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私立中高進学通信

2023年神奈川版

キャリア教育の現場から

湘南学園中学校

『#わたしプログラム』で自らを再認識
“自分”を築くきっかけに

生徒が作成したマインドマップ。1つの枝に1つの言葉を書き、徐々に枝を伸ばしていきます。

生徒が作成したマインドマップ。
1つの枝に1つの言葉を書き、徐々に枝を伸ばしていきます。

「社会の進歩に貢献できる、明朗有為な実力のある人間の育成」を教育目標とする同校。自主的、積極的に行動できる人間をめざす取り組みの一つ『#わたしプログラム』を取材しました。

将来の目標を考えるプロセス
  1. 自分がどんな興味や関心をもっているのかを知る
  2. 「現実」をしっかり認識して「将来」を考える
  3. 「現実」と「将来」の落差から、「問題」を発見する
  4. 「問題」の解決が自分の「目標」となる

 校長によるトップダウンではなく、教員同士が意見を交わし教育の道筋を探る校風の同校。教員主導で “今”の生徒たちにフィットするプログラムを展開しています。知識のみならず、協働性や自主性を培い、持続可能な社会の担い手を育てることを目的に力を注ぐキャリア教育「ESD」(※)においてもそれは発揮され、2022年度は高1で『#わたしプログラム』という試みを実施しました。

「これまでキャリアデザインでは、 “日常のすべてが学びである” というキャッチフレーズのもと、総合学習のなかで、グループ活動や地域に目を向ける集団での取り組みを多数行ってきました。そうしたなか、生徒一人ひとりが自分に向き合う時間が必要ではないかと気がつきました。担任との面談で、生徒たちが自分のことをうまく話せないように感じていたので、文理選択など進路を決めるため、自分自身と向き合うことが必要となるこの時期に、 “個” にフォーカスする機会を設け、自らの興味・関心と将来をつなぎ合わせるきっかけが作れたらと考えました」(数学科/松林峻平先生)

 プログラムは3日間かけて3段階で実施されました。

「他校の実践や教育に関する書籍も参考にしましたが、他校の事例が本校にそのまま当てはまるわけではないですし、優れた教育理論を実践しても、それがそのまま本校の生徒たちにフィットするわけでもないので、先生方とアイデアをたくさん出し合って、本校の生徒たちに合うプログラムとなるように練り上げました」(社会科/山根友樹先生)

「生徒にマッチするように」といった工夫は、第1段階で行ったマインドマップにも活かされました。用紙中央にメインテーマを配置して、連想されるアイデアや情報を線でつなぐマインドマップは近年、思考整理のツールとして教育やビジネスの現場で活用されています。同校では、生徒たちが気軽に自分の内面と向き合えるように、8つの項目を用意しました。そうして作成したマインドマップを基に、第2段階では「16歳のわたしが考える30歳のわたし」、第3段階では「何を大切にして、どう生きていきたいのか」について作文を書き、自分の興味・関心を可視化して自らを再認識し、将来について深く考える機会を作りました。

「『自分を見つめ直すきっかけになった』『自分のことなのに、アイデアを考えるのが大変だった』などの感想が生徒たちから寄せられたように、自分と向き合えたことは大きな意味があったと思います。このプログラムをきっかけに、生徒たちの内面に1本の芯が通ったので、そこから外に向かって大きく枝葉を伸ばしてほしいと思います」(山根先生)

※ESD…持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)。湘南学園では、「持続可能な社会の担い手」を育てることにつながる全ての教育活動を、「湘南ESD」として位置づけている。

3段階の活動
1日目マインドマップで自分の興味・関心を可視化する

 自分をイメージした絵を3色以上の色を使って中央に描き、そこから「得意なこと」「好きなもの」「興味・関心」「好きな教科」「目標」「性格」「最近気になること」「将来について考えていること」の8つの枝を伸ばす。それぞれについて思いついた言葉を1枝に1つ書き、だんだん枝を増やしていく。言葉はささいなことでもいい。


