私立中高進学通信
2026年特別号
校長先生が語る6年間のビジョン
城西川越中学校
一人ひとりの成長を見つめ
「自己ベストの更新」を支える
高校創立50周年、中学創立30周年を迎えた2022年度に、校長に就任された渡辺聡先生。
昨年リニューアルした家庭科室で。
「今回のリニューアルを通して、本校が『実験・実習・実技・実際』を大切にする学校であることを、
生徒たちにも、受験生にも伝えていきたいと思っています」
知識と体験の相乗効果で
「豊かで深い学び」へ
変化の激しい時代と言われるなかで、私は「トラスト>トレンド」という不等式をつくりました。教育の流行を追うのではなく、信頼ある教育を土台に、これまで積み重ねてきたものを大切にする。そのうえで、新しいものを取り入れていくことが大切だと思うのです。
教育は、「これだけ力を注いだから、これだけ成長する」という単純なものではありません。魔法のようなテクノロジーを使って「3年間、6年間で生徒を必ず成長させよう」と気負うのではなく、子どもたちに「変化が起こるのを待つ」姿勢も大切です。
だからこそ、実際の体験を大切にしています。実験や実習、学校行事、クラブ活動に一生懸命取り組んでもらい、結果として失敗した場合でも、そこからたくさんの学びが得られます。
一方で、座学も決して軽視はしていません。オーストラリアや台湾への海外研修の際も、現地の歴史や文化を事前に学んでから現地へ行く。高校生が沖縄へ行く際も、沖縄の地上戦や「平和の
知識を得たうえで、実際に見て、触れて、感じる。そしてそこからまた考える。座学と実習、実験、実技などを組み合わせてこそ、「豊かで深い学び」が生まれるのだと思っています。
そして、大人が予想もしなかった方向に子どもが成長していくことを、「面白いことが起こるかもしれない」と、少しおおらかに構えていたいと思います。
人と関わるからこそ
自分の強みに気づける
学校は、さまざまな人が集まり、関わり合う場所です。時にはぶつかり合うことや、いざこざが起きることもあります。そこで大切なのは、人と関わるなかで起きた問題をどう解決するか、その方法を学ぶことです。先生に頼るのもいいですし、同年代の友達同士で解決してみるのもいいでしょう。人を頼ることだって、大切な力です。
子どもたちは、同年代の仲間から本当にたくさんのことを学んでいます。友達の発言に影響されたり、友達の失敗や成功を見て自らを省みたりする。また、集団の中にいると、自分では得意だと感じていなかったことが評価されたり、逆に苦手な部分に気づいたりします。前に出て集団を引っ張るのが得意な生徒もいれば、裏方として支えるのが得意な生徒もいる。実際にその役割を担ってみなければ、自分の個性にはなかなか気づけません。
友達や先生から褒められて、初めて自分の長所に気づくこともあります。そういう意味でも、集団の中で切磋琢磨することはもちろん、人と関わりながら自分自身を知っていくことが、学校で学ぶ大きな意味なのだと思っています。
「自己ベストの更新」を重ねて
自立していく
子どもたちの自立には、「小さな成功体験を積み重ねること」が大切だと感じます。
例えば、人前でスピーチまたはプレゼンをするとき、まずは原稿を見ながらでもいい。リハーサルをして、「これならできる」と思えるところから始める。できたら次は、もう少し高いところをめざす。そうやって成功体験を積み重ねることで、自信がついていきます。自立とは、そうした積み重ねの先にあるものだと思います。
私はよく生徒たちに、「自己ベストの更新」を学校生活の目標の一つにしてほしいと話しています。去年できなかったことが今年できるようになる。それだけでも立派な成長です。人との競争だけでなく、昨日の自分、去年の自分とも比べながら、自分らしく成長してほしいと思っています。
進路についても同じです。偏差値や知名度だけで大学を選ぶのではなく、「自分がやりたい研究ができる場所」を考えてほしい。実際に本校では、地方の国公立大学も含めて、自分に合った環境、自分が伸びる場所を見定めて進学先を決める生徒が多くいます。
「実験・実習・実技・実際」を
大切にした環境整備
昨年は家庭科室、今年はメディア室をリニューアルして、実習にしっかり取り組める環境を整えました。
