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私立中高進学通信

2026年8月号

生成AI活用事例

芝浦工業大学柏中学校

問いを磨き、学びを深める
生成AI時代に求められるコミュニケーション力

「生成AI時代に学校で学ぶ意味とは?」

「生成AI時代に学校で学ぶ意味とは?」

 Ⅲ期にわたって文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定を受け続けている芝浦工業大学柏。理数・探究教育の先進校が行う、先進的な実践を取材しました。

INTERVIEW

――生成AIの導入をどのように進めてきましたか?

地歴科 徳倉暢 先生地歴科
徳倉暢 先生

徳倉先生
文部科学省のガイドラインや先行研究を探りながら、活用方法を考えてきました。生成AIを授業で本格的に活用し始めたのは2023年秋。当時は高2生を対象に、「地球規模の課題に対する解決案の考案」というテーマで活用を試みました。

まずはアイデア出しや情報収集に使ってみたのですが、当時はハルシネーション(※1)が多く、そのまま活用するのは難しいと感じました。そこで翌年度から見直しを図り、資料集や文献で調べた内容を整理・要約する補助ツールとして利用するようになりました。

一方で、学校が指導する以前から生成AIを利用する生徒も多くなってきたため、きちんとしたリテラシー教育を行うべきだと考えました。現在は生成AIの活用ルールや情報モラルについて学ぶ機会も設けています。

七井先生
生成AIを「アイデアを生み出す存在」ではなく、「作品を磨き上げる添削者」として活用しています。まずは自分で文章を書いてみて、その後にAIが提案する改善案を反映させた文章とを比べてみると、どこが変わったのかがよくわかります。『こういう表現もできるのか』という気づきが新たな学びにつながります。

また、生成AIを活用した俳句づくりでは、AIが思いもよらない言葉の組み合わせを提案してくることがあります。その表現を面白いと感じたり、自分なりにアレンジしたりすることで、人間ならではの感性や創造性について考える機会にもなっています。

情報科・探究科 佐藤健悟 先生情報科・探究科
佐藤健悟 先生

佐藤先生
「SS(Shibaura Science)」(※2)で行っている課題研究活動において、生成AIは生徒たちの思考を深める「学びのパートナー」となっています。例えば先行研究の調査では、従来のWeb検索よりに迅速に類似事例を探したり、難解な論文の概要を的確に要約したりと、大きな力を発揮します。ただ、その力を十分に引き出すには、問いかける側の姿勢が問われます。「要約してください」と漠然と指示するのではなく、「どのような観点で情報を整理し、研究にどう活かしたいのか」という明確な目的意識をもってプロンプトを組み立てるよう指導しています。

――生成AIの活用に必要な力とは?

徳倉先生
以前は図書館で調べていたことがWeb検索になり、今は生成AIへと変化しています。それ自体は問題ないのですが、だからこそ重要になるのが、情報源を確認する習慣です。

出典をたどり、その情報が公的機関の資料なのか、個人の発信しているものなのかを見極めることが大切です。探究学習では、情報そのものだけでなく、その情報源の信頼性を確かめる力も求められます。生成AIを使うこと自体が目的ではなく、情報を吟味し、活用する力を育てることが重要だと考えます。

国語科・探究科 七井亜聡 先生国語科・探究科
七井亜聡 先生

七井先生
生成AIが作った文章を、生徒が本当に理解できているのか、内容を適切だと判断できているのかという視点が重要です。AIの文章をそのまま受け入れるのではなく、読んで理解し、自分で評価する力が求められます。

その土台となるのが語彙力や読解力です。そこが伸びれば文章を正確に理解できるようになり、AIを適切に活用する準備ができたと言えるでしょう。

佐藤先生
生徒たちには「何をAIに聞くべきか」「仲間と議論したほうがよいことは何か」「先生に相談すべきことは何か」を判断し、使い分ける力を求めています。実際のところ、調べればわかることを生徒から質問される機会は減り、「どう考えればよいか」「どの方法を選ぶべきか」といった、より本質的な問いが増えてきたと感じています。

