第2期生(高2)たち。左から松下慎之介さん、柴田充希さん、福田塁(るい)さん、中林咲(さく)さん。
第3期生(高1)たち。左から茂木良真さん、大石新さん、飯田理央さん、太田吏律さん。
顧問の小嶋徹議先生
同校のロビーで作品を創り上げる『花いけ男子』たち。
全体のバランスを見ながら、真剣に格闘。
流木をうまく使ってダイナミックな作品を創り上げます。
『花いけ』は、華道の宗派といったジャンルを超え、花を使って人を魅了したり感動させたりするアートといえます。正則学園高等学校の『花いけ男子部』のメンバーは、現在10人。このクラブは同校の小嶋徹議先生の声かけによって2019年に結成されました。小嶋先生は創設の目的を次のように語ります。
「私はビッグバンド部の顧問も務めています。ビッグバンドが奏でるジャズと同じように、生徒にエンターテイメントを含めた文化の素晴らしさを体験してほしくて結成しました。
男子が花をいける姿は、ジャズを演奏する姿のようにかっこよく見えると思うのです。そのかっこよさを本校の生徒に知ってほしいという願いもありました。そこで、ビッグバンド部の部員と同じように、大会ではベストを着て参加するようにしています」
小嶋先生が結成した『花いけ男子部』の第1期生は、その年の『第3回全国高校生花いけバトル』(以下、「花いけバトル」)の関東大会に出場しました。同大会では、部員が2人一組のチームを組んで即興で花をいけ、他校のチームと完成度や作法を競い合います。制限時間は5分。花材(いけ花に用いる材料)や花器(花をいける器)は各自が用意します。同校からは3チームが出場。その中からチーム名『B・B・B(ビバップ)』が準優勝に輝きました。同校の『花いけ男子部』が結成1年目にして華々しい実績を残したのです。
第1期生の快進撃は、人気テレビ番組『マツコの知らない世界』で“花いけの世界”として紹介されました。この部員たちはすでに同校を卒業しましたが、その跡を継いだ第2期生(高2)が昨年11月に開催された『第4回花いけバトル』の関東大会に出場。チーム『saru』がベスト4に進出できました。
現在、第2期生と第3期生(高1)が今年6月に開催される関東大会に向け、同校の玄関に花をいけたり、会場を借りて作品を展示したりして、技術と感性を磨いています。そこで、4人の第2期生(高2)から話を聞きました。
中林
「僕と福田くんは同じクラスで仲が良く、小嶋先生に誘われて一緒に入部しました。関東大会は秋に開催されたので、紅葉をイメージして花をいけました。『花いけ』の面白いところは、自分らしさを表現できるところです」(中林さん)
「女子と違い、男子が花をいけたら、どんな作品ができるのか。もっと知りたくて入部しました。正則学園は男子校なので入学する前は“にぎやかな学校”だと思っていました。しかし、実際は静かに一つのことに真剣に取り組む生徒が多いことがわかりました。関東大会では、そんな校風もイメージして花をいけてみました」(福田さん)
松下慎之介さんは、映画制作同好会に所属しています。将来の夢は映画監督になることだと語ります。
「映画には映像美が求められます。そこで、美術に関係することを学びたくて入りました。『花いけ』は同じ花材を使っても、創る人によってまったく違う作品が感性します。僕は男子校である正則学園の校風を意識して、大胆さや力強さのなかにも繊細さを表現できるように花をいけています」
松下さんとチームを組む柴田充希さんは科学部に所属。花や野菜を校内で育てています。将来は植物の品種改良などバイオテクノロジーの研究がしたいそうです。
「僕は小さい頃から花が好きでした。その花で作品が自由に創れると知って入部しました。本番の大会では花がうまく立たなかったりするなど、難しいところはありますが、それだけに完成したときの喜びは大きくて夢中になれます」
続いて4人の第3期生(高1)に話を聞きました。太田吏律さんは、バレーボール部や筋トレに励むワークアウト部に所属しています。
「新入生オリエンテーションで小嶋先生から花いけのお話を聞いたことが入部のきっかけです。『男子校なのに、花をいけるんだ?』と疑問に思うと同時に関心を持ちました。入部して最初に花をいけたときに、先輩から『うまいね』とほめられてうれしくなり、その楽しさと難しさが少しずつわかってきました。『花いけ』を通して、人間的にも成長できたらと思っています」
飯田理央さんは太田さんとチームを組んでいます。第1期生が紹介された『マツコの知らない世界』を見て『花いけ』にますます興味を抱いたと語ります。
「高校入試の際に面接してくださったのが小嶋先生で、そのときに『花いけ』の話を聞いて入りました。部の雰囲気も良く、先輩方とコミュニケーションを図りながら上達できるところに『花いけ』の楽しさがあります。目標は関東大会で良い結果を残すことです」
大石新さんは、学校見学に来たとき、小嶋先生に勧められたのが入部のきっかけでした。
「花をいけることで、心が落ち着き、集中力も身につくのではないかと思って入部しました。『花いけ』の素晴らしさは、完成したときの達成感が大きいこと。また、いけた花を正面から見ると目立たないのに、少し角度を変えると、華やかに見えるなど奥が深いところに魅力を感じています」
茂木良真さんは、大石さんとチームを組んでいます。茂木さんは小さい頃から華道を習い、中学生のときにその面白さに改めて気づき、『花いけ男子』のメンバーに加わりました。
「これまで小さい花瓶にいけていましたが、『花いけ』では大きな花器や流木を使います。また、数多くの花材の中から自分で選んで花をいけます。最初は難しく感じましたが、今は慣れてきて作品が創れるようになりました。6月の関東大会では、納得のいく結果を残したいと思っています」
最後に小嶋先生は部員たちに対する気持ちを次のように語りました。
「大会では、目の前にある花材を見て想像力を働かせながら、5分という短い時間内に作品を創り上げなければなりません。そこで、部員には普段の生活の中で『本物を見よう』『あらゆる体験を大切にしよう』『失敗を恐れずに、いろいろなことに挑戦しよう』と伝えています。部員たちには『花いけ』を通して自分をもっと好きになり、自信を持って生きられるようになってほしいと願っています」
なお、『花いけ男子部』の活動の様子はYou Tubeで見ることができます。
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