私立中高進学通信
2026年特別号
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東京電機大学中学校
学校の外へ踏み出した経験が
新たな挑戦と進路につながった
校舎中央に位置し、憩いの場となっている同校の「アトリウム」にて。
「生徒の作品や学習成果も展示されていて、学校の雰囲気を感じられる場所です。
TDU武蔵野祭(文化祭)ではステージ発表もここで行われて、とてもにぎわいます」とSさん。
中学時代に新潟県の佐渡金山について調べたことをきっかけに、「世界遺産になれば観光客は増えるか」という疑問を抱いたSさん。その問いをさらに深めるため、高1時に『東北大学発 地域課題解決・アントレプレナーシッププロジェクト(TREC)』(※)に参加しました。
現地・佐渡を訪れ、行政や地域住民への聞き取り調査を重ねるなかで見えてきたのは、観光振興と地域の持続可能性を両立することの難しさでした。課題に向き合いながら、チームで試行錯誤を重ね、地域課題を解決するためのビジネスモデルを考案しました。
この経験は、その後のビジネスコンテストへの挑戦や進路選択にもつながっていきます。 現在高3となったSさんに、TRECで得た学びや気づき、そしてその経験が現在の進路選択にどのようにつながっているのかを伺いました。
(※)「東北大学発 地域課題解決・アントレプレナーシッププロジェクト」(Tohoku Regional Entrepreneurship Challenge 〈TREC〉)は、全国の高校生・高専生を対象に、フィールドワークを通して東北・新潟地域の課題に向き合い、地域課題の解決につながるビジネスプランを考案・提案するプログラムです。活動では大学生メンターの伴走や活動費の支援も受けながら、実践的な探究に取り組みます。
生徒Voice
――高1でなぜTRECに参加したのですか。
終始笑顔で、ていねいに語ってくれたSさん(高3)中3の夏休みに、探究課題で佐渡島について調べたことがきっかけです。テーマは「なぜ佐渡金山は世界遺産登録されていないのか」というものでした。その後に佐渡金山が世界遺産に登録されたことを知りました。そこで、「世界遺産になって、観光客は本当に増えたのだろうか」と気になって調べたところ、想像していたほど大きくは増えていないことがわかりました。
そこから、「どうすれば地域が持続的に発展できるのか」「観光を地域の利益につなげるにはどうしたらいいのか」と考えるようになり、高1でこのプロジェクトに応募しました。
ただ、当時はこうした課外活動に参加した経験もなく、ビジネスモデルを考えたこともありませんでした。他校の参加者の様子もわからず、半年間でやり切れるのか不安もありました。それでも、「やったことのないことに挑戦してみたい」という気持ちが強く、参加を決めました。
――実際に佐渡を訪れて、印象に残ったことは何ですか。
現地に行くからには、ネットではわからないことを知りたいと思い、市役所の方や観光施設で働く方、地域の方などに直接話を聞くために訪ねました。
そのなかで特に印象的だったのが、行政と地域住民とで課題の捉え方が違っていたことです。
行政は、観光客を増やすために道路整備や交通アクセスの改善が必要だと考えていました。一方で住民の中には、「税金を使ってまで整備する必要があるのか」という声もありました。佐渡市は人口も少ないため税収にも限りがあり、観光振興と地域負担のバランスを取る難しさを感じました。
調べるだけではわからない、現地ならではのリアルな課題を見ることができたと思います。
――ビジネスアイデアはどのように考えたのですか。
最初に考えていた案は途中でうまくいかなくなり、「最後まで走り切れないかもしれない」と思うくらい悩みました。大きすぎる課題に手を付けてしまったと感じた時期もありました。
転機になったのは、友人と食事をしていた時です。レストランでの支払いに、PayPayの送金機能を使っていて、「地域でもこういう仕組みを活用できないか」と思いつきました。
それをヒントに、現地での行動や写真投稿が地域の宣伝につながり、利用者にもメリットが返ってくる仕組みを考え始めました。旅の行程や体験をテンプレート化したり、投稿データを活用したりしながら、約1カ月試行錯誤を続けました。
