2022年度より全国の高等学校で始まった『総合的な探究の時間』(以下、探究)。各校でさまざまな“探究”が展開されるなか、キラリと光る独自性で注目されているのが、藤嶺学園藤沢高等学校の探究です。
2022年度より全国の高等学校で始まった『総合的な探究の時間』(以下、探究)。各校でさまざまな“探究”が展開されるなか、キラリと光る独自性で注目されているのが、藤嶺学園藤沢高等学校の探究です。
「本校の経営母体は、鎌倉時代末期に興った浄土教の一宗派『時宗』です。キャンパスが、人々から“遊行寺”と呼ばれ親しまれている清浄光寺(時宗総本山)にあるのもそのためです。大正5年に開校した歴史ある本校の探究は、時宗の伝統と文化、さらには100年を超える本校の歴史と共に育まれた独自性のあるものなのです」
そう語るのは、教頭の林学先生です。林先生は鎌倉市内の時宗寺院『満光山 来迎寺』の住職でもあります。
「本校が展開する探究の目的は、1.『自己の在り方生き方を考える』 2.『より良く課題を発見し解決していく資質・能力を育成する』です。どちらも大学進学からその先のキャリアを考えるうえで、非常に重要なものになっていきます」
藤嶺学園藤沢の探究には、高1~高3まで「全員参加型」のものと、「個人参加型」の2種類があります。そのポイントを林先生に解説していただきました。
「あらゆる無駄を省いた茶室の空間、必要最小限に絞った茶道具で構成される茶道の世界は、究極のSDGsでもあると考えています。限られた空間、限られた道具のなかから醸し出される“わび”“さび”の世界は、単なる日本文化の探究に留まらず、グローバル人材としての真の素養を身につけるところにもつながっていきます」
「茶道そのものを大成させたのは禅宗と呼ばれる宗派の人々です。ただし、茶道具をつくる、茶室をつくる、庭をつくるというような、茶道を取り巻くものづくりを担った庶民の多くは、時宗と関わりの深い職人たちでした。本校が大切にしている茶道は、遊行寺の僧侶養成機関として発足した本校の源から連綿と続く伝統文化でもあるのです」
茶道とともに藤嶺学園藤沢の伝統として取り入れられているのが「修養」です。
「本校の卒業生でもある僧侶にご来校いただき、坐禅を体験し、般若心経を唱え、講話を聴く機会が修養の授業です。静かな環境のなかで、自分を見つめ直す貴重な時間でもあります。特に今の時代は、スマートフォンや動画、音楽などが日常的にあふれており、心静かなひと時を過ごすことが難しくなっています。そこで本校では、40年以上の歴史がある修養の授業をさらに昇華させて、自己内面探究として位置づけました」
茶道も修養も、新たに始まった探究のために新しく用意したものではなく、藤嶺学園藤沢の伝統教育から発展させた形であるところが大きな特徴です。とりわけ“自己の在り方・生き方を考える”という点において、茶道と修養が果たす役割は大きなものがあるといえます。
「全員参加型」の探究に続いて、次は「個人参加型」の探究を見ていきます。
「『藤嶺探究ゼミナール』の前身は、昨年度まで毎年2学期に開催していた『藤嶺ゼミナール』です。昨年は、➀『陶芸上級』 ➁『雅楽入門』 ③『相手を惹きつける話し方入門』➃ 『身近なことから税金を学ぼう』 ➄『マネー入門』の5講座でしたが、今後はもう少し数を増やして、バージョンアップした『藤嶺探究ゼミナール』として開講していきます」
林先生によると、1~5まですべてに藤嶺学園藤沢ならではのこだわりが詰まっているそうです。
「主に卒業生や地元関係者のご協力のもと、普段の授業を離れた多彩なプログラムを用意し、生徒一人ひとりが自ら興味ある分野の講座を自由に選択することができます。どの講座も高校生のうちに身につけておけば、将来は教養として、あるいは生活の知恵として役立つものばかりです。当ゼミナールにおける学びはすべて能動型であり、自ら課題を発見し、自ら答えを追求できるように、課題解決力や問題解決力を身につけることを主眼に置いて展開しています」
