コロナ禍による休校期間を「自宅学習期間」として、オンライン授業や課題配信を行ってきた神田女学園高等学校。5月からはライブ授業も始まって、通常の年とほぼ変わらない学習サポートを行いました。
進路志望が固まりつつある高2生は、「今、自分がやるべきこと」を明確にし始めています。学校再開から秋までの間には、対面、オンラインの双方で自分の将来を見つめる取り組みが行われました。2020年度のキャリアデザインについて、進路指導部長の有馬史彦先生と、高2学年主任の篠川俊太郎先生にお話を伺います。
コロナ禍による休校期間を「自宅学習期間」として、オンライン授業や課題配信を行ってきた神田女学園高等学校。5月からはライブ授業も始まって、通常の年とほぼ変わらない学習サポートを行いました。
進路志望が固まりつつある高2生は、「今、自分がやるべきこと」を明確にし始めています。学校再開から秋までの間には、対面、オンラインの双方で自分の将来を見つめる取り組みが行われました。2020年度のキャリアデザインについて、進路指導部長の有馬史彦先生と、高2学年主任の篠川俊太郎先生にお話を伺います。
16歳という年齢から見えている社会は決して広くありません。その時点で将来どうなりたいかを決めることは難しいため、まずは社会を知り、自分が社会とどう関わりたいかをイメージできるようなキャリアガイダンスが必要です。
高2を対象とする「シゴトのチカラ」というキャリアカウンセリングでは、オンラインで働く20代女性の話を伺いました。最初は社会に出た自分を明確にイメージできなかった生徒も、同じ女性が選択した経緯を聞いているうちに、だんだんと引き込まれていったようです。講演の後はグループに分かれてワークショップを行いましたが、人生の先輩が提示した課題について考え、本音で語ることができました。
進路指導部が目標とするのは「主体性を持った将来選択」です。社会と自分とのつながりを考えるうちに、自分が社会で活躍する姿が見えるはずです。そのうえで大学の学部・学科選びも主体的にできるでしょうし、大学で学んだ学問を将来に結びつけることもできるでしょう。
本校の進路指導は、「マワリ」「シャカイ」そして「ジブン」を知るキャリアカウンセリングから始まって、主体的に大学を選択するカレッジカウンセリングへと進みます。
高2の3学期を“高3のゼロ学期”と位置づけています。高2の2学期までに将来の自分がどうありたいかをイメージできるようになったうえで、3学期には進路選択の実践に取り組むためです。
「シゴトのチカラ」のワークショップで、仕事をするうえで苦労したことやぶつかった壁について伺うなかで、生徒の仕事に対する意識が変化してきました。「仕事とは、自分のためだけではなく、誰かのために行うもの」という意識を持ったようです。そこで今何を学ぶべきかが見えてきたところで、大学の学部・学科を選択することができます。
高1と高2を対象に行う「学生図鑑」は、約20人の大学生に来ていただいて、自分が学んでいる学問領域について語ってもらいます。本来であればこちらから大学に足を運ぶオープンキャンパスを、学校内で行うイメージです。
ほかにも本校を卒業した先輩に、高2の秋にどんな勉強をしていたのか、どのような大学生活を送っているのかを語ってもらう機会もあります。
2020年度はコロナ禍で変更した行事もありましたが、高2生は自分の進路が見えてエンジンがかかってきたようです。3学期、高3の「ゼロ学期」には、具体的な進路に向けてスタートを切ることができそうです。
そのほかにも、海外に進学した先輩の話を聞いたり、昨年はスミソニアン博物館のJAZZメンバーが来校したりと、本物の「コトバ」は生徒の心を動かすものだと感じています。
受験や部活動、将来のこと、そして人間関係など、高校生の心は揺れ動きがちです。そんな生徒たちのメンタル面を支えているのが保健室、カウンセリングルーム、図書室の「三室」です。養護や司書の先生方は、担任とは異なる視点で生徒を理解し、異なる立場から生徒を支えています。
保健室の通常の役割は、健康診断や救急処置、環境衛生のサポートですが、本校の保健室はカウンセラーや司書の先生方と連携を取って、生徒の「心の健康」をサポートすることも大切な役割です。
中高時代は心の状態が何らかの症状となって身体に現れることがあります。本人も気づかないうちにストレスを受けていることもあります。今までは心のサポートといえばカウンセラーだけの職域でしたが、その前のクッションとして司書や看護師が関わることで、より手厚くなり、「点」ではなく「面」のサポートをすることができます。
休校中には本校のカウンセラーが「しゃべろう、あそぼう」というオンラインカウンセリングを立ち上げました。これは本格的なカウンセリングではなく、単に話をする、あるいは一緒に絵を描くなど、コミュニケーションの場として活用されました。新学期が始まっても休校によって学校に来ることができなかった新1年生の利用が多く、登校後に感謝のことばをいただき、本当に良かったと感じています。
受験を控えた高3生は、進路指導の教員に相談することが多いのですが、理由がわからない頭痛や腹痛はストレスが原因ということもあります。そこで保健室は進路指導部とも連携を取って、メンタルサポートを行っています。
入学時から「三室」についてのガイダンスを行っているので、生徒たちは「学習のことは司書の先生、体調が悪かったら保健室、心の問題はカウンセリングルーム」と、主体的に選択しているようです。
図書室は三室の一つとして生徒の心理面をサポートしていますが、生徒たちは気軽に立ち寄って、「何か面白い本はない?」「おすすめの本は何?」と気楽に聞ける場所と認識してくれているようです。
学習とか成績とかの枠を払い、純粋に興味があることを学べることが本当の意味での「学び」になっています。
高3生は小論文のためのテーマ選びや、参考資料を求めて図書室を利用します。国語科や社会科の授業で必要な図書はもちろん、探究学習など、課題を仕上げるための参考文献を探しにやってくる生徒もいます。また、リサーチクエスチョンが固まっていない生徒には、アドバイスをすることもあります。生徒たちはよく図書室を利用してくれるので、今まで読んできた本や、好きなことなど、普段とは違った視点から生徒の個性を把握してアドバイスをしています。また、保健室とも連携しているので、生徒一人ひとりへの理解度は高いと思います。
休校期間中には在宅貸し出しを行いました。生徒から本の希望を取り、週2回、生徒の自宅に本を発送しました。返却は学校が再開してからというルールで、100点くらいは発送したと思います。図書室に向けた新1年生の期待度は高く、学校が再開してからも多くの生徒が来室しています。
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