私立中高進学通信
2021年1月号
実践報告 私学の授業
実践学園中学校
多彩な理数教育を展開
プログラミングで表現力を培う
オリジナルのリベラルアーツ&サイエンス教育
中1のコミュニケーションデザイン教育科の授業で行われたプログラミングのワークショップの様子。
オリジナルゲームを作る経験を通して、表現力やコミュニケーション力を育てる、同校ならではの取り組みです。
理数教育に特化した取り組みで
生徒の興味を育てる
『豊かな人間味のある人材の育成』を教育理念とする同校。中高一貫コースは高入生とは合流せず6年間の一貫教育を通じて、『リベラルアーツ&サイエンス教育』を指針として掲げ、幅広い知識や教養、グローバル社会で活躍できる力の育成をめざしています。近年は特に理数教育に力を入れ、科学的思考力・表現力を育む独自の理科教育プログラムを行っています。
阿部宏喜東京大学名誉教授が監修した体験型の理科特別授業もその一つ。校舎屋上に造設された『実践の森』での農園体験や東京大学の演習林の見学、野鳥観察、阿部教授と理系分野についてのディスカッションを行う軽井沢サマースクールなど、体験的な学習が特徴です。このほか、著名な教授陣を招いて行う大学模擬授業も実施しており、世界最先端の研究に触れる場を提供することで、生徒たちの理系分野への興味を引き出し、育てる機会としています。
普段の授業でも、理数教育への注力が見て取れます。中1の理科を担当する二宮先生の授業では、予習を宿題として課し、得た知識を実証していく反転授業を行うことで、生徒がより興味を持って取り組めるようにしているそうです。
「知識を得てから授業を受けることで、生徒はより主体的に学ぶようになります。学びが深まり、興味を持つ分野も拡がっていることを実感しています。前向きに学ぶことで、学力もしっかりと定着します」
プログラミングを通して
コミュニケーションを学ぶ試み
2009年から同校に新設された『コミュニケーションデザイン教育科』(※)の授業でも、理数系のワークショップを行っています。ICTツールを使う機会を多く設けているのもこの授業の特徴です。同校では、2020年度の入学生からは全学年が1人1台使用しているiPadに加え、Chromebookも導入。授業で積極的に活用し、複数のデジタルツールを使いこなす機会としています。
今回取材した中1の『コミュニケーションデザイン教育科』の授業では、プログラミング用アプリを使って、ゲーム作りに挑戦していました。初歩的なアプリなので使い方は簡単ですが、ゲームを作るには論理的な整合性やさまざまな工夫が必要となることに、生徒たちは気がつきます。
生徒同士で作成したゲームを見せ合い、アドバイスし合う時間を設けることで、一緒に考え、ほかの生徒の意見を聞き、工夫する経験もできました。
プログラミングの基礎を楽しく学びつつ、表現する力や協働する力も育むこの取り組みは、同校がめざすサイエンス&リベラルアーツ教育を体現するものと言えます。
※コミュニケーションデザイン教育科…グローバル社会に必要なコミュニケーション力を養う科目として、週1回のワークショップを中心にさまざまな体験型授業を行っています。
東京大学名誉教授による理科特別授業を体験
同校では、教育顧問を務める阿部宏喜東京大学名誉教授による、理科の特別授業が実施されています。阿部先生による講義のほか、1号館の屋上にある『実践の森』での体験授業も行っています。『実践の森』にはビオトープや農園のほか、太陽光パネルや水の循環システムも設置され、特別授業での環境教育にも活用されています。
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で見送られましたが、同名誉教授と直接ディスカッションできる軽井沢サマースクールや、田無にある東京大学の演習林の見学など、年間を通じて体験型の理科教育が実施されています。
阿部宏喜東大名誉教授による理科年間教育
日程 | 対象 | 内容 |
---|---|---|
5月 | 中1 | 東京大学 田無演習林 見学 |
7月 | 高1 | 講演「教養としての生物進化」 |
7月 | 中1 | 自然教育園(目黒) |
8月 | 中1、中2 | 軽井沢サマースクール |
9月 | 高2 | 課題ディスカッション |
10月 | 中1 | 実践の森 実習 |
11月 | 中3、高1、高2 | 大学模擬授業 |
2月 | 高2 | 特別授業「おいしさの生物学」 |
2月 | 中2 | マグロとカツオの特別授業 |
(2019年度例)
授業レポート
中1の『コミュニケーションデザイン教育科』の授業
プログラミングで「伝える力」を育成
この日は、iPadで「Viscuit(ビスケット)」という初心者向けのプログラミングアプリを使って、生徒一人ひとりが自由にオリジナルゲームを作成していきました。直感的に操作できるアプリなので各自がどんどん制作を進めていきますが、操作がわからない時は教員がていねいにフォローしてくれます。
「コンピュータの授業ではないから、自分のことを自分らしく表現するのが課題だよ」と指導を担当する森圭司先生が、生徒たちに声をかけていきます。プログラミングを通して、表現する力、伝える力を培うことが、今回の取り組みの目的なのです。
「今は1人で集中する時間」「友達と見せ合って、相談してみよう」と、教員がタイミングを見て声をかけることで、個人で思考を組み立てる時間と、自分を表現する時間を両立させ、これを繰り返すことで思考力を伸ばし、自己を表現する経験を積み重ねています。
授業の最後、2名の生徒のゲームを大きなスクリーンで再生しました。ゲームを作った生徒が、「思ったようにうまく作れなかった」と言うと、先生は「じゃあ、どうすればもっと面白くなると思う?」と生徒に呼びかけます。「ボールを遅くする?」「人を増やす!」と、次々に声があがります。
生徒たちは授業を通し、プログラミングの基礎を習得しながら、「作る」「伝える」「フィードバックをもらう」という、協働作業に必要なプロセスも学んでいるのです。
生徒たちはiPad上にタッチペンで思い思いに絵を描いて、キャラクターを作成していきます。
作ったキャラクターを、アプリに読み込んで動きをつけていきます。はめこみ型の簡単なプログラムなので、中1生でもすぐ使えるようになります。
プログラミングによって、ゲームの展開が変わってきます。教員のアドバイスを受けながら、 どうすれば面白く遊べるのかを、試行錯誤しつつ考えていきます。
2名の生徒が作ったゲームを披露。みんなで友達の作ったゲームを評価します。「どうやったら楽しさが伝わるか」をみんなで考えます。
ココも注目!
先生インタビュー
教員をしながら博士号を取得
最先端研究を理科の授業につなげる
中学の理科を担当する二宮一史先生も、先端的な研究に携わってきた研究者の1人です。二宮先生は同校の出身で、卒業後は立教大学・大学院で学び、同校で理科教員として勤務しながら、立教大学先端科学計測研究センターの研究員を務め、物理学の博士号を取得しました。
「本校で自分らしく中高時代を過ごせたことが、その後の研究を進めるうえで大きく影響していると思います。在学中、やりたいことを尊重してもらえる環境にあったことが、学び続ける力になりました」
と、二宮先生は話します。
(この記事は『私立中高進学通信2021年1月号』に掲載しました。)
実践学園中学校
〒164-0011 東京都中野区中央2-34-2
TEL:03-3371-5268
進学通信掲載情報
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