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私立中高進学通信

2026年8月号

私学の先生だから数学・理科・情報が面白い!

サレジアン国際学園世田谷中学校

実物に触れて育まれる
探究と自走する思考力

中1のフィールドワーク。グラウンドで身近な動植物を観察し、生徒たちに問いを投げかけます。

中1のフィールドワーク。
グラウンドで身近な動植物を観察し、生徒たちに問いを投げかけます。

学生時代の仲間に教わった
探究教育の重要性
理科 谷戸 崇 先生理科 谷戸 崇 先生
学生時代はネズミの形態多様性や生物地理、繁殖戦略を研究。観察と比較で得た視点は、現在の授業にも活かされています。

 多様な価値観に触れながら「考え続ける力」を育むサレジアン国際学園世田谷。その理念を体現するように、谷戸崇先生(理科)の授業には生徒の思考を引き出す工夫が散りばめられています。その根底には、自身の経験に裏打ちされた探究への実感があるそうです。

「学生時代の研究は、ネズミの骨や組織などの形態の多様性、生物地理などがテーマで、動植物研究会にも所属していました。学生時代に出会った仲間は、SSHや理科部で探究を続けてきた人が多く、その差をはっきりと感じました。中高時代にどれだけ取り組んできたかが、その後の進路に影響すると痛感したんです。大学に入ってからでは埋めきれない部分もあり、中高における経験は重要だと思いました」(谷戸先生)

 その実感が、現在の教育観へとつながっています。

「学生時代にネズミの研究の一環で、ベトナムやラオスでフィールドワークを行いました。その際に培った観察と比較の視点は、授業においても生徒に問いを促す土台となっているかもしれません」

授業はきっかけ
探究を続ける力を育てたい

 谷戸先生がめざしているのは、知識を受け取るだけではなく、自ら問いを持ち、自発的に学び続ける生徒の姿です。授業はきっかけであり、その先の行動が重要だと訴えます。

「授業で全てを完結させるつもりはありません。あくまで入り口をつくることが教員の役割だと思っています。そこから先は生徒自身に動いてほしいんです」

 興味の有無にかかわらず、まずは実物に触れ、自分の中にある関心に気づいてもらうことを重視している谷戸先生。そこから問いを広げていく過程が、探究の出発点になると語ります。

「実際に見たり触れたりすると、意外に好きだったと気づくことがあります。その気づきが最初の一歩となり、派生的に問いが生まれていくんです」

 最終的な目標は、教員の手を離れた後も、自ら学び続ける力を身につけてもらうこと。

「理想は、生徒が自分で考えて進めていける状態です。こちらが指示しなくても、自然と探究が続いていく。その力を育てたいと思っています」

こだわり その1
体験から湧き上がる疑問を大切に

 フィールドワークや動物のはく製の観察なども授業に取り入れている谷戸先生。

「身近な動植物を手がかりにしながら、生徒たちに問いを投げかけていきます。単なる説明ではなく、まずは疑問をもってもらうことを意識しています。例えばカタバミを口に含めば酸味が広がりますが、どうしてそうなっているのか。カラスノエンドウは、おしべやめしべが外から見えないけれど、その構造になっているのはなぜなのか。このように考えることが重要なんです。実物を観察することでそのきっかけをつくっています」

 モグラのトンネルをグラウンドで見つけた際に、谷戸先生がトンネル内部にスコープカメラを入れると、生徒たちから歓声が上がりました。

「普段は見えないものを見る体験が、強い興味を生み出すのです。実際に触れたり体験したりすることで、知識が実感として定着します。自分の感覚と結びつくことで、理解が深まっていく。そこを大事にしています」

 教室の授業でも、ムクドリなどの標本、アカネズミの剥製などを用いながら、観察を深めていきます。

「実際に標本を見ることで、フィールドワークで見たものとのつながりも見えてきます。形や構造をじっくり観察することで、新たな疑問も生まれてきます。体験と知識が深く結びついていくんです」

興味あふれるまなざしで、 生徒たちはフィールドワークに取り組んでいました。興味あふれるまなざしで、生徒たちはフィールドワークに取り組んでいました。
モグラのトンネル内部をスコープカメラで観察。山中式土壌硬度計などの器具も使って生徒たちの好奇心を引き出します。モグラのトンネル内部をスコープカメラで観察。山中式土壌硬度計などの器具も使って生徒たちの好奇心を引き出します。
こだわり その2
外部発表で磨く、自ら考え抜く力

 授業で芽生えた関心を、ゼミやコンテストへの挑戦にも発展させている谷戸先生。生徒たちは自らテーマを設定し、仮説を立て、試行錯誤を重ねながら研究として形にしていきます。

「自分でテーマを決める経験はとても大事です。何を知りたいのかを考えるところから始め、内容を深めていく過程で思考力が鍛えられていくのです」

 外部のコンテストでは、大学の研究者や他校の生徒から意見を受ける機会もあります。それにより自分の考えを見直し、新たな課題に気づくことができると語ります。

「学外に出ることで、自分の立ち位置が見えてきます。評価されることで自信にもなりますし、課題も明確になります。その両方が大事なんです」

 結果だけでなく、その過程で得られる経験こそが重要だと語る谷戸先生。試行錯誤を通して、探究を継続する姿勢と課題解決力が育まれていきます。

「うまくいかない経験も大切です。そこからどう改善するかを考えることで力がつきます。そういった積み重ねが次のステージへとつながっていくのです」

つくばScience Edgeや理科研究発表会などに出展された生徒たちの研究ポスター。中1から外部発表に挑戦しています。つくばScience Edgeや理科研究発表会などに出展された生徒たちの研究ポスター。中1から外部発表に挑戦しています。
少年時代から絵が得意だったという谷戸先生の作品。観察する力は現在の授業にも活かされています。少年時代から絵が得意だったという谷戸先生の作品。観察する力は現在の授業にも活かされています。
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