私立中高進学通信
2023年特別号
News&Topics
明治大学付属明治中学校
高大連携講座
明治大学全学部の教員が直接高校生に指導する『高大連携講座』の一コマ。
この日、E組で教壇に立つのは同校卒業生でもあり、国際日本学部の学部長を務める鈴木賢志教授です。
明治大学直系付属校ならではの密接な高大連携体制によって行われる『高大連携講座』を取材。各学部への進学を見据えたきめ細かな進路指導など、特色ある教育と同校の魅力に迫ります。
高1から高3にかけて
大学進学後を見据えた
学びを深める
1912年に旧制明治中学校として設立され、明治大学が開校した唯一の直系付属校である同校は、高大接続教育の実践の場として、恵まれた学習環境が整っています。2022年度新入生から導入された新カリキュラムでは、探究活動にも力を入れながら、大学進学に向けた高大連携教育が段階的にプログラムされています。高1で明治大学全学部の学部長による学部説明会と、明治大学理系学部の施設見学会を行う「特別進学指導講座」、高2前期と高3後期で大学教員が高校生を直接指導する「高大連携講座」、高3では希望者に向けて放課後に明治大学のキャンパスで大学の授業を受講する「プレカレッジプログラム」があります。さらに、長期休みを利用して資格取得やプログラミングなどを学ぶ「高大連携セミナー」や、社会人卒業生などによる「キャリアクエスト講座」など、学年を問わず参加できるものもあり、その内容は実に多彩です。
「本校には恵まれた推薦制度があり、毎年ほとんどの生徒が自分の希望に沿った明治大学の学部に進学しています。そのため、進路指導で特に重視しているのは、高校生のうちにそれぞれの将来に適した学部・学科を見つけられるようにすることです。明治大学には10学部28学科があり、『自分の夢や目標は、どの学部・学科へ行けば実現できるのか』を明確にできるようプログラムを展開しています。大学進学の先を見据えた真の進路選択ができるようにすることが肝心です。
まず、高1の『特別進学指導講座』では、学部長から直接大学の様子を聞くことで明治大学について知り、高2から高3にかけて徐々に専門分野についての内容にも踏み込んでいき、大学進学に向けた準備をしていきます。また、各界で活躍する多彩な卒業生たちが『キャリアクエスト講座』などの機会を通じて協力してくれていることも本校の強みです。高校の学級担任や教科担当はもちろん、大学とOB・OGも一体となり生徒の進路決定をサポートしています」(広報主任/河村弘祐先生)
長期休み中の短期集中講座
『高大連携セミナー』
高大連携セミナーは、夏休みなどの長期休みや高3の3学期に開講される短期集中講座です。主に明治大学の施設を使い、模擬裁判、英語力向上、理科実験、プログラミング、簿記資格の取得など、高校の授業とは一味違った学びに取り組みます。
高校生として大学で学ぶ
『プレカレッジプログラム』
オンライン受講も好評
プレカレッジプログラムは高3の希望者を対象とし、放課後に明治大学の一部授業を受講し、修得した単位が大学入学後に明治大学の学部単位として認定される制度。大学進学後のカリキュラム選択の指標としたり、大学進学後のキャリアにつなげたりすることができます。大学のキャンパスで現役大学生と一緒に学べることも大きな魅力ですが、ここ数年はコロナ禍の影響でオンライン受講が可能な授業もあり、受講者数が増加しているそうです。
明治大学全学部の教員が
直接高校生に指導する
『高大連携講座』
キャリア教育の一環として、さまざまな高大連携教育プログラムを実践する同校。そのなかで今回取材したのは、高2生全員が受講する「総合的な探究の時間」として設置されている『高大連携講座』です。
「2022年度までの高大連携講座では、明治大学の教員が高2生に対して年間を通して毎週水曜日5・6時間目に正課の授業として行っていました。明治大学10学部すべての学部紹介をメインに、各学部の専門教育の内容にも踏み込んだ講座です。2023年度からは高2前期と高3後期に分割され、高3後期には進学を予定する学部ごとに、より専門性の高い先取り授業を展開していきます」
高2で明治大学全10学部の授業を受講するのは、広く学問に触れることで視野を広げ、適切な進路選択につなげていくためです。「自分は文系あるいは理系だと思っていたが、高大連携講座をきっかけに新しい分野に興味をもつようになったり、これまでは自分の将来に無関係だと思っていた学問も必要だとわかり、勉強への意識が変わったり」というケースも少なくないと言います。
