私立中高進学通信
2026年8月号
生成AI活用事例
瀧野川女子学園中学校
AI時代に問われる
“発想する力”を育てる
生徒たちの作業内容はリアルタイムで齋藤先生の画面にも共有されており、
一人ひとりの取り組みを見ながら、その場でアドバイスや声かけを行います。
優れた視点や工夫が見られた際にはクラス全体にも共有。「こういう考え方もあるんだ」という気づきが、ほかの生徒の意欲や学びにもつながっていきます。最先端のデザイン思考を取り入れ、世の中にまだないものを創り出す創造性と起業家精神を育む「創造性教育」に力を注ぐ瀧野川女子学園。日々の学習でも生成AIを活用した実践が進められています。今回は、高3・日本史の授業を取材。生徒たちはAIを活用しながら自分の考えを深め、形にしていきます。副校長の山口龍介先生には、創造性や起業家精神の源となる「アイデア創出型授業」や、生成AI時代だからこそ求められる“オリジナルの発想”をどう育てているのかについて伺いました。
REPORT
高3 日本史
今回は、平安初期の安定した政治基盤を築いた桓武天皇と嵯峨天皇をテーマにした、齋藤辰彦先生による授業。高2までに学んできた知識を土台にしながら、二人の政策や役割を比較し、その背景や時代とのつながりまでを読み解いていきます。AIや資料集も活用しながら、自分なりの視点や考えを整理し、形にしていく取り組みです。
AIの書いた文章にツッコミを入れてみよう!まず齋藤先生から生徒たちに、桓武天皇と嵯峨天皇の政策をAIが箇条書きに整理した比較表が配信されます。
独自に設計された横幅の広い机も同校の特徴。A4サイズのiPad と紙の資料集、教科書を並べて広げられるため、デジタルと紙教材を行き来しながら学習を進めやすい環境が整えられています。AIがまとめた内容をもとに、まずは約15分間、教科書や資料集、これまでに授業で学んできた知識を駆使しながら、不足している情報を書き加えていきます。
続いて、自分の好きな生成AIも活用しながら補足を追加。どの段階で加えた内容なのかがわかるよう、ペンの色を変えて整理していきます。
さらに先生の解説を聞きながら、新たな気づきや視点を別の色で追記。「なぜこうしたのか、その理由まで書けるといいね」「『大宰府』というキーワードも使えたかな?」など先生の問いかけを参考にしながら、理解を深めていきます。生徒たちは行動や政策の背景まで考えながら、より完成度の高い内容へとブラッシュアップしていきます。
最後は、整理した内容をノートにまとめ直し、この学びをもとに“キャッチコピー”を考える宿題へ。知識を覚えるだけでなく、自分の言葉で表現する力も養っていきます。言葉にすることで理解が深まる
「資料集も併用しています」高3 Mさん
教科書だけでは得られる情報に限りがありますが、AIを使うと、人物同士の関係や時代の流れまで結びつけながら整理できるのが面白いところです。一方で、家系図や時代の変遷などは、資料集を見たほうが視覚的に理解しやすいと感じています。AIを活用しながら、自分の考えを言葉にしていくことで、理解も深まりやすいと感じています。
資料集のコラムにも発見がある
「事実確認も心がけています」高3 Hさん
教科書だと単元ごとに学びが区分けされますが、AIを使うと時代同士のつながりや流れまで整理しながら理解できている感覚があり、日本史全体を一本の流れとして捉えやすくなりました。一方で、AIの情報が必ずしも正しいとは限らないので、資料集や小さなコラムも必ず確認し、事実確認をしながら学ぶことを心がけています。
INTERVIEW
オリジナリティを育む学び
「『イエス、アンド』から始まる!」理事・副校長
山口龍介 先生
本校では、「イエス、アンド」という言葉を大切にしています。相手の意見を否定するのではなくまずは受け入れ、「それに加えて」と発想を広げていく姿勢です。一見すると荒唐無稽に思えるアイデアの中にも、その子らしいオリジナリティの芽があります。私は、本来子どもたちは皆が個性的な存在だと思っています。その個性を引き出し、伸ばしていくために、本校ではアイデア創出型の授業を大切にしています。
例えば本校では高2生全員が「事業化実習」に取り組みます。仲間と会社を立ち上げ、企画を考え、実際に事業として形にしていく学びです。AIやプログラミング、3Dプリンターなどを活用することで、これまで一部の専門家に限られていたものづくりにも、生徒たちの手で挑戦できるようになっています。
生徒たちは学校用の安全なChatGPTやGeminiなど複数のAIを、自ら選択しながら活用しています。AIによって知識や技術へのハードルが大きく下がった今、「つくりたい」という思いを形にしやすい時代になりました。だからこそ、これからの時代に最も大切になるのはオリジナリティだと考えています。検索すれば答えが見つかる時代だからこそ、「自分は何を面白いと思うのか」「何を生み出したいのか」が問われてくるのです。生徒一人ひとりの発想をドンドン伸ばして、一人ひとりの個性と能力を引き出していきます。
一人ひとりの発想を
否定しない教室
「まずは自分で表現してみる!」地歴公民科(日本史)
齋藤辰彦 先生
授業で大切にしているのは、「自分の意見を形にする力」を育てることです。単に調べたり検索したりに終始するのではなく、自分の考えを文章として表現し、それを何度もやり取りしながら磨き上げていく。そのプロセスを支えるツールとして、AIを活用しています。今回の授業でもそうしたように、最初に自分の考えを出力しないと、その生徒らしい“味”は出てこないのです。
また、教員の役割として意識しているのが、生徒の考えをまず受け止めること。全部に「いいね」と思っています。否定されずに考えを深められる安心感があることで、生徒も意欲的になるのです。実際に、生徒同士の学び合いも活発で、良い質問を表彰する「質問グランプリ」といった取り組みも全校で行っています。問いをきっかけに授業がさらに深まっていく空気が、教室全体に満ちています。
歴史の授業では「なぜそこで止められなかったのか」「別の選択肢はなかったのか」といった“歴史上のIF”を考えることを大切にしています。歴史を単なる暗記ではなく、「当事者の視点」をもって捉えることで、現代社会にも多様な選択肢や可能性があることに気づいてほしい。問いを立て、自分で考え、改善しながら行動していく力を、日々の授業の中で育てていきたいです。
(この記事は『私立中高進学通信2026年8月号』に掲載しました。)
瀧野川女子学園中学校
〒114-0016 東京都北区上中里1-27-7
TEL:03-3910-6315
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