アイデアは思いついても別の課題が見つかることが多く、そのたびにまた改善していく。その繰り返しでした。

東北大学 地域課題解決アントレプレナーシッププロジェクト(TREC)の成果発表用に制作したスライド。
「懐かしいですね」と当時を振り返りながら、プロジェクトでの学びや経験について話してくれました。
――大学生メンターとの協働で学んだことはありますか。
一番学んだのは、考えを整理して言語化する力です。頭の中の構想を、人に伝わる形にすることは想像以上に難しいと感じました。大学生メンターは、考えを紙に書いて整理したり、言葉で人に伝えたりすることがとても上手でした。
また、特に印象に残っているのは、「まず人に聞いてみる」という姿勢です。もともと自分は人に話しかけるのが得意ではありませんでしたが、最初の佐渡訪問で大学生と一緒に行動した経験を通して勇気をもらいました。2回目の訪問は、友人と2人だけで訪問し地域の方に話を聞くことができ、自分でも成長を感じました。
――この経験は、その後の学校生活や進路にどのようにつながりましたか。
TRECに参加する前は、学校の外での活動にあまり積極的ではありませんでした。友達がいない環境に身をおき、たった一人で挑戦することにも不安がありました。課外活動やビジネスコンテスト、アントレプレナーシップ教育も、自分とは少し遠い世界だと思っていました。
ですが、実際に参加してみると、地域の方や大学生、同世代の参加者など、さまざまな人と出会うことができました。学校の中だけでは得られない刺激があり、「外に踏み出すことは楽しい」と感じるようになりました。それからは、新しいことに積極的に挑戦してみたいと思うようになり、今の自分につながっています。
TRECで考えたビジネスモデルはその後改善を続け、「SusHi Tech Tokyo 2025 Teen Challenge」に登壇する機会をいただきました。大きな会場で、起業家やさまざまな分野で挑戦している人たちと出会い、自分の考えや行動に自信をもてるようになりました。
さらに、その後参加した東京都知事との意見交換の場でも、課題を見つけ、情報を集め、解決策を考え、相手に伝えるというプロセスはTRECで学んだことと共通していて役立ちました。東京電機大学が開発した浸水予測システムを活用する防災のあり方について提案し、質疑応答を通して考えを深めることができました。
中学生の頃は、こうした未来は想像していませんでしたが一歩挑戦してみた経験が、新しい出会いや次の挑戦につながっていったのだと思います。
現在は、東京電機大学への進学を考えており、まちづくり分野を研究したいと考えています。テーマとしてもっているのは、「誰もが安心・安全に暮らせるまちづくり」です。地域課題を見つけ、解決策を考える経験を重ねるなかで、自分が何を学びたいのか、将来何を実現したいのかが見えてきました。もしTRECに参加していなかったら、今の進路選択にはつながっていなかったと思います。
中3の卒業論文では、佐渡金山をテーマに探究活動に取り組みました。「中学生の頃は、こうした未来は想像していませんでした」とSさん。論文を見返しながら、当時の自分を懐かしそうに振り返ってくれました。
高2の卒業論文。これまで積み重ねてきた活動をもとに、地方創生システムの現実性について検証しました。「論文を書いたことで、実現に向けた課題も見つかりました。大学では、その先の実装にも挑戦したいですね」と話してくれました。――最後に、受験生へメッセージをお願いします。
中学・高校の探究や情報の授業で学んだことは、想像以上に外の活動でも役立ちました。特に、課題を見つける視点や、相手に伝わる形で発表する力は、今回の活動でも大きな支えになりました。
最初の一歩は不安でしたが、挑戦してみることで新しい出会いや可能性が広がりました。人生の分岐点はいつ来るか分からないので、少しでも興味をもったことには挑戦してみてほしいと思います。
東京電機大学中学校
〒184-8555 東京都小金井市梶野町4-8-1
TEL:0422-37-6441
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