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進学通信

2021年9月

この記事は1年以上前の記事です。

私学の英語最前線
ネイティブ教員が担任を受け持つなど
英語との接点を多彩に

ランディ・ライマー先生

公開日2021/10/31

 神戸龍谷が、高校に英語コース(現在は特進グローバル文系コースなどに発展)を開設したのは1983年。現在は多くの学校が英語系のコースを新設する動きが活発になっていますが、当時は社会のグローバル化がこれほどまでに進んでいなかった時代です。兵庫県の高校では初となる出来事であり、それほどまでに、先見性を持って英語教育に取り組んできたのです。そんな同校の英語教育は歴史を重ねてさらに進化中で、現在もさまざまな実践を行っています。
 では、実際どのような学びでそれを形にしているのでしょうか。ネイティブ教員のランディ・ライマー先生は「本校の英語教育の特徴は、生徒が英語を〝使う〟ことを大事にしている点です」と言います。単なる受験のための英語や、教科学習としてだけではなく、国際的な視野や価値観を育みながら実践的な英語力を育むため、学校生活において日常的に英語に触れ、使う機会を増やしているのです。
 ライマー先生をはじめとする常勤のネイティブ教員は、中学3名・高校3名の計6名で、生徒と接する機会が多く設けられています。特筆すべきは彼らが担任まで受け持っていること(中学『英進グローバルコース』が対象)。日本人教員とペアを組む複数担任制を敷き、朝礼や終礼はもちろん、三者面談までもネイティブ教員が担当しています。

習熟度別での英語の授業
オールイングリッシュや
チームティーチングも

 授業にもその手厚さは活かされており、習熟度に応じて少人数制で実施しています。主に帰国生などを含むアドバンスグループと、一般のグループに分かれて学びます。
 アドバンスグループの授業はネイティブ教員が受け持ち、オールイングリッシュでスピーチ・プレゼン・作文など、アウトプットの場が多いことが強み。英語を第一言語として“英語で”学ぶ環境を重視しており、ライマー先生も「できる限り、英語圏の学校で学んでいるのと同じ環境をつくりたい」と言います。「光合成を英語で説明する」「Googleドキュメントを使ってテキストを共同編集する」などの、教科横断的な英語学習が魅力です。
 また、ライマー先生は日本の教員免許を取得しているため、単独で授業を受け持つこともありますが、ネイティブと日本人教員のチームティーチング制で授業を進めることもあります。ライマー先生とペアを組む丸尾光歩先生は、「毎週打ち合わせの時間を取り、綿密に授業の計画を立て、反省と改善を繰り返しています」と言います。生徒たちの理解度を測りながらフォローに入ったり、必要に応じて日本語でサポートをしたりするなど、臨機応変に授業を展開中です。なおアドバンスグループでは、もともと英語力が卓越している一部の生徒だけを対象にしているわけではなく、入学後に英語力を伸ばしてから入ってくる生徒も少なくありません。
 一方、一般のグループは主に丸尾先生ら日本人教員が受け持ちますが、こちらも内容は充実しており、週5時間の英語クラウンの授業(コミュニケーション)を設定し、文法なども含めると実に最大週8時間という、公立の約2倍にも及ぶ授業時間を設けています。アドバンスチームに負けず劣らず、英語で自己紹介をしたり、好きなアニメキャラクターを解説したり、AI時代を背景に理想のロボットを考えてプレゼンしたりするなど、アウトプットの機会は非常に豊富で、少なくとも1~2カ月に1度は、英語でスピーチする機会を設けているのです。授業で身につけた英語力を活かして臨む校内の英語スピーチコンテストは、同校の名物行事となっています。
 また同校では、生徒一人1台のタブレット環境が整っており、デジタル教科書の読み上げ機能などを使って常に発音の聴き取りをしています。
 高校では、社会問題を英語で学ぶ『グローバルイシュー』や、英語によるディベートも実施。「フェアトレード」「携帯電話の功罪」などについて、英語で意見交換をしています。

