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私立中高進学通信

2026年神奈川版

実践報告 私学の授業

鶴見大学附属中学校

多角的視点と深い思考力を育てる
教科横断型授業『シルクプロジェクト』

教科の枠を超えた学びが、社会で活躍する力を育む

探究シーン1
繭から絹糸を得るプロセスの一端をデモンストレーション。
繭を重曹が入った熱湯に入れて加熱すると、表面がほぐれて糸状に。
「溶けたチーズみたい」「長い!」と生徒たちから驚きの声が上がりました。

 複数教科を組み合わせた教科横断型授業を積極的に推進している同校。今回は、理科×社会科×家庭科による3教科横断プロジェクトを取材しました。

『シルク』を軸に広がる
教科を超えた学び
理科・入試広報/山家剛仁先生

 禅の精神を基盤に、自ら考え行動する力と豊かな人間性を育んでいる鶴見大学附属。教科ごとに専用の教室『教科エリア』が設けられており、学ぶ内容に即した最適な環境で授業が受けられます。こうした学習環境のもと、生徒の主体性や思考力、多角的な視点を育む教育を展開しています。

 きめ細かな指導と探究的な学びに注力する同校では、複数の教科を関連づけながら学ぶ教科横断型授業を推進しています。近年実践しているのは、理科・社会科・家庭科の3教科が連携する授業『シルクプロジェクト』です。5月~7月の約3カ月間にわたり、理科では、蚕の成長や生態を観察しながら生物分野の基礎や絹糸ができる仕組みを学習。社会科では、絹が大陸から日本へ伝わり、産業や文化として発展してきた歴史を把握。家庭科では、絹と綿などの繊維の違いや特徴について理解を深めています。

「教科横断的な学びを通して、蚕を中心に衣服や歴史、日本文化がつながっていることを、生徒に実感してほしいと考えています。教科内容のつながりに気づくことで視野が広がり、学びへの理解も深まります。
 本校がめざすのは、大学入試につながる確かな学力とともに、多面的・俯瞰的に考える力を育むことです。その力は、将来社会で活躍するための土台にもなるのです」(理科・入試広報/山家剛仁先生)

教科横断型授業から派生した
有志による蚕の飼育

 シルクプロジェクトで活用する蚕は、毎年、有志の生徒たちが飼育しています。5月頃に横浜のシルク博物館から蚕の卵を譲り受け、中学生の有志生徒が昼休みや放課後に世話や観察を行いながら成長を見守ります。やがて繭になると、そこから糸を取り出し、授業で活用します。2026年度は30名の生徒が参加し、4~5名ずつ交代で飼育を担当しています。

 取材に訪れた6月上旬、有志の生徒たちは幼虫になった蚕を観察し、スケッチ画に取り組んでいました。

「独特のにおいがする!」「ふんがいっぱい」など、各自が感想を口にしながら、ルーペや顕微鏡を使って拡大し、細部の観察を試みます。細部を観察して「蚕の顔ってけっこう怖い」「桑の葉しか食べていないのに何でこんなに白いのかな」などさまざまな発見があり、新たな興味につながった様子です。

 昨年度にシルクプロジェクトを経験した中3生と山家先生による、繭から絹糸を取り出す過程のデモンストレーションも行われました。重曹が入った熱湯に繭を入れて、加熱しながらかき混ぜると、次第に繭の表面がほぐれ、糸状になってきます。

「繭の表面のタンパク質が重曹のアルカリと熱で溶けて、中から光沢のある糸が出てくるのです。1つの繭から約1.5㎞の糸を取ることができます」との山家先生の説明に、「こんなに長いんだ!」「蚕からこんな糸が取れるなんて不思議」と、生徒からさまざまな感想が聞こえてきました。