2日目16歳のわたしが考える30歳のわたし

 自分で描いたマインドマップを見ながら、“今のわたし”がどんなことをしていて、どんな人なのかといった現状を書き出す。そして、“30歳のわたし”が、どんなことをしていたいのか、どういう生活をしていたいのかといったイメージを書き出し、今の自分と30歳の自分を比較して、理想の自分になるためには何が必要なのかを考える。


3日目SNSで発信するように「どう生きていきたいか」を主題に作文

“わたし”は何を大切にして、どう生きていきたいのかーー1日目と2日目を通して感じた思いをSNSで誰かに伝えるように、150字程度の文章にまとめる。最後に、SNSで“わたし”を発信する時、どんな人たちとつながりたいかを考えてキーワードを作成し、ハッシュタグを付けた「わたしのハッシュタグ」を書き添える。

生徒の8割が「新しい自分を発見できた」「自分を再認識できた」と回答

 プログラム終了後のアンケート調査では、マインドマップによって「新しい自分を発見できた」と回答した生徒が74.5%、「自分を再認識できた」と回答した生徒が7.2%でした。「16歳のわたしが考える30歳のわたし」では、「30歳になった時のことなんて考えていなかったけれど、考えてみたら結構楽しかった」「自分がどうなりたいかわかった」などの声があがりました。最後の作文では「自分の考えを簡潔にまとめることで、本当に大切にしたいことが整理できた」という感想もありました。

(山根先生)「このプログラムで一人ひとりの違いが明確に見えたことは、教師にとっても大きな意味がありました」(山根先生)
(松林先生)「自発的に自分と向き合うことはなかなかできませんが、学校のプログラムなら可能だと改めて確信しました」(松林先生)

『#わたしプログラム』を体験した生徒が2日目に作成したシート。
文章でもイラストでも形式は自由。

生徒たちの手応えを基に
より良いプログラムに

『#わたしプログラム』というタイトルは、「SNSで自分を発信するとしたら」というイメージから発想されたものです。作文の字数を150字にしたのも、SNSで自分について投稿することを仮定したからです。両先生に今回の取り組みの背景をお聞きしました。

「今まで『どう生きていきたいか』というテーマで作文を書く場合、生徒たちは今の気持ちや人としての生き方ではなく、職業について書く傾向にありました。例えば『何に興味があるの?』という問いの答えは、YouTubeでもゲームでもいいのに、将来就きたい職業に合わせた興味を語る生徒が多かったのです。このプログラムでは、ありのままの自分を見つめ直してほしかったので、生徒たちが普段触れているSNSをイメージして、150字で端的に自分を表現できるようにしました」(松林先生)

 その効果はてきめんでした。

「短い文章量に設定したことで、作文の内容は職業ではなく、趣味を大切にしたいとか、家族を大事にしたいとか、人として生きていくうえで重要だと思っている部分が多く書かれており、生徒たちが自分を見つめ直す機会になったことを実感しました」(松林先生)

 生徒たちが自己理解を深めたという手応えを得たことで、今後実施する学年や回数、内容など、その形を変えながら同プログラムを継続する方針だと両先生は語ります。

「今回は高1の文理選択の直前に実施しましたが、もう少し前の段階で行えば、進路面談で自分の考えを教員や保護者に話すことができるようになるかもしれません。例えば、中1で1回、高1で1回など、期間を空けて行えば、生徒が自分の精神的な変化を知ることもできると思います」(松林先生)

「本校は中1から高3まで一貫した総合学習が特徴ですが、このプログラムを材料にすれば、自分自身の興味・関心に合わせた社会課題を見つけることができます。本年度は中1でマインドマップを作成し、自分の興味に一番フィットする本を探すという企画を、図書室と連携して行いました。学校の取り組みともリンクさせていくことで、より良いプログラムに発展させていけるのではないかと思います」(山根先生)

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