Oops! It appears that you have disabled your Javascript. In order for you to see this page as it is meant to appear, we ask that you please re-enable your Javascript!
LINEで送る

スクールポット中学受験版 - 首都圏版学校情報検索サイト スクールポット中学受験版 - 首都圏版学校情報検索サイト

ツイッター フェイスブック

私立中高進学通信

2021年特別号

『さまざまな体験を通じて「志」を醸成するハウス生活』

海陽中等教育学校

各界の第一線で活躍する力を育む
海陽中等教育学校の「ハウス」密着レポート

設立から15年、海陽中等教育学校の卒業生が各界の第一線で活躍しています。同校が他校と一線を画しているのは、全生徒が「ハウス」と呼ばれる寮で6年間を過ごす「全寮制」であることが挙げられます。10代の多感な時期に家族と離れて暮らすことは、家族からの恩恵に気づく貴重な体験となりますが、同校のハウスがどのような環境であり、何が彼らの成長を促しているのかが気になるもの。そこで授業の終わった土曜の午後に同校を訪ね、ハウス生活を密着取材しました。

「未来の日本を牽引する人材の育成」を建学の精神として掲げ、日本を代表する企業の賛同のもと、2006年に設立した同校は、設立当初から全寮制を打ち出していました。

ハウスマスター金木先生ハウスマスター/金木さん

「本校が全寮制を導入しているのは、未来の日本を牽引する人材に求められる力が社会性や協調性、さらには豊かなコミュニケーション能力とたくましいリーダーシップであり、これらの力はハウスでの共同生活で培われるからに他なりません。近隣に自宅のある生徒も他県出身者も全員がハウスで6年間を過ごします。日本全国からやって来た生徒がハウスでの共同生活を通じて自分はどうすべきか、相手を尊重するとはどういういことかといった大切なことを学びます。その様子は、兄弟が切磋琢磨しながら成長するかのようです。本校の寮をハウスと称しているのは、ここに集う人が家族のようなつながりの中で成長をするからです。また、生徒のハウスでの健康管理や指導などを行う、私たちハウスマスターは、いわば生徒の親のような存在で、教員経験のある人や企業などでの社会経験が豊富な人が担っています」と語るのは、金木 健ハウスマスターです。

 健康管理といえば、コロナ禍の今、感染予防対策も気になるところです。金木ハウスマスタ−は、この質問に「3密を避け、手洗い、うがい指導はもちろん、共有スペースの消毒などに徹底して取り組んでいます。また、長期休暇などで実家に帰省した場合は、ハウスに帰って来てからの2週間はマスク着用を徹底していますが、2週間を過ぎれば安心ですから、その後は校内ではマスクをせずにのびのびと過ごすことができます」と明快に答えてくださいました。

 また、ハウスマスターの他に主に賛同企業から出向している企業人で、生徒の兄のような存在として対応する「フロアマスター」もハウスで共同生活をしています。

「フロアマスターは、ハウスの各フロアーを担当し、日々の生活指導や悩み相談に対応したり、自分の専門や興味のある分野をテーマに『ソサイエティ』という社会教養講座を開講するなど活動は多岐にわたります」と教えてくださったのは船戸 信吾フロアマスターです。この日、船戸フロアマスターは、自身の興味のある分野の漫画を題材に「ソサイエティ」を開講するとのことで参加することになりました。

フロアマスター/船戸さん(中部電力株式会社)フロアマスター/船戸さん(中部電力株式会社)
ソサイエティソサイエティ

 この日の題材は、「キングダム」「ワンピース」「ジャイアントキリング」などで、どれも幅広い年代から支持を受けている人気の作品です。船戸フロアマスターは、各漫画のキャラクターやストーリー展開を紹介しながら、これらの作品が長きにわたって支持を受けている所以を解説します。特に印象的だったのは、船戸フロアマスターが「素晴らしい作品は、仲間と一緒に目標に向かって力を合わせる大切さや、仲間の存在に感謝することを教えてくれます。このような優れた漫画は、一流企業の経営者がリーダー論を学ぶ資料として使っているほどです」と語った場面でした。

 ソサイエティ終了後、船戸フロアマスターにインタビューを試みました。

「ソサイエティでは、自分の興味のある分野だからといって皆が興味を持つとは限らないため、独りよがりにならないように心がけています。今回のソサイエティで伝えたかったことは、今や漫画は単なる娯楽ではなく、人間をリアルに描くことでリーダーシップのあり方や人としてどうあるべきかを問うものにもなっているということです。また、ソサイエティの他にも、社会の動きを知るために外部講師を招いて特別講義やキャリア講座などのキャリア教育を展開しています。キャリア講座などでは、本校のOBが講師になる機会も増え、先日は財務省に入省したOBにキャリアに関する体験談をお話いただきました」。

フロアマスター/新谷さん(西日本旅客鉄道株式会社)フロアマスター/新谷さん(西日本旅客鉄道株式会社)