また、AIによってプログラミングやコンテンツ制作へのハードルは大きく下がりましたが、だからといって学校で学ぶ意味が失われるわけではありません。むしろAIを活用するためには、自分が何を実現したいのかを考え、それを相手に伝える力が欠かせません。良いプロンプトは、良いコミュニケーションから生まれます。文脈や背景を整理し、自分の意図を相手に伝える重要性は、AIに対しても人に対しても同じです。実際に活用するなかでそうした力を育てていけることが、本校の教育の大きな強みだと考えます。

※1 生成AIが事実とは異なる情報や存在しない情報を、あたかも真実であるかのように出力してしまう現象。

※2 「SS(Shibaura Science)」…全生徒が課題研究に取り組む同校の学校設定教科。高1で情報科と連携して研究の基盤を形成し、高2で専門研究を深化させ、高3で学びを言語化し未来のキャリアへ繋げる設計が特徴。

REPORT
Shibaura Science

 同校における学びの中心にあるのが、「SS(Shibaura Science)」です。生徒が自ら問いを立て、調査・研究を進める探究活動であり、生成AIの活用もこの学びの中で進められてきました。2024年には生成AI活用ガイドラインやプロンプト例を整備するなど、学校全体で適切な活用に向けたルールづくりにも取り組んでいます。

「課題研究でこれからますます重要になるのはファクトチェックです。出典を明示して回答を提示するAI検索サービス『Perplexity AI(パープレキシティ)』も活用しながら、その情報は事実なのか、意見なのか、どこから発信されたものなのかなど、情報の真偽を確かめる姿勢を育てています」(佐藤先生)

12ページにわたる冊子『課題研究における生成AI利用に対する基本姿勢』。プロンプトの事例や効果的な質問方法など、課題研究で生成AIを活用するためのポイントがまとめられています。
12ページにわたる冊子『課題研究における生成AI利用に対する基本姿勢』。プロンプトの事例や効果的な質問方法など、課題研究で生成AIを活用するためのポイントがまとめられています。

12ページにわたる冊子『課題研究における生成AI利用に対する基本姿勢』。
プロンプトの事例や効果的な質問方法など、
課題研究で生成AIを活用するためのポイントがまとめられています。


国語 中2 現代文

「先生! 小説を書く時間ですよ」の授業では、生徒の文章を整えるために生成AIを活用。

「まずは物語を書くことそのものを楽しんでほしいと考えています。中学生ならではのみずみずしい感性を大切にしたいので、あまり制限を設けず、まずは自分の力で小説や文章を書いてもらいます。そのうえで、生成AIを活用してブラッシュアップしていきます。
 ChatGPTとGeminiでも異なる提案が返ってきますし、文章の改善方法も一つではありません。だからこそ、生徒たちは複数の選択肢を比較しながら、『もっと良い表現があるのでは?』『別の書き方もできるのでは?』と考えるようになります」(七井先生)

修学旅行の行程をGoogle Earth上で可視化するEarthプロジェクトの作成に挑戦。

社会科 高2 地理総合

 修学旅行の行程をGoogle Earth上で可視化するEarthプロジェクトの作成に挑戦。生徒たちは沖縄での4日間の移動ルートや訪問先を地図上に表示するため、生成AIを活用してKMLコード(※3)を作成し、実際にGoogle Earth上で再現しました。

「生成AIを単なる調べ学習の補助としてではなく、アイデアを形にするためのツールとして活用することで、プログラミングやデータ活用への理解を深める実践的な学びにつながっています。生徒たちも『こんなことまでできるのか』と驚いていました」(徳倉先生)

生徒配布資料(一部抜粋)
生徒配布資料(一部抜粋)

生徒配布資料(一部抜粋)

※3 KMLコード(Keyhole Markup Language)…Google EarthやGoogleマップなどの地図上で、緯度・経度などの地理空間情報を表示・共有するためのファイル形式。

進学通信 2026年8月号
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