2021年春、持続可能な開発目標『SDGs』が掲げる「誰一人取り残さない」という言葉に強く共感した北村陽子校長がその開始を宣言し、東野高校版“持続可能な開発目標”としてスタートしたプロジェクトが『東野SDGs』です。それから約8カ月、東野SDGsの現状をレポートしました。
2021年春、持続可能な開発目標『SDGs』が掲げる「誰一人取り残さない」という言葉に強く共感した北村陽子校長がその開始を宣言し、東野高校版“持続可能な開発目標”としてスタートしたプロジェクトが『東野SDGs』です。それから約8カ月、東野SDGsの現状をレポートしました。
大学合格実績が年々向上するなか、「大学で学ぶ意義をさらに確かなものにさせて送り出したい」と東野高校の先生方が旗振り役となり、学校を挙げて推進しているのが『東野SDGs』です。東野SDGs会議のメンバーを務める武井智巳先生は、生徒たちの成長に向けた熱い思いを込めながら、次のように語ってくれました。
「国連で採択されたSDGsという大掛かりなものから始めるではなく、まずは学校の中に目を向けてやっていこうということで、『東野SDGs』と命名されました。学年ごとに目標を設定したのも、SDGsをもっと身近に感じてもらうためです。高1は『みんなで生きる―ひろがる東野』。高2は『地球で生きる―つながる東野』。高3は『未来を生きる―かなえる東野』と位置づけました。
私は現在、高1を中心に指導していますが、2021年春にスタートした当初、生徒たちに考えてもらったのは、『学校の中でまず何ができるだろうか?』でした。“みんな”→“地球”→“未来”と関連する領域を1年ごとに拡大していきながら、“ひろがる”→“つながる”→“かなえる”というように、生徒一人ひとりの役割も深化させていきたいと考えています」
各自が“学校の中でできること”を考え、クラスで議論し、各クラスのプロジェクトとして始まったものの一つが、今回紹介する『登校路の石道修復』と『校内コミュニケーション創りのためのベンチ製作』です。
【経緯】東野高校の校舎が完成してから35年ほどが経ち、生徒たちが毎日使う「石道」(第一の門から正門へと続く石畳の道)の傷みが激しくなりました。そこで、1-A2クラス(担任:山田奈緒子先生)では『登校路の石道修復』と命名してプロジェクトを開始しました。
「生徒たちから石道修復の話を初めて聞いた時、やることがなかなか大きなことなので正直、『大丈夫かな?』という気持ちでした。作業自体誰も経験したことがなかったので、最初は私のほうでYouTubeを観て調べたりしていましたが、徐々に生徒たちも自主的に検索するようになり、作業が本格化したのは夏休みくらいからでした。とはいってもすべてが手探りですので、当然ながら失敗もありました。ですが、失敗を糧に成長していく姿は実に頼もしく、今では生徒一人ひとりが主体的に声をかけ合って、共同作業として石道の修復と向き合っています」(山田先生)
1-A2クラスを代表して、青山ゆうほさん(高1)に話を伺いました。青山さんはこれまでの作業経験を通して、「将来はものづくりの方向へ進みたいと考えています」と語ってくれました。
「登校路の石畳は全生徒が日常的に歩くので、どうしても痛みが激しく、僕らも入学以来ずっと気になっていました。これから冬になり、石のくぼみなどに水が入り凍りだすと、滑りやすくなります。そこで、石道の修復を業者の方に頼むのではなく、東野SDGsの一環として、生徒たちでやってみるのも意義あることだとみんなで話し合って決めました。これは僕個人の感想ですが、作業はとても楽しく、将来はものづくりの道に進むのもいいかもしれないと考えるようになりました。作業は5月くらいから始め、今は全体の3分の1が終わったところです。これから2月まで作業は続きますが、今年度中に終わることは難しそうです。なので、4月から入学してくる後輩たちに引き継いでもらいたいと思っています。後輩の皆さん、どうぞよろしくお願いいます!」(青山さん)
【経緯】個性的な建物が並ぶ東野高校のキャンパス。広大な敷地で居心地もバツグンですが、生徒には気になる点も。実は、意外にもベンチの数が少なかったのです。そこで1-A8クラス(担任:小池功一郎先生)では、『校内コミュニケーション創りのためのベンチ製作』に取り組んでいます。
「ベンチ製作のきっかけは、クラスの生徒たちからの声でした。広い校内を散策した際に、仲間同士で座ってコミュニケーションを図れる場所がほしいということでした。ならば自分たちで作ったベンチを敷地内のあちらこちらに置き、ほかのクラスや他学年の生徒たちとのつながりを増やそうといったことから始まったプロジェクトです。DIYの経験がある生徒を中心に、楽しくやっています。クラスで真剣に話し合っている姿も印象的です。最初は少しばかり心配でしたが、仕上がりも上々で、感心しています」(小池先生)
1-A8クラスを代表して、中島里穏さんに話を伺いました。
「そもそもベンチに着目したのは、コロナ禍で教室内が密にならないように、アウトドアでコミュニケーションがとれる場所を増やそうと考えたからです。はじめはホームセンターで販売しているキットから入りましたが、作業を進めていくなかで、どんどん本格的な作業がしたくなり、今では図面を描くところから始めたオリジナルベンチの製作も手掛けています。
東野高校は自然豊かなキャンパスも自慢で、見どころが満載です。お気に入りの場所にベンチを置けば自ずと生徒たちが集まり、クラスや学年を越えた幅広い交流がもっと盛んになると思います。ベンチから始まるコミュニケーションって、良いと思いませんか? 2021年度中には2つを仕上げる予定で、ひょっとしたら年度内に3つ目の製作に取りかかるかもしれません。そのできばえは学校見学の際などに確かめてみてください!」(中島さん)
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