コロナ禍以降、初めて午前・午後を通じての開催となった今回の体育祭。
“For Others,With Others ─他者のために、他者とともに─”という学院のモットーに基づき、「他者とともに生き他者に仕えるリーダー」を育む教育を実践する六甲学院。知性とともに、自分を律する厳しさと、他者を常に配慮する優しさを持った人間性を育むこと、そして“他者”を身近な家族や友人から世界の人々へと広げていくことを、目標としています。
この六甲教育において大きな役割を担うのが、80年以上の伝統のなかで育まれてきた「互いに認め合い、切磋琢磨する先輩・後輩・同輩の人間関係」。そうした関係性を築く場の一つであり、その中に身を置くことで芽生え息づく六甲精神“For Others,With Others”の実践の機会となるのが、6月に行われる『体育祭』です。
82回目となる2023年度の体育祭のテーマは「燎(かがりび)」。「燎」とは、夜間の警備や照明のために焚く火のことです。体育祭委員長の高3・Mさんは、「真っ暗な夜のなかで周りを照らすこの火こそ、六甲精神ではないかと考えています。何事にも情熱を持って取り組み、自分だけではなく周りの世界をも明るく照らすところに、この精神の真髄が現れるのだと思います」と、テーマに込めた熱い思いを語ります。
体育祭は、生徒主体で創り上げます。その中心を担う、体育祭委員長をはじめとする〝三役″が準備をスタートさせるのは、なんと半年も前から。体育祭の目玉である「総行進」の図面を考案・作成する企画パート、「総行進」の指導を行う演技パート、「総行進」で全生徒を率いる先頭パート、各競技を円滑に進行させる競技パート、庶務を担う総務パート、セキュリティの要となる警備パート、情報を発信する広報パート、体調不良者への対応などを行う救護パートで編制されます。三役と各パートによる決起集会で委員長Mさんが発した掛け声は、「We are 燎!」。公式SNSサイトではそのようすや「総行進」の練習風景などが連日アップされ、生徒たちの熱量の高さが手に取るように伝わってきました。
本番は、音楽部の力強い演奏と精悍な行進で幕開け。6学年が紅白に分かれて勝負を繰り広げます。どの競技でも、一体となり前のめりで、一喜一憂しながら声援を送る姿が印象的でした。
●応援・音楽部
まさに“出ずっぱり”だった応援団と音楽部。グラウンドの雰囲気と、競技の参加者、応援する生徒・観客の気分を盛り上げた。
最大の見せ場は、全校生徒約1000名による「総行進」です。3000名以上の来校者が見守るなか、ゆっくりと緻密に、流れるように隊形を変化させると、グラウンドには「コロッセオ」「大谷翔平」「自由の女神」「燎」などが浮かび上がります。企画パートが作成したAR(現実世界にCGなどのバーチャルな視覚情報を加えて現実を拡張する技術)コンテンツによって、今年は観客がより楽しめる内容へと進化。無事にやり遂げた後、グラウンドには達成感に満ちた笑顔があふれ、互いを称え合う歓声が響きわたりました。
●総行進
史上最高難易度となったものの、練習初日にOBの教育実習生から、「列が綺麗!」とほめられたという総行進。先頭パートから伝授された「行進の極意」を皆で胸に刻み、美しい6列交差を追求し、移動パターンの時間短縮も徹底。台風などの影響で練習がわずか8日間だったことを感じさせない完成度の高さに、大きな拍手が鳴り響いた。「責任ある立場で大変でしたが、周りの人たちと協力することで、多くの問題を“皆で乗り越えたい”と思い頑張ってきました」(体育祭副委員長・Sさん)
この体育祭に向けて、全校生徒を代表して社会奉仕委員長が、次のような祈りを捧げていました。「学年、クラス、さまざまな立場を超えた人々と協力し、大きな目標に向かう喜びに気づくことができますように」。「個々の小さな違いを超えて、お互いを理解し、尊重しあうことができますように」。そして、「私たちが、全ての人の幸福のために歩みを続けることができますように」。この日、二つを体現した生徒たちなら、きっと三つ目も実現できる。─そんな確信と温かな余韻に包まれた、心に残る1日となりました。
●騎馬戦「一騎打ち」
観客が思わず身を乗り出してしまうほどに白熱したのが、中学生による独自の競技「伯母野山の合戦」と、全学年による最後の競技「騎馬戦」。「騎馬戦」の最後に行われた伝統の”一騎打ち”は、全校生徒と観客の視線を釘付けに!