新しい時代に対応できる力をつけるために、2022年度より藤村女子高等学校のコース制が大きく変わります。新コースは『アカデミッククエスト』『キャリアデザイン』『スポーツウェルネス』の3コース。各コースとも『探究』をメインテーマとする教育を実践します。新コースについては副校長の廣瀬真奈美先生が、探究活動については入試広報副部長の江口郁海先生が語ってくださいました。

副校長 廣瀬真奈美 先生

　2022年度よりスタートする新コースは、学問、職業、スポーツという3つの切り口から自分の興味を発見し、将来を切り拓くためのコースです。

　たとえば『アカデミッククエスト』コースでは、高1の前期に学問について探究し、レポートの書き方やプレゼンテーションのスキルを身につけ、後期は学んだことを活かしながらフィールドワークなどを行います。国語科教員から見ると、吉祥寺は文学の街です。太宰治ゆかりの地であり、山本有三記念館や森鴎外のお墓もあります。フィールドワークの舞台としての吉祥寺は、文学的なアプローチにも最適な場所といえるのです。また、井の頭公園には、徳川家康が茶の湯のために使った「お茶ノ水」という湧水もあります。これは歴史的にも地理的にも探究のテーマになりそうです。

　探究を通じて学問に興味をもったら、それがどのような学部につながっているかがわかると思います。大学のオープンキャンパスにも「どんな学問が学べるのかな？」という気持ちで参加できるはず。『アカデミッククエスト』コースの目的の一つは、主体的な進路選択です。

　『キャリアデザイン』コースは、まだ自分の将来が見えていない生徒でも具体的に将来を考えられるように、「なりたい自分」を思い描きながら進路選択をするコースです。

　高1では自分の興味関心を探し出すことから始め、ライフプランニングやマネジメントなどその先の人生を切り拓くための知識を養い、高2ではマスコミ・メディア、起業、医療、マーケティング、観光のゼミに分かれ、大学や企業でインターンシップを経験します。

　コロナ禍を経験した世界は大きな変容を遂げています。これからの職業や職業観は、今までとはまったく違ったものになるはずですが、今の高校生が社会に出たときに、従来とは異なる新しい発想で職業を創造してほしいと願っています。

　『スポーツウェルネス』コースは「誰もがより健康に、美しく、輝く人生を送る」ことを切り口に、将来を考えるコースです。

　今まで本校には『スポーツ科学』コースがあり、運動部の生徒が所属していましたが、新しく設置する『スポーツウェルネス』コースは、運動部所属の生徒という制限はありません。もちろん文化部所属でもいいですし、「より健康に美しく生きる」ことに興味をもって学ぶ意志があれば誰でも所属可能です。そして競技者として頑張っている生徒のなかには将来スポーツのコーチングやスポーツマネジメントの道に進みたいという生徒もいるでしょう。

　『スポーツウェルネス』コースは、高2で教育・医療専攻とスポーツ健康専攻に分かれます。教育・医療の分野は、体育の教員や理学療法士、看護師などを想定しています。看護は『アカデミッククエスト』と『キャリアデザイン』コースからでもめざすことはできますが、『スポーツウェルネス』コースはスポーツを入り口とした看護分野になります。

　どのコースも、探究と経験を通じて「自ら考え、行動し、表現する女性」を育てることが目標です。多様化する進路選択をしなやかに乗り越え、大きく変革する社会の中で、自らの道を創造してほしいと願っています。

　藤村女子高等学校には、吉祥寺の街や武蔵野という土地を舞台にしたさまざまな探究活動がありました。吉祥寺の街を明るくする壁画制作をはじめ、武蔵野市を本拠地とするサッカーチーム『東京ユナイテッドFC』と提携した応援グッズの企画・制作など、多彩な取り組みを実践してきました。

　現在、高2の探究活動はゼミ形式をとり、学年の教員が開講するゼミを選択し、探究からプレゼンテーション、成果物の制作まで一連の経験を積み重ねています。今年、高2の探究活動を進める国語科の江口郁海先生が、探究活動について語ってくださいました。

入試広報副部長　江口郁海 先生

　今年、私が開講しているゼミは「真・才色兼備」という名前で、色彩検定のテキストを基本にして色について学び、その後自分でテーマを決め研究しています。また、身近な色をサンプリングして集め、虹を作ろうという年間のプロジェクトもあります。

　先日は井の頭公園でそれぞれが目についた色を撮影したのですが、一人ひとり目のつけどころが違っていて、とても興味深いフィールドワークになりました。

　最初は色彩について学びますが、最終的には色に関わるテーマを題材に、疑問を持ち、どんなアプローチでその疑問を解消したかをまとめて発表します。色彩検定の公式テキストを使うので、検定を受検する生徒もいるかもしれません。

　今年は高2担当の9人の教員が、それぞれゼミを開講しています。それぞれの担当する教科内容とは離れたものも多くあります。たとえば『江戸ライフ』を担当するのは国語科の教員で、大学時代に専攻していた近世の文化について探究するゼミです。

『スポーツを愛でたい2021』を担当するのは社会科の教員ですが、柔道部の顧問も務めているため、スポーツを取り上げています。『トリックアートをつくろう』を担当するのは数学科の教員で、理系の生徒が多く参加しています。私は国語科担当なので、古文を軸に考えようと思ったのですが、自分も勉強しながら生徒の自由な発想を伸ばしたいと思って色彩のゼミにしました。

　2022年度より新コースが設置され、それぞれのコースの特色を活かした探究活動が始まります。ゼミ活動は“ふじ活”という名称で、学校案内にあるQRコードから見ることができます。

“ふじ活”で大切にしたいのは、問題を発見し、自分なりの結論を出し、発信あるいは表現すること。すぐに答えが出なくても、正解のない問いであっても、自分なりに取り組んで気づきを得てほしいと思います。