 次に、ハウスのパブリックラウンジで生徒と談笑していた新谷 裕輝フロアマスターにマイクを向けてみました。

「フロアマスターの役割は、社会人の先輩として躾教育やルールを守る大切さを伝えること、さらには人生の先輩として生き方、学び方、考え方を伝えることです。また、生徒の安全を守ることや企業人として学校運営に参画することも大切な仕事です。

 私がフロアマスターとして心がけているのは、非があればすぐに謝るなど、人として信頼される行動をとることです。また、生徒に年齢が近いため、何でも相談できるような雰囲気も大切にしています」。

新谷フロアマスターと生徒

新谷フロアマスターと生徒

 新谷フロアマスターの優しい語り口を聞いていると、お兄さんのようなフロアマスターが生徒をサポートしているのは、生徒にとってはもちろん、保護者にとっても頼もしいと感じるであろうことが伝わってきました。

5年生/杉浦さん5年生/杉浦さん

 そこへ5年生の杉浦 叶汰かなたさんがやって来ました。ハウスのリーダーとして活動するハウス長を担っているそうです。杉浦さんに、ハウスでの生活の様子やそこから学んだことをインタビューしました。

「税理士の祖父が、この学校を勧めてくれました。中高一貫の全寮制の学校なので、クラスメイトとの絆が深まるのが良いなと思いました。先輩に話しを聞いたところ、大学に行っても社会人になっても、皆、ずっと仲が良いといいます。この絆は、文化祭や体育祭、イベントのときに発揮されていると感じます。これまでのハウスでの生活で、洗濯や掃除が手際よくできるようになりましたし、一緒に生活するフロアマスターは、数年前に大学受験を経験されていますから、参考になるアドバイスがいただけるのが良いと思います。将来の目標は税理士になること。そのために、難関大学の経済学部を目指しています」。

 インタビューの途中、中庭から歓声が聞こえてきました。声のする方へと移動してみると、生徒がバーベキューを楽しんでいる真っ最中でした。

バーベキュー風景

バーベキュー風景

「バーベキューは、ハウスイベントの一つです。企画、運営、食材の仕入れなど、すべて生徒が行っています」と語るのは、山下 裕也フロアマスター(株式会社伊藤園)です。

 ここで、1年生の渡邉 真人さんと3年生の中井 陸人さんに同校に進学した理由や成長できたと思うことそして、将来の目標をインタビューしました。

1年生渡邉さん1年生/渡邉さん

「愛知県豊橋市の出身です。以前から宇宙や星に興味があり、この学校には大きな天体望遠鏡があると聞き入学しました。ハウスでの集団生活を通じて、協力する大切さやフロアマスターから実社会のことを学べたことが良かったと思います。また、掃除を自分でするため、部屋が乱れていると忘れ物が多くなり、小テストの点数が下がることがわかり、自分から掃除をするようになりました。勉強が好きで、クラスメイトに教えることが多いので、将来は数学の先生になりたいと思っています」(渡邉さん)。

3年生/中井さん3年生/中井さん

「生まれは愛知県ですが、その後、北海道に引っ越しをしました。北海道からこの学校に進学したきっかけは、両親や両親の知人がこの学校を勧めてくれたからです。小5のときにハウスでの宿泊体験をしたときにフロアマスターと話をして、この学校なら自分を磨けると考えて進学を決意しました。ハウスでは、洗濯も掃除も自分でしなければならないため、自主自立の精神が養われると感じています。長期休暇で実家に帰ったときは甘える気持ちが湧いてきますが、この甘えを断ち切ることが成長につながると思いました。また、ハウスの仲間とはずっと一緒にいるため、勉強を教え合ったり、悩み相談をしたり、兄弟のように仲良くなります。ときにはぶつかることもありますが、それも成長の糧になっていると思います。将来の目標は、教育関係の仕事について、日本と世界の教育をより良くすること。そのために東大、京大を目指しています」(中井さん)。

 学年を問わず、どの生徒も自分の言葉で自分の考えを明確に語る姿が印象的でした。

 また、ハウスマスター、フロアマスターの他に、ハウスには生徒たちの生活を支える「ケアサポーター」もいます。藤田 ゆかりケアサポーターに、仕事内容などを語っていただきました。

ケアサポーター/藤田さんケアサポーター/藤田さん

「ハウス内の設備点検や補修箇所の発見、リネンの交換、郵便物の受け渡しなど、生徒の生活がスムーズにできるようにサポートをするのが私たちの役割です。彼らが卒業するとき、頼もしくなった姿を見ると感慨深いものがあります」。

 思春期の子どもたちは、安心で安全な環境に身を置くことで心を開きます。心の奥にあるのは、「個性」という名の大切な宝物。自分の言葉で堂々と語ることができるのは個性が芽吹いているからでしょう。同校のハウスでの生活を、ハウスマスター、フロアマスター、ケアサポーターが、陰になり、日向になって支えているからこその賜と感じさせてくれた一日でした。

ページトップ