絹糸づくりの先にある
命と向き合う学び

 2026年度の『シルクプロジェクト』で使用したのは、昨年の同プロジェクトで育てた蚕の繭を、冷凍保存しておいたものです。繭の中には蚕の蛹が入っていますが、冷凍保存の時点ですでに凍死しています。

「繭の中で蚕が成虫になると、繭を溶かして外へ出てくるため、糸が途中で切れてしまいます。美しいシルクを得るためには、1本の長い糸を保っておく必要があるのです。
 これから生徒たちは、現在育てている蚕から実際に絹糸を取り出す工程にも挑戦します。蚕の命と向き合い、葛藤を覚える場面もあるでしょう。そこで命の尊さや、それをいただくことの意味も伝えていきたいと思っています」

 シルクプロジェクトが始動して3年目になり、「飼育に参加する有志生徒の人数も、年々増えています」と山家先生。興味の幅が広がった生徒もいれば、指導にあたる上級生との交流を通して、異学年とのチームワークやコミュニケーションを学んだ生徒もいるといいます。

「夏休みには、小学生向けの絹糸の生成体験教室を開催します。そこでは生徒が先生役となって小学生に教えます。
 このプロジェクトを軸にさまざまな機会を用意し、生徒により多くの経験を積んでほしいと考えています」

探究シーン2
飼育箱では4~5cmほどに成長した蚕が活発に動いています。蚕をスケッチするために、iPadや顕微鏡、ルーペを使って細部を観察する生徒たち。
探究シーン3
蚕の様子を顕微鏡で観察する生徒たち。なかには、顕微鏡のレンズにiPadをかざして撮影に挑戦する生徒も。「ずっと動いているから写真が撮れない!」「ピントが合わない」と悪戦苦闘しつつ、蚕の細部をもっと観察できるように工夫を凝らします。
探究シーン4
蚕は時期が来ると1匹ずつ小部屋に入り、糸を吐き出し繭を作ります。生徒たちはトイレットペーパーの芯などを使って蚕用の小部屋を作成。
探究シーン5
蚕の餌である桑の葉は、自然豊かな地の利を活かし、近隣の森林へ取りに行きます。
生徒に聞きました
命の尊さを実感できるプロジェクト
Kさん(中3)

 小学生の時に蚕を育てる授業を経験し、この学校でも同じ活動ができると知ってうれしくなり、中1から毎年参加しています。蚕は成虫になっても体が重くて飛ぶことができません。その姿に切なさを感じると同時に、私たちはその命から絹糸をいただいている感謝も実感します。蚕を育てるなかで、命の尊さについて考えるようになりました。2年間このプロジェクトに参加し、絹糸を染めるところまで経験したので、次はその絹糸を使って何か作ってみたいです。


日々の成長を観察するのが楽しい!
Mさん(中1)

 蚕がどんな昆虫か知りたくて、好奇心からお世話をする有志メンバーに参加しました。毎日サイズを測ったり写真を撮ったりして成長の様子を記録しています。1mmにも満たない卵が4~5cmの幼虫へと成長する姿を間近で見られて、とても興味深いです。

 成長のスピードが速く、日に日に大きくなっていく様子がわかるので観察が楽しいです。ふんや餌のにおいが強くて苦労しましたが、生き物を育てる大変さや責任を実感できたので、今後はほかの動物の飼育にも挑戦してみたいです。


蚕の成長を通して自然のすごさを実感
Yさん(中1)

 もともと昆虫は苦手でしたが、蚕がどのように育つのか興味があって参加しました。観察や世話を続けるうちに、少しずつ可愛いと思えるようになりました。卵だった蚕が1週間ほどで幼虫の姿になった時は、とても感慨深かったです。

 シルクプロジェクトでは、卵から幼虫、繭、成虫へと成長していく過程を全て観察できることが、とても興味深いです。日々変化していく様子を見るのが楽しみである一方、生き物を育てる大変さも実感しています。その経験を通して、生き物が命をつないでいくことの尊さや、自然の力の偉大さを感じています。

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