私立中高進学通信
2023年9月号
校長先生はこんな人!
山脇学園中学校
『志』の種を見つけると
人は本気になれる
紆余曲折を経て、教育者の道へ
西川 史子 (にしかわ・ふみこ)校長先生
東京都出身。東京都立駒場高等学校から武蔵野音楽大学音楽学部器楽科へ進学。
1990(平成2)年、同大学大学院在籍中に、山脇学園の音楽科非常勤講師に。
1991年、大学院を修了し、専任教諭として入職。2児の母親として子育てをしながら教員としてキャリアを重ね、
入試広報室長、教務部長を歴任。2021(令和3)年4月より校長に着任。中1の道徳の授業も担当。
ピアノから離れて気づいた
自分の中にある『志』
私の母も音楽科の教員をしていました。まだフルタイムで働く女性が少ない時代でしたが、母は仕事に子育てに大忙し。しつけも厳しく、私をピアニストにしようと考えていました。ただ、当時の私は最低限の練習はするものの、ピアノがそれほど楽しいとは思えませんでした。それよりも、本を読んだり絵を描いたりすることが好きだったのです。
それでも、母の期待もあり高2までは音楽大学への進学をめざしていました。ですが、さまざまな進路を友人と語り合う中で音楽の道への疑問が湧き、数カ月ピアノから離れることにしたのです。
実際に離れてみたことで、私とピアノは切っても切り離せない関係にあるとようやく気づきました。やはり音楽と関わりながら人生を過ごしたい。そう思い始めてから初めて、ピアノに本当に真剣に向き合うようになりました。
この経験から、誰かにやらされていると感じているうちはダメだとわかりました。自分の中から見つけ、自分で決めたものこそが『志』になるのだと。
どんな生徒にも
想像を超えて成長する瞬間がある
音楽大学に入学し、教職課程を取ったものの、母の忙しそうな姿を見ていた私は、教員にはなりたくないと思っていました。ですが、教育実習はとても楽しく、先生方からも「あなたは教員に向いている」との評価をいただきました。そして大学院時代、本校に欠員が出たことで、音楽科の非常勤講師に。この経験が、私の第二の『志』につながりました。
本校に着任して感銘を受けたのは、『合唱祭』に臨む生徒たちの姿でした。合唱祭では、選曲も自主練習のスケジュール調整も生徒たちが行います。時には揉めることもありますが、何度も話し合い、めざすイメージが固まると、とてつもない力を発揮します。自主練習を重ねた生徒が「先生、すごく良くなったので、聴いてください」と素晴らしい歌声を聴かせてくれた時には涙したことも。生徒たちの心が動く瞬間を目の当たりにし、私の第二の『志』は教員になることだと確信しました。
生徒たちには、私たちの想像を超えて成長する瞬間が必ずあります。それはステージに上がる準備期間、本番、そして本番後です。このステージとは比喩表現で、部活動の試合、コンテスト、受験など、全力をぶつける機会であれば何でもかまいません。もし良い結果が得られなくても、この経験にどんな意味があったのか、次はどうすればいいのかを考えればいい。そのきっかけを与えるのが、大人の役割だと思っています。
中高6年間でこうした経験を重ねることを目的に、本校では2022年度から『マイ・ステージ』と称して、企業や大学などが開催する学外プロジェクトやコンテストへの参加を奨励しています。自分で設定した目標に向かう生徒たちは、その過程で、私たちが感動させられる大きな成長を見せます。生徒たちには、たとえ小さなステージでも、本気で準備し、全力を尽くすよう伝えています。
この取り組みを始めたところ、2022年度だけで90件以上の表彰を受けました。活動の成果は全校放送で共有していますが、「あの子はそんな挑戦をしていたんだ」とほかの生徒たちの心も動き、新たな挑戦につながっています。
そんな話を学校説明会でしたところ、保護者から「うちの子は引っ込み思案なので無理だと思います」との声がありました。ですが、お子さんを型にはめず、成長を信じてあげてください。自分で『志』の種を見つけたなら、子どもたちは自走し始め、驚くほど変容します。
社会の変化を見据え
必要な力をつけてほしい
2021年3月、前校長が体調を崩され、十分な心の準備もないまま校長に着任しましたが、長く勤めてきた学校への愛情と不易流行を『志』としてもち続けています。120年の伝統をもつ本校の建学の精神を、今の時代に照らして生徒たちに伝えつつ、社会の変化を見据え、将来の活躍に必要な力を育んでいけたらと思います。
その一環として、『総合知』をコンセプトに教科横断型カリキュラムを実施しています。こうした学びの影響から進路も多様になり、2022年度の卒業生は85大学164学科に進学しました。
私は今、本校を次世代につなぐという新たな『志』を抱いています。社会でイキイキと活躍する生徒たちを送り出せる社会的価値のある学園であるために進化し続けたい。そのためのバトンを未来に受け渡したいと思います。
[沿革]
1903(明治36)年、山脇玄、山脇房子夫妻が創設した實脩(じっしゅう)女学校が前身。1947(昭和22)年、学制改革に伴う組織変更により、山脇学園中学校・高等学校に。富士山のように『いつどこから見ても変わらぬ姿』『清らかで穢れなき心』『感情を抑える克己心とおだやかで平和な姿』を理想に掲げ、時代と呼応する教育を行っている。
(この記事は『私立中高進学通信2023年9月号』に掲載しました。)
山脇学園中学校
〒107-8371 東京都港区赤坂4-10-36
TEL:03-3585-3911
進学通信掲載情報
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