ちなみに、藤嶺学園藤沢には陶芸室があり、ろくろも陶芸窯もフル装備。芸術探究「陶芸」(高2)では、生徒自ら焼いた茶碗を用い、育ててくれた両親をお茶でもてなす「修了茶会」が開催されます。
これまで紹介してきた探究は、言ってみれば校内型ですが、ここからは校外型探究にも注目です。
「本校の研修旅行(修学旅行)は、ベトナム・台湾・沖縄の3カ所から自由に行き先を選択できます。ここ2年はコロナ禍で研修旅行の開催自体できませんでしたが、本校では2022年8月より、他校に先駆けて研修旅行を開催しています。ベトナム・台湾・沖縄と、それぞれ異なる文化をもつ国々・地域の探究はもちろん、現地の人々との交流機会をより多く用意しながら、世界のなかの自分という存在を見つめ直す機会にしてもらいたいと考えています」
「生徒の大多数が、おぼろげながらも大学進学に向けたビジョンを描き始めるのが高2です。そこで本校では、首都圏の6大学と提携した高大連携プログラムを実施しています。大学の授業に参加させてもらう機会(授業体験プログラム)もあれば、大学の先生方が来校して模擬授業をする“出張授業”もあります。また、大学によっては聴講生という形で、自分の関心ある分野の授業を1年間通して聴くこともできます。理系・文系の選択はもとより、大学に進学した自分の姿というものを想像してみる、そんな絶好の機会ということでもあります」
「一連の探究の最後に用意しているのが、“進路探究”です。大学説明会やオープンキャンパスに進んで参加し、進路実現に向けた想いを新たにしてもらいます。本校が掲げる探究は、生徒一人ひとりのキャリアデザインに役立つものばかりです。それはまた、男子伝統校としてのこれまでの取り組みを活かしながら、仏教校としてのエッセンスをそこに加え、さらに発展させたものとして捉えた、これまでにないまったく新しい形の探究でもあります。その詳細については、学校説明会などの場で改めてお伝えします」
最後に、どのような生徒に入ってほしいかを林先生に伺いました。
「もちろん本校を第一志望にして入学してくれるのが一番ですが、仮に他校に受からなかったといっても、それで人生が決まるわけではありません。たとえば公立高校との併願を希望する生徒には、堂々と『第二志望は藤嶺学園藤沢』という気持ちで試験に臨んでほしいのです。100年を超える歴史を誇る藤嶺学園藤沢の探究から、自分だけの誰にも負けない世界をぜひ創り上げていってもらいたいと思っています」
全員参加型 | ●日本文化探究「茶道」 |
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●自己内面探究「修養」 | |
個人参加型 | ●藤嶺探究ゼミナール さまざまなテーマで開催されるゼミナール。自分の興味あるテーマを「探究」する。 |
●グローバル探究 年度末の春休みに実施する「海外語学研修」と、それに参加する生徒の事前研修プログラムで、現地とのオンライン交流や「チュートリアルイングリッシュ」※を実施する。 |
※チュートリアルイングリッシュ:最大4人程度のグループレッスン。ネイティブスピーカーが徹底的に英語力を鍛える。
全員参加型 | ●日本文化探究「茶道」 |
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●芸術探究「陶芸」 | |
●異文化探究「研修旅行」 |
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個人参加型 | ●藤嶺探究ゼミナール |
●進路探究「高大連携プログラム」 藤嶺藤沢と高大連携協定を結んでいる大学の「授業体験プログラム」などに参加する。 |
全員参加型 | ●進路探究 「大学説明会」「大学オープンキャンパス」などに参加し、自信の進路の実現に向かう。 |
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個人参加型 | ●藤嶺探究ゼミナール |
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