私立中高進学通信
2023年8月号
私学だからできるオリジナル教育
藤村女子中学校
『ふじ活』で『聞く授業』から
『参加する授業』へ
探究活動が活発で、ICT化にも力を入れている藤村女子。2023年度からは、さらに授業改革が進められ、教科学習においてもICTツールを積極活用し、思考力や表現力の向上に努めています。
国語科の授業で物語の流れや主人公の考えについて読み取る学習で、ロイロノートのシンキングツールを活用。
「配信されるカードはいろいろ工夫されていて、プリントより書き込みやすく、意見の交流もしやすいです」(Tさん/左)、
「書いたり消したり自由にできるので、自分の考えをまとめやすいです。
他の人の意見や考えに触れられるのが楽しいし、参考になります」(Dさん/右)。
ICTは思考力を
高めるツール
オリジナル授業やゼミ活動を取り入れた『ふじ活(ふじむら探究活動)』で、自ら考え、行動し、表現する生徒を育成している同校。『ふじ活』の導入から3年が経ち、クラスメートとの協働や意見の発表などで、生徒たちが積極的に授業へ“参加する”意識が浸透してきました。
そこで次のステップとして、各教科においても、教員の話を聞いてノートを取る従来の学習スタイルから、生徒同士で意見を出し合ったり、興味・関心を掘り下げて調べ、その内容をまとめて発表したりする“参加型”の授業へ変えていこうという気運が高まりました。そこで2023年度から、『聞く授業から、参加する授業へ』をキャッチフレーズに、ICTを駆使した授業改革を進めています。
同校では以前より、生徒一人ひとりがiPad端末を所持し、学習や連絡などさまざまな用途に活用してきました。さらに今春から、授業支援アプリ『ロイロノート・スクール』(以下、ロイロノート)を開発する株式会社LoiLoに勤務していた佐藤邦享先生が同校に着任。より効果的な使用法について佐藤先生を中心に教員同士で研究し、授業で実践しています。
6年間で磨く力は
大学進学でも有利に
佐藤先生は授業でのICT活用について「板書やプリント配布・回収などに使っていた時間を削減し、思考や表現の時間に充てられる」「関連する画像や動画を見て、教科書の内容以上に理解を深められる」などのメリットを挙げます。
特に意見を整理したり、資料を作ったりする取り組みにおいて、「デジタルなら何度でもやり直し可能で、気軽にチャレンジできるため、生徒たちはどうすればうまくできるのか、自分で考えます。思考の回数を増やせることがICTを活用する強み」と話します。
ロイロノートを使うことで、クラス全員の回答を画面上で共有できるようになり、他者の意見を知り、新たな学びや発見が得られるようになりました。
入試広報部長の芦澤歩夢先生によると、かつては授業中に生徒へ質問しても、「前に発言した人と同じ意見です」と返答するケースもあったそうです。ロイロノートを使うことで、各人で意見が異なるのは当たり前だと実感できるようになり、活発に意見を出し合う授業スタイルが定着しました。
現在の中1生は、入学時から日常的に“参加型の授業”で学んでいます。同校でも大学受験で総合型選抜を利用し、夢への第一歩を踏み出す生徒が増えてきました。そうした際にも、日々の授業で養われた思考力や、自分の意見を伝え、表現する力は大きなアドバンテージとなるでしょう。
中1国語の授業でのICTツール活用
主人公に思いを馳せ、意見をまとめ発表する手助けに
語句の意味や物語の設定を
ていねいに確認する
5月中旬、中1の国語科の授業を2限にわたって取材しました。学習するのは吉橋通夫作『さんちき』。江戸時代、幼い頃から車大工(車輪や荷車などを製造する職人)に弟子入りしている主人公が、車作りや親方との交流などを通じて、一人前の職人をめざす決意をする物語です。
教科書を通読し、用語や語句の意味をていねいに捉え、物語の設定を確認するところから授業はスタートします。佐藤先生は生徒たちのiPadへ教科書のページと同じ画面を配信し、音読。途中でポイントとなる一文が出てきた時は、iPadの教科書の画面に線を引きます。生徒は先生の音読を聞きながらその様子をiPadで確認し、教科書に同じように線を引きます。的確に指示が伝わり、時間のロスも抑えられています。
ロイロノートを効果的に使い
意見をまとめていく
通読の後は、物語の設定・山場・結末について確認。時代考察や物語に関連する画像や動画を見ながら、教養や理解を深めていました。教科書を読むだけではイメージが湧きにくい単語や表現も、画像や動画で見ると頭に入りやすいようで、生徒たちも佐藤先生の問いかけに声を出し、よく反応していました。
続いて、佐藤先生がロイロノートで物語の内容について問うカードを配信。生徒たちは意見を書き込んで提出します。画面上で全員の回答を共有し、他者の意見も参考にしながらディスカッションしていきます。続けて主人公の立場や心情を読み取るカードなども配信され、意見交換を続けました。授業内で終わらなかったカードは宿題となり、当日夜までにiPadから提出します。
佐藤先生はロイロノートのシンキング(思考)ツールを使って思考→共有→ディスカッションを繰り返し、生徒が自分自身の力で考えを可視化し、まとめられるようサポートしています。
「人によって認識や考え方が違うことに気づき、比較しながら自分の考えをまとめ、しっかり発表までできるようにしています」(佐藤先生)
ICTツールを有効活用することで、より深い学びが実践されていることを実感できる授業でした。
先生から一言
考える時間をたくさん取り
思考力や表現力を高める
ICTツールで授業を効率化し、考える時間をよりたくさん取れるように工夫しています。授業の感想を聞くと「楽しかった」だけではなく、「疲れた」という生徒もいて、それだけよく考え抜いてくれた結果だと前向きに捉えています。今回の題材は生徒と同世代の主人公が働き、将来について決意を固める物語です。主人公の姿を自分に照らし合わせ、感じたことを言語化し、発表してほしいと願って授業を進めました。論理的思考力や表現力を高めるうえで、国語の授業においてもICTツールは有効だと感じています。
(この記事は『私立中高進学通信2023年8月号』に掲載しました。)
藤村女子中学校
〒180-8505 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-16-3
TEL:0422-22-1266
進学通信掲載情報
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