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私立中高進学通信

2026年9月号

校長先生が語る6年間のビジョン

横浜女学院中学校

家族以外の大人が
無償の愛を注いでくれる場所
そんな学校でありたいと思っています

壁をなくして、いつでもオープンにしている職員室。
勉強や進路の相談はもちろん、特に目的がなくても気軽に立ち寄る生徒も多いそうです。

愛されている実感は
挑戦の原動力
鈴木雅子 校長先生

 私が国語教員として本校に着任した頃、女子教育で重視されていたのは「女性らしいお行儀の良さ」でした。当時は高校卒業後、進学せずに就職する生徒も多く、社会でもそうした女性像を求めていたのでしょう。時代は変わり、今は人材の要件で性別を問われる時代ではなくなりました。性別による役割意識にとらわれることなく、誰もが自分らしい人生をデザインすることができます。

 しかし、解き放たれたはずの女性自身がガラスの天井を作り、自らを閉じ込めているように感じる場面も少なくありません。女性たちのなかにある潜在的な不安や、固定観念、役割意識などがキャリアに歯止めをかけているとしたら、実にもったいないことではないでしょうか。

 そこで私たちは、自らの個性に誇りをもち、才能を信じて挑戦できる女性の育成に力を注いでいます。大切なのは、6年間を通して「愛されている」「認められている」と実感してもらうこと。「自分には価値がある」と思える自己肯定感と自己受容力こそ、現代を生きる女性の礎になると思うのです。

 学校を「家族以外の大人が無償の愛を注いでくれる場所」と感じてもらえるように、本校では職員室に物理的な壁を設けておらず、いつもオープンにしています。安らぎがほしい時には自然と足が向く、そんな存在でありたいのです。

五感を刺激して養う
問題解決力や思考力
VISION-6年間のビジョン
  1. 「愛されている」実感をもち、
    果敢に挑戦する心を育む
  2. 実のある体験を通して、
    深い自己理解と他者理解を養う
  3. 社会の課題に目を向け、
    自ら考え、行動する力を培う

 人間としての土台を育てるため、五感を伴う行動で自己理解や他者理解を促進する「実のある体験」も重視しています。

 一つは、生徒が使う椅子と机の木材を、高1生が宮城県大崎市の鳴子地区にある森へ切り出しに行く「鳴子スタディツアー」です。環境への負荷が少ない自伐型林業で森林再生に取り組む地域の活動を実地で体験します。そこから学ぶだけでなく、学問的な裏付けをしている東北大学の先生方からレクチャーを受ける機会も設け、発展的な学びにつなげています。

 もう一つは、「対馬スタディツアー」です。少子化や耕作放棄地、大量の漂着ゴミといった問題に直接触れる稀有な機会を通して、社会の課題を自分の事として捉え、行動できる力を育てています。

 これら2つのフィールドワークは、生徒たちの表現力や想像力の育成にもつながっています。伐採した木から水が吹き出す様子を見た生徒が、「この木は樹木としての命は終えたけれど、木材としての命がこれから始まるんだ」と表現した時は、心を打たれました。教科書中心の一斉教育ではなく、語彙を増やすためのリーディングワークショップを推進してきた国語教員としても、彼女たちがイキイキと語る言葉の豊かさにうれしさを感じています。

鳴子スタディーツアーにて伐採した木材を使用して作られた名札。
木の温もりが感じられます。

多様な領域の専門家に
話を聞く「ドチャレ」

 フィールドワークは希望者のみのため、参加できない生徒も少なくありません。そこで、全ての生徒に体験から学ぶ機会を提供するため、探究活動の一環として「土曜チャレンジ(ドチャレ)」を実施しています。ドチャレの目標は、各界のエキスパートから自分が興味をもつ専門分野の話を聞き、「なりたい自分」を見つけること。30種類ほどの講座の中から選択可能で、中1から高2まで同じ教室で講義を受けます。

 これまでに、JRの職員の方、地元・横浜のラジオ局であるマリンFMのスタッフ、新聞記者など、実に多様な分野の専門家の方が、世の中の課題についてお話しくださり、自ら問いを立てていくことにつなげてくださいました。講師のなかには保護者や、有名ホテルの料理人になった卒業生がいることも、本校ならではかもしれません。「横浜女学院の役に立ちたい」と純粋に思ってくださる方が多く、呼びかけに応えて積極的にご参加くださることは感謝の念に堪えません。

 ちなみに卒業生は、中学生は19時まで、高校生は20時まで開放している自習室で、大学生チューターとしても活躍してくれています。また、18時頃から開始されるナイト講習をサポートしてくれることも。ナイト講習とは、部活動の後でも参加できる希望者向けの学習サポートで、英検対策や因数分解講座、長文読解などの細分化されたテーマから、必要なものを選んで受講できる点が魅力です。

今までの知見を活かし
サイエンスクラス新設

 これまで実施してきたフィールドワークや、東北大学青葉山新キャンパスにある次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」の見学、中1・中2の2年間で100以上の理科実験を行う「#101の実験」など理系教育の蓄積を経て、近年では理系を志す生徒が増えてきています。これを受け、2027年度から「サイエンスクラス」を新設することになりました。今後は、理系・文系の両面から、与えられた賜物を自ら用いて、世の中のために活用できる女性を一人でも多く育てていきたいと思っています。

鳴子スタディツアー

「鳴子スタディツアー」では、自ら木を伐採するだけでなく、その木が加工される様子も見学。ツアーの最終日には、東北大学に設置された3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu(ナノテラス)」を訪れます。このスタディツアーをきっかけとして、ナノテラスで実験を行い、東北大学の先生の指導を受け、学会発表に挑戦する生徒もいます。

PROFILE

 1947年、金子正先生により創立。太平洋戦争の戦禍からの復興を目的として、前身となる横浜千歳女子商業学校と神奈川女子商業学校の2校を統合し、新たな建学の精神を掲げるキリスト教系女子校として誕生した。「愛と誠」を校訓に、深い自己理解と他者理解のもとで自己受容力を伸ばす教育に取り組み、他者や社会に貢献できる女性の育成をめざす。国際教育や社会課題への関心が高く、生徒主体の活動も盛ん。2027度からは、フィールドワークや理科実験の知見を活かした、「サイエンスクラス」のスタートが予定されている。

(この記事は『私立中高進学通信2026年9月号』に掲載しました。)

横浜女学院中学校  

〒231-8661 神奈川県横浜市中区山手町203
TEL:045-641-3284

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