「総合表現」「総合探究」で、楽しみながら大きく成長できたと語る
高1・NHさんと中3・NTくん
2020年度より中学の『総合的な学習の時間』を大きく再編した近畿大学附属。約10年にわたって蓄積してきた独自のキャリアデザイン教育を体系化し、『総合表現』『総合探究』の両輪でさらに進化・深化させました。この学びで大きく成長した中3生と高1生の生の声をお届けします!
『総合表現』では何をするのですか?
NHさんが「MY STORY」で作成した自己紹介記事。自分の過去を振り返り、音楽が自分を作り上げたのだと気付いた。レイアウトに合わせて文字数を調整するのは苦労したが、限られた条件下で情報を伝えるスキル(表現力)が身についたと言う。
NTくん
中1の「文章トレーニング」で、文章を使った自己表現やコミュニケーションを学んでから、それをステップに中2で近大附属中のことを記事にする「新聞作成」に、中3で自分史を作る「MY STORY」に取り組みます。
「新聞作成」では、新聞記者の方の指導を受けながら、校長先生や食堂のスタッフの方など校内のいろいろな人に取材をして、チームで記事にしていくんです。しかも「産経新聞文化部」の所属として、名刺まで作ります。誌面作成は、専用のアプリを使って本物の新聞のように誌面を作ることができる、かなり本格的なものです。
NHさん
「MY STORY」では、これまでの人生をふり返り、自己紹介記事を作ります。このときも同じくアプリを使用して作成します。
難しいけれど面白いのは、人生のターニングポイントを探すこと。「これがあったから、いまの自分がある!」という物語の核を見つけなければならないのですが、私の場合はそれが音楽で、幼いころに始めたピアノだったとわかりました。
それらを通じて「成長した!」と思うことは?
NTくん
文章表現に完璧な正解はないので、「この書き方でいいのかな」と不安になることもありました。でもそのおかげで、普段から多様な表現のパターンを考えるクセがつきました。「筆者の考えを述べよ」という国語のテスト問題でも、深く考えて答えることができるようになったと思います。
NHさん
高校卒業時に、「これまでの自分とこれからの自分」というテーマで、1万字もの論文を書くことになっています。私の所属する英数コース『プログレス』(近畿大学進学を目指すコース)では、この論文が志望理由書も兼ねているので、「その学部で、“何を・なぜ”学びたいのか」を過去と紐づけて整理しなければいけませんが、「MY STORY」で自分と向き合った経験がきっと役立つと思います。そして、昔のことを親に聞いたりするうちに、自分がどれだけたくさんの人にお世話になったかを知りました。また、友だちがどんな人生を歩んで来たかという新たな発見があったのもよかったです。
『総合探究』とはどんな内容ですか?
NTくん
中1で「自校教育」「SDGs探究」、中2で「ROLE MODEL(人物探究)」、中3で「企業探究」というカリキュラムになっています。「ROLE MODEL」は、偉人の人生を探究する内容で、何がその人のターニングポイントになったのかを考察してまとめていくのですが、実はここでの経験が「MY STORY」へのステップにもなっています。
面白かったのは、自分が「ここがターニングポイントだ!」と思っても、友だちはまた違う意見を持っていること。
NHさん
それ、あるある! いろいろな人の意見を聞いていると、どんな小さなことでも何がターニングポイントになるかわからないですし、私も一つひとつの経験をもっと大事にしなければと思いました。
中3で行う『企業探究』について教えてください
NTくん
『クエストエデュケーション』という外部の教育プログラムを使って、実在する企業に疑似インターンとして参加し、企業が抱える問題解決にチームで取り組みます。探究したアイデアをプレゼンテーションして、企業から認められた優秀チームは全国大会にも出場することができます。
NHさん
まずインターンの前に、各企業の業務内容はもちろん、創業年や経営理念まで徹底的に調べてチームでプレゼンテーションをします。それを聞いて、生徒はどの企業にインターンしたいかを決めます。しかも必ずしも希望する企業にインターンできるとは限らなくて、エントリーシートを出して自己アピールをする必要があります。就活生と人事担当者を同時に経験している感覚でした。
そこで難しかったことや工夫したこと、学んだことは?
NTくん
問題の解決策を発表するとき、想定外の質問がくることもありました。もっと情報を網羅しておくべきだったなと思います。また、集めた膨大な情報をどのようにプレゼン資料としてまとめるかも苦労しました。情報を盛り込みつつ、わかりやすく見栄えも意識するのはとても難しい!
NHさん
私たちのチームは、解決策のアイデアはたくさん出たのですが、意見が本当にバラバラで(笑)。なんとか意見をまとめた後にそこからどう掘り下げて調べるのかも難しかったですね。メンバー内で役割分担することで、なんとか乗り切りました!
NTくん
僕は話すことが好きなので、大勢の人の前でプレゼンするのは気持ちよかったです(笑)。ただ、そのくせ口下手だから、「どう伝えるか」は強く意識するようになりました。新聞作成のときに「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識して重要度の高いことから伝える」と学びましたが、プレゼンテーションでもそのことに気をつけながら取り組んでいます。
NHさん
「伝え方」を考えられるようになったのは私も一緒です。ただ私は、人前に立つのが苦手なタイプで……。でも、集めた情報を整理したり、わかりやすく表現したりすることは割と好き。人にはみんな得意・不得意があるけど、誰もが同じことをできなくていいし、それぞれが得意を活かせばいいんだと気付きました!
実務的なスキルはもちろん、周りと協働して物事に取り組む姿勢も身に付けた二人。それは今後、社会で必ず役に立つ「生きる力」となるでしょう。
これまで取り組んできた『キャリアデザイン教育』を『総合表現』『総合探究』に再編して体系化。「ROLE MODEL」で学んだことが「MY STORY」に、「新聞作成」で得たスキルが「企業探究」に生きるなど、当初は想定していなかった横断的学習効果も生まれている。
「僕たちのチームが去年作った新聞がこれです!」とTくん。『近大附属中新聞」』は、校内のさまざまなトピックを、記者(生徒)たちが独自の視点で取材し、紹介していく。完成した新聞は学校の広報ツールとしても用いられ、受験生にも配布される。産経新聞社の協力で、同社の肩書きがついた名刺まで作り、取材先では名刺交換も。
本校が『キャリアデザイン教育』を始めたのが2011年。当時は偏差値至上主義のような時代で、私自身も「こんなことをやっていては偏差値が上がらない」と危機感を抱いていたほどでした。しかし、いざやってみると、生徒たちが目に見えて変化するようになり「これは面白いぞ」と。そこで試行錯誤を重ねたものが、現在の『総合表現』『総合探究』です。これらの授業では私たち教員が「指示」することなどごくわずか。いま思えばこれまでの教育は、大人が考える理想的な成長を、子どもたちに押し付けていただけだったのかもしれません。子どもたちが自らの頭で考え、学び、輝ける場にしていきたいです。