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私立中高進学通信

2022年特別号

心身の成長を支える食生活を徹底レポート

海陽中等教育学校

人として大切なことを学び、リーダーとしての素養を育む
全寮制ならではの「食生活」に密着

全寮制である海陽中等教育学校において「食生活」は、楽しい憩いのひとときであるとともに、同校がめざす全人教育において不可欠な、心身の成長の場として位置づけられています。日々のメニューやその魅力から、食堂スタッフのこだわり、生徒にとって兄のような存在である「フロアマスター」が行う食事指導、コロナ禍における感染予防対策、そして生徒たちが感じている自身の成長まで、海陽中等教育学校の“食”事情に密着しました。

オーシャンビューのホールで、国内外の多彩な“食”を体験

 生徒たちの食生活の舞台となるのは、教室棟と「ハウス」と呼ばれる寮の中間に位置する食堂棟です。3食をいただくのは、大きな窓から三河湾を一望できる「ダイニングホール」。調理を担う日本ゼネラルフード株式会社の上田 浩正店長は、「3食を担っているので、カルシウム豊富な牛乳などの乳製品を朝・夕の2回付けるなど、栄養バランスを第一に考えた献立を作成しています。またアレルギーなどで食べられない食材がある方については、入学前の面談で詳細を聞き取った上で、個別に『ST(スペシャルトレイ)食』をご用意しています」と話します。

 全寮制ならではの大きな特徴は、家庭の食事と同様に、食べ盛りの生徒たちの満足感や季節感、“食べる楽しみ”にまで配慮がなされている点にあります。ご飯・汁物はおかわり自由で、月単位の申込制でタンパク質などを補うメニューを1品追加できる「プラスワン食」も設定。毎月10日の「魚(とと)の日」と毎月29日の「肉の日」にはそれぞれ、普段よりもグレード・ボリュームなどをアップした魚料理・肉料理が登場します。さらに月に数回、さまざまなテーマに沿って出される「特別メニュー」では、季節のイベントにまつわるメニューや日本各地の郷土料理、外国の料理などを楽しめます。

 5年生の浦上 正太郎さんに、同校での食生活の魅力や思い出深いメニューについてうかがいました。「栄養バランスに優れた食事のおかげで、入学してから現在まで、体調を崩すことなく元気に過ごすことができています。特に印象に残っているのは、ハロウィンの日の夕食です。特別メニューに加えて、スタッフの方が仮装してお菓子を配ったり、照明を少し落としたりと、ハロウィンらしい雰囲気づくりで盛り上げてくださいました。また特別メニューとして出される外国の料理は、異なる価値観に触れる機会の一つ。先日の中南米フェアではメキシコやペルーといった国々の代表的な料理を提供してくださり、『こういう味付けがあるんだ!』という発見を得ることができました。本校での食生活は、まさに『同じ釜の飯を食う』という言葉で表現できるかもしれません。いつの間にか、仲間に対して家族のような連帯感を抱いている自分がいます」(5年生・浦上さん)

 こうした生徒の声は、ダイニングホールのスタッフの大きな励み。加えて、その後のメニュー考案にも活きるそうです。「中高生には不要かなと思い、アジの塩焼きにレモンを添えずに出した時、“レモンがあるとさっぱりしておいしいですよ”という指摘をいただいて、そういうニーズもあるということに気づくことができました。生徒の皆さんには可能な範囲で、『おいしかった』『辛かった』など、カウンター越しに感じたことを伝えていただけたらうれしいですね」(上田店長)

店長/上田 浩正さん(日本ゼネラルフード株式会社)店長/上田 浩正さん(日本ゼネラルフード株式会社)
黒毛和牛をテーマにした特別メニュー「黒毛和牛メンチカツ丼」黒毛和牛をテーマにした特別メニュー「黒毛和牛メンチカツ丼」
個々に対応したST食個々に対応したST食
5年生/浦上正太郎さん5年生/浦上正太郎さん
“食”を通して養われる、感謝の気持ちとコミュニケーション能力

 同校では、未来の日本を牽引する人材に求められる社会性、協調性、コミュニケーション能力、リーダーシップを育むことを目的とし、全寮制を導入しています。寮は「ハウス」と呼ばれ、ハウスでの健康管理や生活指導は、教員経験者や企業などでの社会経験が豊富な人が務める、生徒にとって親のような存在の「ハウスマスター」と、賛同企業から出向し、兄のような存在としてハウスでの生活を共にする「フロアマスター」が担っています。共同生活における「食」の位置づけについて、澤田 真弥フロアマスターはこう語ります。

「“食”は体と心、両方の成長を支えるものとして捉えています。心を育てる取り組みの一つがフロアマスターによる食事指導で、以前から、衛生対策の基本や食事に関する礼儀・マナーについて学ぶ場を設けてきました。コロナ禍においては、生徒に普段とは違った様子がないか、食事中の見守りで安全確保に努めながら、食事指導でウイズコロナ時代に求められる意識などにも触れ、新型コロナウィルス感染症対策の遵守を徹底しています」

