私立中高進学通信
2026年特別号
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開智未来中学校
DXハイスクール×探究で広がる
「やってみたい」を形にする学び
プレゼンテーション行事「未来TED」では、
1年間の探究成果を、生徒たちが最先端の機器も活用しながら堂々と発表。
自らのアイデアを社会へ向けて発信する姿は、同校の学びの象徴といえます。
2025年度、文部科学省「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の採択校となった開智未来中学・高等学校。高性能の3Dモデリングプリンターや生成AIなどの最先端技術を活用し、実践的な探究教育がさらに加速を見せています。今回は、同校でICT・探究教育を担当する先生方に、その取り組みと今後の展望について伺いました。
アイデアを実際に“形にできる”環境を整備
最先端分野で活躍する人々と出会い、学ぶ機会も
――ICT教育の先進校として歩んできた開智未来ですが、DXハイスクール採択校として、どのようなところをめざしているのでしょうか。
情報科主任・数学科/木島光紀先生木島先生
本校では、ICT教育の第一人者でもあった加藤友信校長(当時)が就任した2018年以来、校内Wi-FiやPC環境を整備し、全生徒へのiPad配付を行うなど、ICTの活用に力を入れてきました。デジタルリテラシーの育成にも注力しており、生徒たちはタブレット端末を自在に活用しながら探究活動を進めています。
新居先生
探究活動が充実する一方で、既存の環境では表現や研究の幅に限界があり、テーマも文系・社会学系に偏りがちという課題が見えてきました。そこでDXハイスクールでは、特に理系探究の充実をめざしています。
理系探究では、「考える」だけでなく、実際に「つくり、形にする」ことや、精緻な検証が重要になります。そのため、より高品質な機器や環境を整備したいと考え、DXハイスクールを申請しました。
宮入先生
一方でDXは、これまで本校が力を入れてきた社会学的な探究とも非常に相性が良いと感じています。特に近年急速に発展しているAIに関しては、積極的な活用を進めています。
例えば、本校の「探究ガイドブック」にはアプリ開発の方法も掲載しており、「コードが書けないから難しい」と感じていた文系の生徒でも、自分たちの身近な課題を解決するアプリを開発できるようになりました。アイデアを実際に形にして、社会の中で使ってもらえるところまで到達できるようになったのです。
さらに、補助金を活用することで、最先端分野で活躍する外部の方々をお招きする機会も広がりました。例えば、当時15歳だった起業家を招いたこともあり、生徒たちにとって大きな刺激となりました。
こうした取り組みを通して、学校そのものをアップデートしつつ、生徒たちの学びをさらに加速・拡張していきたいと考えています。
最先端の機材が“そこにある”からこそ
生まれる交流と学びの可能性
――DXハイスクールとして環境を整えていくなかで、生徒たちの学びにはどのような変化が生まれていますか?
宮入先生
インターネット上の情報や技術を活用しながら、地域の課題解決に取り組むなかで、人とのつながりも自然と広がっています。
DXハイスクールの取り組みの一環として活動している有志の探究グループ「未来共創ラボ」では、地域課題をテクノロジーで解決することをテーマに探究を進めています。例えば、埼玉県内の老人ホームと連携し、認知症予防アプリの開発にも取り組んでいます。
また、この地域は首都圏と比べると、まだ十分にテクノロジーが行き届いていない部分もあります。だからこそ、「この地域だからこそ生み出せる価値」に目を向けていくようになりました。外部の方にもメンターとして関わっていただきながら、地域の温かな支えの中で、さまざまな活動が広がっています。
教頭補佐・理科/新居先生
理系分野では、DXハイスクール採択によって3Dプリンターなどの機材も導入されました。まだ本格的な活用はこれからですが、「アイデアはあるけれど形にできなかった」という生徒たちが、実際に制作物を作れるようになったことは、大きなモチベーションにつながると感じています。3Dプリンターやロボットなどを活用して成果物が形になることで、「もっとやってみたい」という意欲につながっていくと思います。
実際に、生物の授業では、ネット上のデータをもとに細胞モデルを3D出力し、「どこが正しくて、どこが違うのか」の考察に取り組みました。なかには自分で正しい模型を作ってきた生徒もいます。機材が“そこにある”だけで、生徒たちの取り組み方が大きく変わることを実感しています。
宮入先生
私は日本史を担当していますが、例えば江戸時代の宝永噴火による富士山の地形を3D出力し、授業で活用しています。東海道がどのルートを通っていたのかなど、教科書の平面的な図だけでは見えにくい部分も、立体化することで理解しやすくなります。
新居先生