多様なラインナップの
留学制度も魅力

 英語を“使う”ことを重視しているだけあり、留学制度や海外研修制度も豊富で、留学は1年間(長期)、3~6カ月(中期)、1カ月(短期)が用意されています。行き先はアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・イギリスなどの英語圏が中心です。
 中・長期留学に参加している間は、単位互換制度を利用して、現地で受けてきた授業をそのまま同校の単位として認定してもらえます。現在の日本における長期留学制度は、この単位互換ができないケースも多く、帰国後の留年を覚悟しなければならないなど、リスクも大きいものでした。そのため、夏休みなどを利用しての短期留学にとどまりがちなことが課題でしたが、同校のような制度なら、安心して留学することができます。
 中・長期の留学に参加するには、所属コースや英語の成績、英語力を測る検定で合格点に達しているかなどの条件があります。それもまた、生徒たちの英語学習へのモチベーション向上につながっているようです。
 一方で、高校の特進グローバル文系コースのニュージーランドや、一貫コースのカナダへの短期留学では、ホームステイをしながら、現地の学校で学ぶことができます。特別な事情がない限りは、ほぼ全員が何らかの形で留学できるようになっています。

世界に資する意思を持つ
真のグローバル人材
育成を目指して

 こうした取り組みの根底には、同校が“グローバル・シチズンシップの育成”を掲げていることにあります。単に海外で働くとか、英語を使って仕事をするということではなく、一人の“地球市民”であるという世界観と視野を持って、人類が抱えるグローバルイシューを解決できる力や、解決しようとする意志を育てることを目的としているのです。
 そのため、日々の授業や留学制度以外にも、さまざまな形でそれが実現できる学びの環境が整っています。文部科学省が展開する留学制度『トビタテ!留学JAPAN』の活用や、『JVC(ボランティア部)』の活動を通して、“真のグローバル人材”としての志を育てているのです。
 “グローバル人材”という言葉が一般化して久しいですが、「英語が話せる=グローバル人材」という意味ではないはず。世界に資する大志と当事者意識を抱ける人こそ、グローバル人材ではないでしょうか。英語はあくまでその手段。同校はその種をまいているのです。

POINTバルト三国のひとつ
ラトビアの学校との交流

 同校の地元・神戸市と姉妹都市であるラトビア共和国の首都にある『リガ文化学校』との交流で、相互訪問などを行っています。同国の公用語はラトビア語ですが、生徒たちは、お互いに一生けんめい学んだ外国語(英語)を駆使して、さまざまな交流をしています。このような非英語圏の学校との交流はめずらしいケース。生徒の視野を大きく広げてくれるはずです。

POINTネパールを支援する
ボランティア部『JVC』

 ボランティア活動を行う部活動『JVC』では、障がい者との交流や地域イベントへの参加のほか、ネパールの支援に力を入れています。街頭募金活動などを通じて、ネパール大地震(2015年)からの復興や、ストリートチルドレンの保護などを手伝っており、過去には『トビタテ! 留学JAPAN』の選考を勝ち抜き、現地で活動を行った生徒も。語学力だけでなく、世界が抱える問題解決に挑む心が着実に育まれています。

先生からのメッセージ英語でコミュニケーションする機会が豊富! 【ランディ・ライマー先生】

 ネイティブ教員が担任を持つなど、とにかくネイティブ教員と生徒の接点が多く、英語を多く使える環境が本校の一番の魅力でしょう。お昼ご飯を一緒に食べたり、英語でゲームをしたり、イベントを楽しんだりします。特に人気は『ハロウィンイベント』(写真)です。これは中3生が後輩をおもてなしする本校の伝統で、コスチュームをまとい盛り上がります。留学前に全員が参加する『サバイバルイングリッシュ』も私たちネイティブ教員が主導します。「留学でカナダを訪れたとき」などのさまざまなシチュエーションを設定し、英語圏での生活を疑似体験してもらいます。多彩な英語学習環境がある本校で、一緒に学びましょう!