぱりすごいと思っています。
Tさん私も英語ですね。文法を体系的に学ぶ『英語表現』の授業を通して、英語ってこういうふうに作られているのかと気づいたからです。そこから初めて英検3級の試験に合格することができ、最終的に英検2級まで取得することができました。下北沢成徳の英語教育に、とても感謝しています。
Kさん私も同じく英語です。大学受験のための参考書『Next Stage』を徹底的にやったおかげで、大学の英語の授業も楽しく感じています。当時は小テストのためだけに使う参考書というイメージでしたが、何ならもう一度勉強したいと思っているほどです(笑)。本当にありがとうございます!
Nさんちょっと変わったところでいうと、私は「朝のスマホ回収」に感謝しています。
(注:現在は回収せずに自己管理にしている。)
Hさんどういうこと?
Nさん下北沢成徳では登校時にスマートフォンを担任の先生に預けて、帰る時にまた返してもらうのですが、最初はそれが嫌でした。「なんで?」って感じで。
Tさんその気持ち、なんとなくわかります。
Nさん大学生となった今は一日中スマホをいじることができますが、人と話すよりもスマホを見ている時のほうが多いなって、最近気がついたんです。要するに、高校時代はスマホを見ない環境が強制的にあったおかげで、友達と仲良くなれたのかな……と今、ちょっと思っているからです。
小川先生女子校で良かったことは何でしょう。
Hさん女子しかいないので、必然的にタフになったことです。
Tさん同性同士で気兼ねなく意見交換ができたことです。
Kさん良い意味でお互いに遠慮しない関係ができるところがいいですね。
Nさんありのままの自分でいられるところですね。
小川先生なるほど。4人それぞれに女子校の捉え方があって面白いですね。ところで、皆さんは全員、第一志望の大学合格を勝ち取りました。希望どおりの進路を手にした今、下北沢成徳のサポート体制について、どんなふうに思っていますか?
Hさん私は哲学科志望だったので、国語科の先生方には特に助けていただきました。面接の練習も繰り返しやっていただきき、時には自宅でオンラインを介した面接の練習もありました。小論文対策もきめ細かに対応していただき、朝一番で出せば、その日の午後には添削したものが返ってきました。本当にありがたかったです。
Tさん絶対に役に立つからと、各種検定を薦められたことです。英検をはじめ、漢検、数検と次々にチャレンジするなかで、常に高いモチベーションで大学受験に臨むことができました。もう一つは、国語の先生が志望大学の過去問入りのテストをずっとやってくださったことです。
Kさん大学受験に向けて逆算したタイムテーブルを先生と一緒に共有しながら、本番に臨むことができたことに感謝しています。「勉強はどこまで進んでいるの?」「書類は用意できた?」など、先生方からのお声がけがとてもうれしく、常に励みになっていました。
Nさん実は私、第一志望校の推薦試験に落ちてしまい、絶望して浪人しようかと迷っていた時期があったんです。そんな時、「大丈夫だよ。またここから頑張ろう」と励ましてくださったのが担任の先生でした。それから一般受験にシフトし、世界史の小川先生にもマンツーマンで教えていただきながら現役合格を勝ち取れたのです。ありがとうございました。
小川先生私だけではなく、学年の先生方は皆さん、生徒一人ひとりのことを心配していましたからね。ですから、どの生徒が今、どんなことに苦しんでいるのかもわかるのです。それが本校の教師力の一端でもあります。
小川先生それでは最後に、現時点で思い描いているそれぞれの未来像を聞かせてください。
Hさんまずは下北沢成徳の先生方を見習って、私自身も教師になりたいと思っています。ただし、新卒で教師になるのかどうかはわかりません。大学院に行くのもいいですし、一度働いてみてから教職を使うのもありではないかと考えています。
Tさん私もHさんと同じく教職課程を取っています。日本語教員の資格も取得してみたいです。さらに、ITパスポート試験にも挑戦したいです。資格試験に積極的にチャレンジする姿勢は、下北沢成徳で学びました。
Kさん高校在学中からジェンダー論に興味があって、一択で現在の学科(文学部社会学科社会学専攻)を選択しました。具体的なプランはこれからですが、最終的なゴールとしては、男女平等参画社会に貢献できる人材になりたいです。
Nさん祖父や父のように外資系企業に行き、MBA(経営学修士)も取得したいです。そのための第一歩として、今年の夏にはアメリカ留学に参加します。高校時代に5カ月間、カナダ留学した経験も将来に活かしたいと思っています。
小川先生今日はありがとうございました。皆さんのさらなる活躍を期待しています。
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