 めざすのは、キャンパスの外でも、感染予防に対して高い意識を持って生活ができるように導くこと。特に手洗いの徹底、生徒同士の距離感、黙食の徹底の3つに重点を置き、食事前はハウスマスターが手洗い場に常駐して正しい手洗いを行っているかを確認する、各テーブルで1名ずつ食事をとるなど、さまざまな対策を行っているとのことです。

 また同校では、全学年を収容できるダイニングホールで生徒が自由に席を選べるようにすることで、先輩・後輩や仲間との交流を広げ、深める場としていました。その狙いは、リーダーシップの醸成にあります。

「他学年の生徒、フロアマスターやダイニングホールのスタッフとも関わり合い、『年齢が違う人にどのようにアプローチすればよいのか』、『どのような振る舞いをすればまとめることができるのか』を考えるきっかけにしてほしいと思っています。コロナ禍においてはその実践は難しいものの、食堂連絡委員会の生徒が異学年との情報共有を目的に、食事中に気軽に読めるツールとして、4・5年生が担う各委員会の活動報告を作成し、テーブルにセットしました。1~3年が先輩の取り組みを知ることで、今後の成長につなげてくれればと考えています」(澤田フロアマスター)

 こうした“交流”を重視する同校の姿勢は、1年生の「皿洗い体験」にもあらわれています。ダイニングホールのスタッフの方々の大変さを理解し、心の底から「ごちそうさま」と言えるようにすることを目的としたもので、この日、見学することができました。帽子・エプロン・長靴に身を包んだ生徒たちは、たどたどしい足取りで洗浄室へ。つけ置きしている食器をシンクから取り出す係、食器を洗浄機にセットする係、洗浄後の食器を取り出す係などに分かれて作業をスタートしました。濡れた床の上で体のバランスを保ちつつ食器を扱うのは想像以上に大変です。最初は手間取っていましたが、徐々にポイントを掴み、作業を終える頃にはスタッフの方と連携して作業を進める姿が見られるまでになっていました。体験を終えたグループの生徒の感想からは、残食への意識を高めることにもつながっていることがうかがえたそう。同校において“食”は、まさに多様な学びを創出する場となっているのです。

フロアマスター/澤田 真弥さん(三菱電機株式会社より出向)フロアマスター/澤田 真弥さん(三菱電機株式会社より出向)
手洗いは以前から取り組んできた衛生対策の一つ手洗いは以前から取り組んできた衛生対策の一つ
コロナ禍以前の食事の様子。コロナ禍においては3学年ずつに2分割の上、1人1テーブルの黙食を徹底しているコロナ禍以前の食事の様子。コロナ禍においては3学年ずつに2分割の上、1人1テーブルの黙食を徹底している
夕食後に行われる1年生の「皿洗い体験」夕食後に行われる1年生の「皿洗い体験」
スクールショップでの買い物を楽しみながら自律性を確立

 キャンパス内におけるもう一つの食の拠点として、生徒たちにとって欠かせない存在となっているのが、ダイニングホールに隣接するスクールショップ「メグリア」。夕食後には、ハウスに持ち帰る飲み物やお菓子を選ぶ生徒たちで賑わいます。決済はカードで行いますが、1~3年生は1ヶ月に使える金額の上限が設定されており、ペース配分を考えなければなりません。「月の前半で使い切ってしまった!」といった失敗を経て、徐々に金銭感覚と自律心が培われていきます。「メグリアに立ち寄る時間は、毎日の楽しみの一つです。1年生の時にお小遣い帳をつけたことで、1日に使う金額はこれくらいかなという意識が芽生えました」(5年生・浦上さん)

 この日、メグリアを案内してくれたのは、先述した食堂連絡委員会のメンバーである5年生の清水 雄基さん。食堂連絡委員会では、生徒へのアンケート調査の結果をもとに、ダイニングホールとメグリアに対する要望の実現をめざし、運営会社との交渉を行っています。清水さんはメグリア班の一員として、メグリアの商品ラインアップの追加・変更を担当しているそうです。

「一番苦労したのは、アンケートの作成です。質問の意図とは異なる回答が多く、質問文を作る難しさを実感しました。アンケート回収後は交渉内容について検討を重ねてきましたが、今後は要望の多かった、あるスナック菓子の味の変更と、冷凍食品のチャーハンを導入することでラインナップのさらなる充実に向けて交渉を進めていきたいと思っています。食堂連絡委員会の活動に参加したきっかけは、『メグリアに自分の好きなお菓子を取り入れてほしい』という思いでしたが、今では生徒たちの満足度をアップするという仕事に面白みを感じています」(5年生・清水さん)

“食”という切り口一つとっても、これだけ多彩な学びの場があるのは、全寮制だからこそ。同校ならではの濃厚な共同生活の中で自然と磨かれる、社会で必要な「対人能力」「自己管理能力」「問題解決能力」が、一人ひとりの未来を切り開く力となるのです。

スクールショップ「メグリア」。決済はカードで行うため、現金は不要。利便性のさらなる向上に向けて、2022年度からは顔認証システムを搭載した自動販売機も導入している。スクールショップ「メグリア」。決済はカードで行うため、現金は不要。利便性のさらなる向上に向けて、2022年度からは顔認証システムを搭載した自動販売機も導入している。
5年生/清水雄基さん5年生/清水雄基さん
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