家庭科では男性の家庭科専門教員を迎え、大学での一人暮らしを想定した調理実習なども行っています。さらにカセットコンロを使った調理や、アルファ米を使った防災の実習など、防災力につながることも考えてもらっています。調理実習は、まずはレシピどおり、手順どおりに進めてみる。その経験を積んだうえで、今度は自分なりに工夫を加える。これは料理だけでなく、数学などの学びと同じことだと思います。
メディア室も、単なるPC教室ではなく、MacBookやiPadなどを備え、さまざまな活動に使える場所としました。プログラミングや情報リテラシーを学ぶだけでなく、台湾とのオンライン交流など、海外とのつながりをつくる拠点にもしていきたいと考えています。
「新しい設備ができたから満足する」のではなく、それを使って生徒たちが何を学び、何ができるようになるのか。そうしたところまで見据えて、学びの環境を整えていきたいと思っています。
学校という場所を
「人と人がつながるハブ」に
卒業生で株式会社ispace創立者&代表取締役(CEO)の袴田武史氏からもヒントを得て、「レジリエンス」(回復力)に注目しているという渡辺校長。卒業生とのつながりからも多くを学んでいます。※「レジリエンス」はispaceの月着陸船の名称でもあります。
これから強化したいことの一つに、「社会関係資本(Social Capital)」という概念があります。人は自分一人で成長していくわけではありません。家族、友人、先生、地域、他校、海外など、さまざまな人との「つながり」のなかで育っていくものです。
本校には台湾やオーストラリアとの「つながり」がありますし、これからは他校との交流など、さらにチャンネルを増やしていきたいですね。文化祭などを通して地域とのつながりも強めていきたいと思っています。もちろん、人類の集合知との「つながり」もおろそかにせず、座学もちゃんとやります。
学校を閉じた場所ではなく、いろいろなところにつながっていく「ハブ」のような存在にしていきたいのです。生徒同士がつながり、保護者もつながり、地域ともつながる。そうした豊かな人間関係の中で学ぶことが、生徒たちの粘り強さ、たくましさにもつながっていくのではないかと思っています。
いろいろな人と関わりいろいろな経験をして、うまくいかないことがあってもまた立ち上がる。そうした「レジリエンス」(心の柔軟性、回復力)も身につけてほしい。
生徒たちが多様な他者と出会いながら、自分らしく成長できる。そんな豊かな学校生活を、これからもつくっていきたいと思っています。
小さな変化に目を配り
一人ひとりを温かく支える
中1の頃は幼かった生徒が、高2で実行委員長になり、文化祭の舞台で堂々とスピーチをする。後輩ができた時や、行事で最高学年になった時など、自分が誰かを支える立場になって頼もしい活躍を見せる。そんな姿を目にすると、生徒の成長の大きさを実感します。教員は、保護者の方とはまた違ったかたちで、集団の中で成長していく子どもたちの姿を見続けることができます。「すごいね」「自立したよね」と教員同士で喜びを分かち合う瞬間に、教員になってよかったと感慨深くなります。
私が本校の先生方を見ていて感じるのは、本当に熱心で、生徒たちをやる気にさせるのが上手だということです。少人数の学校だからこそ、一人ひとりに目を行き届かせることができます。「顔色が少し悪い」「今日はいつもより元気がない」。そんな小さな変化にも先生方は気づきます。先生のほうから声をかけると、ぽつぽつと本音を話し始めてくれることもあり、そうした姿を見ると「さすがだな」と思いますし、生徒にとっても安心できる環境なのだと思います。
こうした日々の関わりを大切にしながら、生徒たちの成長を支えていきたいと思っています。

[沿革]
高校は1972年、中学は1992年開校。「報恩感謝」を校是に、自分が多くの人や自然に生かされていることへの感謝を大切にする人間教育を実践しています。「心豊かな人間の育成」「個性・学力の伸長」を教育方針に掲げ、一人ひとりの個性や適性を尊重した学びと進路指導を展開。難関国公立大学から私立大学、医療系学部まで、多様な進路を実現しています。
城西川越中学校
〒350-0822 埼玉県川越市山田東町1042
TEL:049-224-5665
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