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私立中高進学通信

2026年8月号

生成AI活用事例

玉川学園中学部

思考のプロセス
情報を吟味する探究力を育てる

探究授業が行われる「マルチメディアシアター」。マルチメディアリソースセンター(MMRC)内にあるので、文献、論文、新聞などさまざまなメディアをすぐに手に取ることができます。

マルチメディアリソースセンター(MMRC)の蔵書は約7万冊、うち1万冊が洋書。
中高生は、同じ敷地内にある大学の図書館を使うこともできます。

 玉川学園では、中学から高校まで一貫して探究力を育む独自プログラム「学びの技」を展開しています。中学でテーマ設定や情報収集、論文作成、発表といった探究の基礎を段階的に習得。そして高校では、そのスキルを生かしながら、進路選択にもつながる課題研究へと発展。その過程を支える新たなツールとして活用されているのが生成AIです。

INTERVIEW
「学びの技」担当の矢崎貴紀先生と
伊藤史織先生に伺いました。
SSH主任・理科 矢崎貴紀 先生「AIを主体的に使いこなしてほしい」
SSH主任・理科
矢崎貴紀 先生

――生成AIの活用で重視していることは?

矢崎先生
生成AIを使うことが当たり前になった今、それを適切に使いこなすリテラシーも探究に欠かせない力だと考えています。知識のないまま利用すると、AIの出力を鵜呑みにしてしまい、自ら考えない姿勢につながりかねません。

生徒には、AIに使われるのではなく、AIを主体的に使いこなす側になってほしい。そのために重視しているのがプロンプトです。どのような問いを投げかければ、どのような回答が返ってくるのか。やり取りを重ねながら質問を改善し、よりよい答えを引き出していく過程そのものが、AI活用のスキルにつながると考えています。

伊藤先生
司書教諭として特に大切だと感じているのは、「読む力」を育てることです。AIが質の高い情報を提示してくれても、それを理解し、評価する力がなければ意味がありません。読む力は積み重ねによって育まれるものなので中学の早い段階から育てていかねばと思っています。

――AI時代に玉川学園の強みは?

矢崎先生
本学園では長年にわたって探究学習に取り組んできたため、探究を評価するための明確な指標や枠組みがあります。その土台があるからこそ、教育的な目的を見失うことなく、生成AIを探究の支援ツールとして適切に活用できると考えています。

伊藤史織 先生「読む力をしっかりと育てます」
アカデミックサポートセンター
図書・情報活用推進室
司書教諭
伊藤史織 先生

伊藤先生
これからは、情報の信頼性を見極める力がますます重要になります。信頼できるデータベースや図書資料を活用しながらファクトチェックを行う力を育てられる環境とカリキュラムが整っていることは、本学園の大きな強みだと思います。

また、生成AIを活用しながら探究を進めるなかで、生徒たちは自分自身の興味や関心をより深く見つめ直していきます。その結果、探究テーマが将来の進路へと結びつくケースも少なくありません。中3で臓器移植と脳死をテーマに研究した生徒は、その後医学部へ進学し、医師になりました。大学では、本学園の探究活動を通して培った力が大いに役立ったそうです。

生成AIは探究を支える有効なツールの一つですが、本学園が育てようとしているのは、その先にある問い続ける力や、自ら考え発信する力。そうした力が、生徒たちの進路や将来へとつながっています。

『学びの技』の授業のテキストを元にした書籍『学びの技』は、全国の書店でも販売されており、多くの学校で探究学習のテキストとして使用されています。

『学びの技』の授業のテキストを元にした書籍『学びの技』は、
全国の書店でも販売されており、多くの学校で探究学習のテキストとして使用されています。

REPORT
論文 テーマ選び
AIを使って“よい問い”を磨く

 学びの技(中3必修)では自らテーマを設定して論文作成や発表を行います。テーマ設定の段階では、生徒はまず自らの興味・関心をもとに研究テーマを絞り込んでいきます。その際に活用するのが生成AIです。

 問いの設定には、予想や予言に終始するもの、調べた情報を並べるだけのもの、検索すればすぐに答えが見つかるものなど、研究として発展しにくい問いがあります。生徒たちは自分の問いが探究として深められる問いになっているか検証するために、「学びの技」のテキストで示された基準をAIに読み込ませます。

