電気通信大学を卒業後、民間企業に技術者として8年間勤務。その後1994年に日本工業大学付属中学校・東京工業高等学校(現・日本工業大学駒場中学・高等学校)に数学の教員として赴任し、中高一貫コースの担任を歴任。
電気通信大学を卒業後、民間企業に技術者として8年間勤務。その後1994年に日本工業大学付属中学校・東京工業高等学校(現・日本工業大学駒場中学・高等学校)に数学の教員として赴任し、中高一貫コースの担任を歴任。
「1910年に学校内の実習場で国産初の飛行機を製作しました。ライト兄弟が世界で初めて有人動力飛行に成功してから、わずか7年後のことでした。明治時代から、本校は新しいことに果敢にチャレンジしていたのです」
そう語るのは、校長の大塚勝之先生です。大塚先生は電気通信大学を卒業後、民間企業に技術者として8年間勤務。その後、1994年に日本工業大学付属中学校・東京工業高等学校(現・日本工業大学駒場中学・高等学校)に数学の教員として赴任し、中高一貫コースの担任を歴任しました。
「本校が文京区小石川に創立されたのは、今から110年以上前の1907年のことです。1948年には、現校地である目黒区駒場に移転し、『機械科』『建築科』『土木科』を有する工業学校となりました。高度な技術を生徒に教え込むには、なみなみならぬ熱意とひたむきさが必要です。この考え方は本校の全教員に脈々と受け継がれています」
2006年には女子を迎え入れて共学化しました。
「さらに2008年には『日本工業大学駒場中学・高等学校』に校名を変更して普通科を新設し、現在の高校普通科3コースを設けました。コースは『特進』『理数特進』『総合進学』です。その結果、この普通科の卒業生から国公立大学や早慶上智、GMARCHなどに多く合格者を出すようになりました。進学実績の向上が大きな転機となり、本校は進学校化へと舵を切り始めました。
そして、2021年度より『工業科』の募集を停止します。普通科を開設して以来、10年以上かけて培った指導力を糧に、進学型を強化していくことを教員全員が心に決めたのです」
2021年春から同校は「普通科専一校」として新たな一歩を踏み出したのです。この新しい歩みを目標にして、先生方は教育の質をさらに高めようと研鑽を積んできました。
「工業科の廃止に伴い、本校が新しい発想で、“創造の精神”を継承するコースが2021年春、普通科に誕生しました。『文理未来コース』です。私は本校の学校案内にこのコースの特色を『自由な発想で自分の夢をかたちにする』と書きました。ガラスや紙、木、金属などの工芸から、彫刻、篆刻、俳句まで、『文理未来コース』には普通科の授業以外に、創造する素晴らしさを体験できるプログラムを用意しています。
それは、同じ材料を使っても創意工夫によって、まったく違う作品ができることにあります。つくる人の個性や生き方が作品に現れるのです。そして作品が完成するたびに、大きな喜びや感動を得ることができます。創造することは人の心を豊かにするのです。さらに音楽や美術の教養と同じように、将来どのような道に進んでも役立つと思います。
『文理未来コース』では、こうして積み重ねた創り出す体験を、目標達成に向けた推進力に変えていきます。自分の行きたい大学に合格して夢をかなえるという目標です。このコースで養った創造力は、難関大学の一般入試はもちろん、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧指定校推薦入試)でも大いに活かされるでしょう。教科の学力だけでなく小論文を書く力、面接で語れる力も身につくからです」
2021年春のGMARCHへの合格者数は64名。これは過去最高です。なお、東京学芸大学や東京都立大学などの国公立大学に5名、早慶に3名、東京理科大学に6名が合格しました。
「3年以内にはGMARCHへの合格者が100名に達するはず」と大塚先生は語ります。
この背景には、まず、熱意あふれる教員の指導のもと、高い目標をめざすコース制があります。『特進コース』は国公立・早慶上理などの最難関大学の合格が目標。『理数特進コース』では東京工業大学や電気通信大学、東京農工大学、東京理科大学、早慶などの難関理系大学への合格が目標です。『理数特進コース』には『ものつくり講座』が用意されているほか、同校が創立以来培ってきた工業教育で重要である「面倒見の良さ」が進学指導に注がれています。
合格実績向上のもう一つの背景には、きめ細かなサポート体制があります。その一つが『日駒光風塾』です。これは同校と『駒場東大前』駅の間に建つ大学支援センターで行われている最難関大学受験対策プログラムです。
「この『光風塾』を開講して2021年3月で4回目の卒業生を出しました。毎年、選抜試験をパスした生徒が放課後に学び、難関大学へと巣立っていきます。塾頭を務めるのは、橋本秀一先生です。橋本先生は灘中学高等学校を経て、京都大学を卒業し、長く民間で大学進学指導に携わってきました。橋本先生のもと、東大生・卒業生講師10名ほどが教えています。受講は無料で、現在各学年20名ほどが学んでいます。
本校と東大駒場キャンパスが近いこともあり、先日は、東大生に校内に来ていただきました。高校時代に心がけていたことや、大学生活について語っていただく『東大生シンポジウム』を開催しました。1年生と2年生の100名が参加し、真剣な眼差しで東大生の話に聞き入っていました。参加した生徒たちの進学に対する意識は、ますます高まったようです。
これまで本校では、成績が中位の生徒や勉強が遅れがちな生徒を中心に支援してきました。今後はこうした生徒とともに、成績の優秀な生徒を鍛えて、東大をはじめとする難関国立大や早慶へ、さらに多くの生徒を合格させたいと考えています」
その決意の現れとして、校舎の中心に新図書館が移設されます。進学型を強化する同校のシンボルとなるでしょう。
「しかし、大学合格だけが本校のめざすところではありません。本校が育みたいのは人間性です。創立以来、本校が大切にしてきて熱意ある教育によって、周りの人にはできる限り優しく接し、自分にはいつも厳しく律するようにして、しなやかさを身につけて、社会に送り出していきたいと考えています」
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