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私立中高進学通信

2026年9月号

校長先生が語る6年間のビジョン

獨協埼玉中学校

「全人格的な人間形成」の伝統を礎に
一人ひとりの未来を育む

体育祭は、生徒たちが長い時間をかけて準備・運営を担う伝統行事です。
運動が得意な生徒だけでなく、誰もが活躍できる体育祭をめざして、
生徒たちが主体的に企画・運営しています。
毎年積み重ねてきた伝統と、「もっと良いものにしたい」という思いが行事を支えています。

受け継いだ価値を
未来へつなぐ
成瀬博文 校長先生

 校長就任にあたり、身の引き締まる思いです。同時に、学校の未来に向けた新たな一歩でもあると感じています。新校長として大きく方向性を変えるのではなく、これまで大切に受け継がれてきた教育の理念や伝統を礎としながら、着実に歩みを進めていきたいと思います。

 教育の世界では、時代ごとに新しいキーワードが生まれます。かつて重視されたものが形を変え、近年では探究や非認知能力、デジタルの活用などが注目されています。もちろん、そうした変化に目を向け、柔軟に対応していくことは重要です。しかし、目の前の変化だけを追い続けて学校の方向性そのものを変えてしまえば、教育の軸が見えにくくなってしまいます。

 私はこれまで英語教育、教務、進路指導、学校運営とさまざまな立場から教育に携わってきました。そのなかで感じてきたのは、生徒は教え込まれて育つのではなく、自ら考え、選択し、経験するなかで成長していくということです。

 本校が大切にしてきたのは、「学問を通じて人を育てる」という考え方です。その根底にある教育観は、時代が変わっても色あせるものではありません。

 本校がコース制を設けず、多様な学びや学校生活を重視してきたこと、語学教育を大切にしてきたことも、その背景には生徒の自立を促す意図があります。単に知識を増やすだけでなく、広い世界と出会い、自分の考えをもち、人生を主体的に切り拓いていく力を育てたい。その教育を、本気で積み重ねてきた学校だと感じています。

 これからも、本校の教育の核を守りながら、必要な変化であれば恐れずに取り入れていく。そして、生徒一人ひとりが安心して挑戦し、自分らしい成長を実感できる学校であり続けたいと考えています。

人を成長させる
「楽しい」から始まる学び
VISION-6年間のビジョン
  1. 幅広い教養で、自らの可能性を
    「開拓」する基礎学力の養成
  2. 多様な経験を通じて、ゆるぎない自己を
    「創造」する人間性の育成
  3. 「信愛」の精神で、他者を敬い
    世界とつながる主体的自立の育成

 私が教員を志した原点には、自分自身の学校での経験があります。私にとって学校は、勉強だけでなく、授業や部活動、行事、人との関わりを通して毎日が楽しいと感じられる場所でした。その経験から、子どもたちにも学校を楽しい場所に感じてもらおうという思いで教員になり、安心して過ごせる居場所づくりを大切にしてきました。

 一方で、「自分は英語教員として、本当に生徒の学びに向き合えているだろうか」と考えるようにもなりました。そこから改めて教科教育を学び直し、授業研究や研修、大学院での学びにも取り組みました。

 しかし学べば学ぶほど、見えてきたのは「授業だけを磨けば教育が完成するわけではない」ということでした。むしろ、生徒が自ら学ぼうとする気持ち、もっと知りたい、挑戦してみたいという気持ちがなければ、学びは深まっていかない。どれだけ優れた授業を行っても、生徒が自発的に動こうとしなければ、本当の意味での成長にはつながらないということに気づいたのです。

 学校という場の価値は、まさにそこにあると考えています。

 学校では、授業だけではなく、行事や部活動、友人との対話、何気ない日常の時間まで含めて、多様な経験ができます。誰かに刺激を受けたり、自分の役割を見つけたり、思いどおりにいかない経験をしたりするなかで、「やってみたい」「もっと挑戦したい」という気持ちが生まれていく。その自発的な動機こそが、生徒を成長へと動かす原動力になります。

 近年は、デジタル技術によって効率よく知識を得られる時代になりました。しかし、人と人が同じ場を共有し、空気を感じ、偶然の出会いや感情の動きを経験することは、学校だからこそできる学びです。

 教室で誰かの発言に心が動くこと。行事に向けて仲間と何かをつくり上げること。うまくいかず悩みながらも、もう一度挑戦してみること。そうした経験から得られる情報や実感には厚みがあります。

 だから私は、学校を単なる学力形成の場ではなく、生徒が自分の興味や可能性を見つけ、「やってみたい」と思える場所にしていきたいと考えています。そして、その積み重ねが、自ら学び、自ら未来を切り拓いていく力につながっていくと信じています。

自ら考え行動し
自分らしく生きる

 私が生徒たちに願っているのは、特定の進路や肩書きをめざすことではありません。将来、どのような分野に進むとしても、自分で考え、判断し、行動しながら、自分らしい人生を築いていける人になってほしい。その点を大切にしています。

 社会にはさまざまな生き方があります。国際的な舞台で活躍する人もいれば、地域や身近なコミュニティで誰かを支える人もいます。研究やビジネスの最前線に立つ人もいれば、家庭や日常の中で周囲に良い影響を与える人もいるでしょう。

 どの道を選ぶかに優劣はありません。大切なのは、その場所で自分の意思をもち、自分なりの価値を発揮しながら生きていることです。

 誰かに言われたから動くのではなく、自分で考え、自分で選び、その結果に責任をもちながら前に進んでいく。そして周囲から「一緒に学びたい」「一緒に働きたい」「一緒に何かをつくりたい」と思われる存在になってほしいのです。そうした人間的な成長こそ、本校がめざす教育の姿だと考えています。

他大学との学びの接続
未来への懸け橋プログラム

 獨協埼玉では、併設校との連携に加え、さまざまな大学と協働した学びの機会を設けており、生徒たちは中高生の段階から専門的な学問に触れ、興味・関心を深めています。例えば東京理科大学では、教授による科学講座やキャンパス訪問を通して、理系分野の探究を深めます。中央大学では、「刑法」をテーマとした講義を実施し、法や社会制度への理解を広げています。また、筑波大学の若手研究者による生命科学分野の講座や、埼玉医科大学による難病研究を題材とした学びなど、分野横断的なプログラムも展開されています。

PROFILE

 1881年、獨逸学協会が設立。以来、語学教育と人間教育を大切にしながら発展を続け、現在では大学から中高までを擁する総合学園へと成長しています。獨協埼玉高等学校は1980年に開校。さらに2001年には中学校を開設し、中高6年間を見通した教育体制を整えています。同校の特色の一つが、系列校の強みを活かした多彩な学びと進路支援です。獨協大学での学びへ接続する「獨協コース」の設置や、単願推薦・他大学との併願が可能な推薦制度、獨協医科大学への系列校推薦制度など、生徒一人ひとりの進路に応じた選択肢が用意されています。

(この記事は『私立中高進学通信2026年9月号』に掲載しました。)

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