「ここで大切にしているのは、AIの答えそのものではありません。どのようなプロンプトを入力したらどのような結果が返ってくるのか、期待した回答を得るためにはどう質問を工夫すればよいのかを学んでほしいと考えています。そのため、生徒にはAIとのやり取りをすべてワークシートに記録してもらい、教員が確認しています」(矢崎先生)

 一方、学びの技の授業では、書籍や新聞、論文、Webサイトなど、さまざまな情報源の特性や、情報収集の方法、引用のルールについて学びます。

「さまざまな情報源があり、それぞれに特徴があります。その違いを理解したうえでより根拠に基づいた資料収集を行います。『AIがそう言ったから』で終わるのではなく、自分で資料を読み、内容の整合性やエビデンスを確認するプロセスを身につけてほしいと考えています」(伊藤先生)

探究授業が行われる「マルチメディアシアター」。マルチメディアリソースセンター(MMRC)内にあるので、文献、論文、新聞などさまざまなメディアをすぐに手に取ることができます。探究授業が行われる「マルチメディアシアター」。マルチメディアリソースセンター(MMRC)内にあるので、文献、論文、新聞などさまざまなメディアをすぐに手に取ることができます。
ポスターセッションの様子。「学びの技」では、探究活動を通して、情報を集めて整理する力、根拠をもとに考察する力、相手にわかりやすく伝える力を実践的に磨いていきます。ポスターセッションの様子。「学びの技」では、探究活動を通して、情報を集めて整理する力、根拠をもとに考察する力、相手にわかりやすく伝える力を実践的に磨いていきます。

論文 執筆
論文執筆後の口頭試験を通して
思考のプロセスを評価する

 論文作成の段階で、生徒はまずワークシートに自分の考えをまとめた下書きを作成し、その内容をもとにAIへ質問を投げかけます。AIから得た助言を参考にしながら、自らの判断で文章を修正し、論文を完成させていきます。

「『この意見は取り入れよう』『ここは自分の考えと違うから採用しない』と判断しながら、自分で思考することが大切です。そのため、生徒とAIとのやり取りはすべてワークシートに記録し、教員が確認しています。どのような下書きから始まり、AIがどのような提案をし、それを受けてどのように論文が完成したのか。そのプロセスを通して、生徒の思考の軌跡を評価しています。
『学びの技』で重視しているのは、完成した論文だけではなく、そこに至るまでの探究の過程です。論文提出後には授業内で一人ひとりとの口頭試験を実施します。『この結論を導いた理由は?』『このグラフから何が読み取れるのか?』といった質問を投げかけます。内容を十分に理解していなければ答えられないため、AIへの丸投げは通用しません」

 さらに矢崎先生は、口頭試験準備にもAIを活用していると話します。

「口頭試験を待つ生徒には、『こういうプロンプトを入れると質疑応答の練習ができるよ』と伝え、AIを教員役として活用してもらっています。AIから鋭い質問を受けることで、自分の論旨の弱い部分や説明不足な点に気づくことができます。その過程が、結果的に論文のブラッシュアップにもつながっています」(矢崎先生)

学びの技で執筆した生徒たちの論文と、作成したスライドはそれぞれ「論文集」「スライド集」としてまとめられ、後輩たちの参考資料として図書館に置かれています。学びの技で執筆した生徒たちの論文と、作成したスライドはそれぞれ「論文集」「スライド集」としてまとめられ、後輩たちの参考資料として図書館に置かれています。
1929(昭和4)年の創立当初から「自由研究」として探究活動を先進的に行ってきた同校。その知識と経験は『自由研究ノート』としてまとめられています。「学びの技」はその「自由研究」の基礎講座として位置づけられています。1929(昭和4)年の創立当初から「自由研究」として探究活動を先進的に行ってきた同校。その知識と経験は『自由研究ノート』としてまとめられています。「学びの技」はその「自由研究」の基礎講座として位置づけられています。
授業で配付される『学びの技』のテキスト。書籍版をもとに、教員らが毎年内容を見直し、改定を重ねています。卒業後も大学の授業や留学先などで役立つとして、長く活用する卒業生もいます。授業で配付される『学びの技』のテキスト。書籍版をもとに、教員らが毎年内容を見直し、改定を重ねています。卒業後も大学の授業や留学先などで役立つとして、長く活用する卒業生もいます。

(この記事は『私立中高進学通信2026年8月号』に掲載しました。)

玉川学園中学部  

〒194-8610 東京都町田市玉川学園6-1-1
TEL:042-739-8931

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