昭和学院高等学校の教壇に立つ林侑紀先生は、2005年に入学した同校の卒業生です。勉強と部活動を両立させ、國學院大學文学部史学科に進み、卒業後、母校の教員になりました。現在、学年主任と高3の担任を務め、日本史を教えている林先生に、高校時代の思い出や、同校における教育の特色について語っていただきました。
昭和学院高等学校の教壇に立つ林侑紀先生は、2005年に入学した同校の卒業生です。勉強と部活動を両立させ、國學院大學文学部史学科に進み、卒業後、母校の教員になりました。現在、学年主任と高3の担任を務め、日本史を教えている林先生に、高校時代の思い出や、同校における教育の特色について語っていただきました。
「本校は、1940年に昭和女子商業学校として創立されました。男女共学になったのは、私が入学する2年前の2003年です。
私は中学時代、サッカー部に入っていました。当時、誕生したばかりのサッカー部を強くするため、男子部員を集めていると聞いた中学生の私は、学校見学に来たり、部の顧問と相談したりして、本校の受験を決めました」
こうして同校に入学した林先生でしたが、すぐにはサッカー部に入らず、まずは勉強に専念。高校生になった林先生には、ある大学に新設された「ライフデザイン学部で学びたい」という目標があったからです。(念願の)サッカー部に入ったのは、高2の時でした。
「目標を達成するために『文武両道を徹底する』と心に決めて入部しました。成績が下がったら、部活動を辞めるくらいの覚悟はしていました。特に力を入れたのは英語で、小テストは『絶対に満点を取るぞ!』という意気込みで勉強しました」
そんな林先生に強い影響を与え、進路を変更するきっかけとなった恩師がいます。林先生の担任であり、日本史を教えていた倉田透先生でした。倉田先生の授業によって歴史の面白さに気づいた林先生は、「大学で日本史学を専攻したい」という思いを強くし、倉田先生が学んだ國學院大学文学部史学科を受験して合格しました。
現在、同校の広報部長を務める倉田先生は、当時の林先生を「勉強も部活動も手を抜かず、真剣に取り組む生徒でした」と振り返ります。
「大学に入ると、同じ学科に教員をめざす学生が大勢いることがわかりました。そして私たち史学科の学生を教えてくださった教授の前職が中学の校長先生で、私たちを何度も中学校に連れていき、教員の仕事や生徒たちが学ぶ様子を見せてくださったのです。放課後は、生徒の補習も手伝わせていただきました。そこで勉強が苦手な生徒に英語や国語を教えているうちに、『卒業したら教員になろう』という気持ちが芽生え始めたのです」
中学と高校の教員免許を取得した林先生は、昭和学院で教育実習を体験。大学卒業後、林先生は昭和学院で社会科を教え、併設の昭和学院中学校のサッカー部顧問を務めることになったのです。林先生と同じ年に採用されて教壇に立つことになった教員には、林先生の同級生が2人いたと言います。教員としての経験を積んだ林先生は、現在の高3が高1の時に学年主任になりました。
「母校で教えるメリットは、恩師が大勢おり、教育や指導に関して相談したりアドバイスを得られたりすることです。また、自分の出身校だけに愛校心があり、生徒たちは後輩でもあるため、『心身ともに健やかに育ち、将来は社会に大きく貢献できる人材になってほしい』という願いがあります。
先日、私のクラスでこんな出来事がありました。部活動で大会に出るため、学校を休んでいた生徒が数人いました。私が何も言わなくても、ほかの生徒たちがその生徒たちのためにノートを取ったり、授業で習ったことを熱心に教えたりしていたのです。生徒たちの優しさに触れて胸が熱くなりました」
生徒を温かく見守る林先生に、同校の社会科(日本史)の特色を聞いてみました。
「本校では以前から探究型学習に力を入れています。自分で問いを立て、課題を発見して解決できる力を生徒に身につけてもらうためです。そこで、日本史の授業にもブループワークによる探究型学習を積極的に取り入れています。
例えば飛鳥時代、推古天皇はどのような国家をつくろうと考えていたのか、隣国の隋との関係も考慮し、これまで習った知識を活かして生徒に仮説を立ててもらいます。そして、その仮説が正しいのかどうか、主に書籍やインターネットを使って検証させ、その結果を発表してもらうのです。
明治維新に関する授業なら、西洋の服装や食べ物、習慣が日本に入ってきた時、当時の人々はどう受け止めたのか、自分の身に置き換えて生徒に考えてさせたこともあります。たとえ正解が見つからなかったとしても、知識をフル回転させて考えたり、歴史的な出来事を自分ごととして捉えたりする習慣をつけることが重要だと思っています」
同校には一人ひとりの進路や個性に合わせた5コースが用意されています。その一つが『ジェネラルアカデミー』で、自分の手で将来を選び取り、学ぶべきことを見つけるコースです。同コースには生徒が自分の興味を学びに活かせるプログラム『マイゼミ』があります。
「私は昨年『マイゼミ』を担当しました。私のもとに集まったのは、歴史や地理が好きな17人です。韓国のアーティストが好きな生徒は、韓国のファッション、グルメ、芸能などから日本の歴史や文化との接点を探っていました。また、モテるためには何が必要かを探究した生徒もいました。その生徒はほかの生徒にアンケートを取って得た『清潔感がある』『優しい』などの答えをヒントに、時代によってモテるための要素が大きく変わるのではないかという仮説を立て、検証を試みていました。
こうした成果をみんなの前で発表するとともに、『自由すぎる研究EXPO』に応募しました。㈱トモノカイが運営し、大学や企業が協力するコンテストです。残念ながら予選敗退しましたが、生徒たちは自分が好きなことをどこまでも追究することの素晴らしさを実感できたのではないかと思っています。
『マイゼミ』だけでなく、今、私が日本史を教えている生徒や受け持っているクラスの生徒たちには、諦めないことの大切さも伝えていきたいと考えています。『マイゼミ』には、歴史や地理が好きな生徒が集まりましたが、生徒によっては好きになれなかったり、苦手意識があったりする科目もあります。『どうしてこんなことを勉強しなければならないの?』『役に立つのかな?』と疑問を抱くこともあるでしょう。しかし、それがどんな勉強にせよ、新しいことを知るのは幸せなことであり、ワクワクすることだと思います。何事にも諦めず取り組むことで、その先にある“ワクワク”にたどり着くことができるはずです」
この学校の掲載記事をピックアップしました。