また、こうした比較的珍しい環境が整っていることで、外部の学校との交流も生まれています。先日は系列校である「開智望」(茨城県つくばみらい市)の生徒が、「DXハイスクールで整備された機材を使いたい」と来校し、本校の生徒と半日ほど交流しました。互いの技術を教え合う姿も見られ、こうしたつながりがさらに広がっていけばと思っています。
さらに、生物では実験に向けたDX関連機器としてデジタル顕微鏡も導入しました。こちらから「これを使いなさい」と指示するのではなく、生徒たちが興味をもち、主体的に探究へつなげていけるよう、“種まき”をする感覚で環境を整えています。
木島先生
私は情報の授業も担当していますが、授業の柱として10年以上前から「ICTを使って、現実を理想に近づけるにはどうすればいいか」という“問題解決”をテーマにしてきました。
ただ、実際にそれを形にしようとすると、高度な技術や高性能な機材が必要になり、実現が難しい場面も少なくありませんでした。しかし、DXハイスクール採択によって環境が整備され、プログラミングやデータサイエンスを活用した、より実践的な問題解決に取り組めるようになっています。
例えば、私が顧問を務める「情報部」は、全国高等学校eDIY選手権大会に出場し、全国2位という好成果を収めました。生徒たちはスクールバスの運行会社と連携し、センサーとプログラミングを活用して、バスの乗車人数や運行状況を把握できる仕組みを開発したのです。
こうした実装実験まで行えるようになったのは、DXハイスクールとして機材や環境を整備できたからこそです。
生成AIの活用によって、より重要になる
「どんなことをやりたいか」という発想
――生成AIの登場によって、生徒たちの「挑戦」はどのように変わってきていますか?
木島先生
情報部でこのシステムを考えた生徒は、中学時代はテニス部に所属し、高校から情報部に入ってきました。決して最初からプログラミングが得意だったわけではありません。生成AIの進歩によって、「やってみたい」という思いがあれば挑戦できる環境が広がってきていると感じます。
今後は、こうした取り組みを授業にも還元していきたいと考えています。学校生活の中で感じる小さな不便を解決することでもかまいません。まずは「やってみる」ことから始めて挑戦してほしいと思っています。
探究主任・社会科/宮入裕人先生宮入先生
AIには課題もありますが、私が大切にしているのは、生徒が「面白い」「もっと知りたい」と夢中になることです。そのためには、教員自身もテクノロジーを積極的に活用していく必要があると感じています。
生成AIは、教員側にも大きな変化をもたらしました。これまで十分にできていなかった論文指導にも活用できるようになり、AIを“パートナー”として生徒自身が論文を書き上げています。本校では、ルーブリックを組み込んだGeminiのカスタムAIを活用しており、さらに先輩たちの論文などもAIに学習させることで、本校ならではの探究文化や知見を次の世代へ受け継いでいく仕組みづくりにも取り組んでいます。
新居先生
プログラミングやDXの分野では、生成AIの登場によって、文系・理系の垣根がかなり低くなったと感じています。以前は技術的な知識がないと実現できなかったことも、今では「どんなことをやりたいか」という発想から挑戦できるようになりました。
もちろん、最終的には自分で考え抜き、形にしていく力が必要です。しかし、挑戦へのハードルは確実に下がっています。だからこそ、これからは文系・理系を問わず、「まずはやってみよう」と動き出す姿勢がますます重要になってくると思います。
受験生へのメッセージ
新居先生
本校には、アイデアを実際の形にしたい生徒をサポートできる環境があります。ぜひ小学生のうちから、さまざまなことに興味をもち、挑戦する姿勢を大切にしてほしいですね。
宮入先生
「これが好きでたまらない」「こんな困り事を解決したい」という思いをもった生徒と、一緒に歩んでいけることを楽しみにしています。
木島先生
本校には、最初の一歩を踏み出す“きっかけ”がたくさんあります。日常生活の中で「もっと良くするアイデアはないかな」とアンテナを張りながら、ぜひ本校で問題解決に挑戦してほしいと思います。
2026年度版の『探究ガイドブック』。今年度のテーマは、「AIで探究を加速・拡張し、人とのつながりの中で社会実装する」です。これまで紙で行われていた「マンダラチャート」は、宮入先生が作成したWebアプリへとアップデート。さらに、生成AIの活用法も紹介されるなど、探究をより深め、広げるための内容へ進化しています。
タブレット端末やICT機器の活用が進んでいますが、だからこそ「書くこと」や「自分で考えること」も大切にされています。最先端の技術を活用しながら、学びの基本を大事にしていることも同校の強みです。開智未来中学校
〒349-1212 埼玉県加須市麦倉1238
TEL:0280-61-2021
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