『キャリア・アンカー』は水曜日の放課後に行われています。『キャリア・アンカー』とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の組織心理学者であるエドガー・シャイン氏によって提唱された“価値観”を意味する言葉で、仕事や経歴を意味する「キャリア」と、船のいかりを意味する「アンカー」を組み合わせた造語です。
この探究プログラムでファシリテーター(※1)として生徒をサポートするのは、慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授の横田浩一先生。横田先生は一般社団法人アンカー(以下、アンカー)の共同代表理事でもあります。
さらに、アンカーの理事である慶應義塾大学総合政策学部の大学生と、津田塾大学総合政策学部の大学生2名が学生メンターとしてファシリテーターを務めています。なお、慶應義塾大学の学生メンターは駒場学園の卒業生です。『キャリア・アンカー』について、教育推進部長の長田一郎先生(国語科)にお話を伺いました。
「自分の興味・関心を将来の仕事へどのようにつなげていくのか。その道筋を考えながら、自分の目標を実現するための大学の学部・学科、企業などを見つけていくのが従来のキャリア教育だと思います。
一方、この『キャリア・アンカー』は、まず自分の好きなこと、関心のあることをマイテーマにします。そして、もしそれを活かすことができる企業が見つからないなら自分で起業する方法を、また、それについて共感したり語り合ったりする仲間が周りにいないなら、それができるコミュニティーを自分でつくる方法を模索してアクションを起こしていきます。こうしたプロセスを通して生き方そのものにつなげていけるように、今から探究していくのです。
大学生メンターの2名は、目を輝かせて生徒たちと楽しそうに会話をしながら好きなことを学ぶ喜びを伝え、生徒たちの長所や個性を上手に引き出してくれています。そして横田先生や大学生メンターのファシリテートのもと、アクションの一つとして生徒は、『全国高校生マイプロジェクトアワード』(以下、マイプロ)にエントリーしました」
「マイプロ」は、探究活動を実行した全国の高校生が一堂に会し、プレゼンテーションや参加者との対話を通して次の一歩を考える学びの祭典です。文部科学省が後援し、プレゼンテーションにおける優勝者には文部科学大臣賞が授与されます。
「マイプロ」に参加するには、マイテーマについて記したエントリーシートを提出し、書類選考に通過しなければなりません。通過すると地域サミットや全国サミットに参加する資格を得られます。この書類選考に5名の生徒がパスしたのです。
「本校でも初めての試みであり、5名もの生徒が通過するとは思ってもいませんでした。パスした生徒たちは大きな自信を得ています。この成功体験を糧にして、勉強や行事などにもこれまで以上にアクティブに取り組めるはずです」