立体アート専攻1年 尾﨑結衣さん
尾﨑さんが受賞した作品は木彫。タイトルは「進化」を意味する「evolution」です。
「クスノキの塊をノミやノコギリで彫り出して制作しました。テーマは未来への希望です。うろこは過去からの脱皮を、2本の角は困難を乗り越えようとする強い意志を、閉じた目は幸せな気持ちに浸っている様子を表現しています」
笑顔で話す尾﨑さんは、グラフィック・デザイナーのお母さんの影響により、小さい頃から美術が好きだったと振り返ります。
「この学校に入ったのは、絵を描きたかったからです。でも、学んでいくうちに手で素材に触れながら立体的な作品を作り出すことに喜びを見いだすようになりました。そんな私が高2になった時に誕生したのが『工芸・立体コース』で、同コースで学ぼうと決めました」
卒業制作を何にするか、その方向性を決めるのが高3の夏休み。しかし、尾﨑さんは納得のいく作品がなかなか思い浮かばなかったそうです。
「迷っていた時に、これまでの私の作品を見直していたら、自分が人の顔や骨格の造形が好きであることに気づいたんです。そこで顔を作品にしたいと先生に相談したところ、『木で作ったらどうか』というアドバイスをいただきました」
こうして会心の作を完成させた尾﨑さんが、この学校で学んだのは「自分らしさ」を大切にすることです。
「周りの評価を気にして作った作品よりも、自分が好きなように作った作品のほうが不思議と評価が高いことがわかりました。作品に自分らしさが現れるからだと思います」
現在、尾﨑さんは女子美術大学立体アート専攻で創作に打ち込むとともに、海外の留学生と触れ合い、異文化体験をする『JOSHIBI国際交流チーム』のメンバーとして活動しています。
尾﨑さんを指導した中村幸喜先生(美術科)は次のように話します。
「高2の2学期に尾﨑さんが同じように粘土で人の顔を制作しました。その作品と見比べてみると、明らかに卒業制作のほうがクオリティーは高いのです。尾崎さんが骨格を捉えてモノを創り上げていった作業の一つひとつが集約され、確かなデッサン力が身についた結果だと思います。しかも尾﨑さんは一つの木材から像の全体を彫り出す“一木”にこだわり抜きました。大学で、海外の学生たちとの交流も糧にして、そのこだわりや自分らしさを追求してほしいと思います。そして海外で活躍できるアーティストに育ってほしいと願っています」
尾﨑さんの受賞作『evolution』。指導した中村先生と一緒に。