「自分の得意・不得意や、文系・理系といった思い込みで学部・学科を選んでしまうと、進路選択のミスマッチを招くだけではなく、生徒一人ひとりの可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。高大連携講座は広い視野で自分の適性を明確にしていくことができるため、生徒が自らの進路選択に自信をもてるようになり、学びのモチベーションを高めていくことにもつながります」
高大連携講座には自らの進路を明確にすることはもちろん、各学部のスペシャリストによる直接指導を通して、多様な専門分野に触れるという側面もあります。大学では各分野の専門的な視点で課題解決の手法を学ぶことになりますが、高度に複雑化した現代社会においては、あらゆる分野の知識を統合して課題解決を図ることが求められています。このような時代にあって、高大連携講座は自分の専門とする分野以外の学問について広く知る機会としても、有意義なカリキュラムであると言えます。
「高大連携講座は生徒たちにとって未知の分野であったり、進路選択に直結する内容ではなかったりすることもありますが、『自分には関係ないから』という姿勢の生徒はほとんどいません。多くがさまざまな学問に触れることを肯定的に捉え、楽しみながら受講してくれています。教授陣からも、『意欲的に学んでくれ、学生からは聞かれないような新鮮な質問を受けることもあり、やりがいを感じている』といった声が届いています」
高2「高大連携講座」の授業イメージ
2022年度までは、高大連携講座は高校2年生で週1日5・6時間目に年間を通して設定されており、高2生徒全員が明治大学10学部の授業を2度ずつ受講しました。下の表は、その時の授業の一例です。2023年度からは、高2前期と高3後期に分かれたため、高2前期では10学部の授業を1度ずつ受講し、高3後期では進学を希望する学部の授業を集中的に受講します。
回 | 日 | 学部 | 講義テーマ |
---|---|---|---|
1 | 4月13日 | 農 | 5限:花は文化のバロメーター 6限:植物生産の歴史 |
2 | 4月27日 | 理工 | 脳の機能を計算する最新技術 |
3 | 5月11日 | 文 | ドイツ語とドイツ文化 |
4 | 5月18日 | 政治経済 | 日本語から入る政治学 |
5 | 6月1日 | 商 | 会計から見た企業の強さ |
6 | 6月8日 | 法 | 裁判員制度: 高校生のあなたも間もなく呼び出されるかも! |
7 | 6月15日 | 総合数理 | ゲームの世界から現実へ―ロボットの学習― |
8 | 6月22日 | 国際日本 | 「幸せな国々」北欧の社会システム |
9 | 6月29日 | 情報コミュニケーション | メルヘンとは何か |
10 | 9月21日 | 経営 | 明治大学経営学部のすすめ |
11 | 9月28日 | 農 | 5限:小さなRNAでがんを見つける 6限:食糧環境政策学とは何か? |
12 | 10月5日 | 理工 | 雪や氷の物理 |
13 | 10月12日 | 文 | パリの描き方―社会・文化地理学から都市を見る |
14 | 10月26日 | 政治経済 | 経済学と道徳―アダム・スミスを手がかりとして |
15 | 11月2日 | 商 | 金融とは何か―その役割 |
16 | 11月16日 | 法 | 交渉と合意:ウィン・ウィンを目指そう! |
17 | 11月30日 | 総合数理 | 現象を数理する |
18 | 12月7日 | 国際日本 | 自動運転技術の発展と日本の取り組み |
19 | 1月11日 | 情報コミュニケーション | 「情報社会」を「経済学」で考える |
20 | 1月18日 | 経営 | 企業の現状を知る |
基礎・基本を大切に
大学での学びにつながる
本質的な学力を強化
明治大学への進学にあたり、密接な高大連携体制による充実したキャリア教育プログラムを実践する一方で、同校では教科指導においても卒業後を見据えた学力の養成に力を入れています。中学からの6年間を通して身につける学力を「単なる知識の量や問題を解くテクニックではなく、問いを分析し考える力、物事の本質を見抜く力、それを他者に表現する力」とし、その土台となる基礎・基本の完成を図るため、週6日制で授業時間を確保し、中学・高校の正課科目の多くを必修とする独自のカリキュラムを導入。明治大学への進学には高校3年間で英検2級・TOEIC450点以上を含む学習成績で、一定の基準を満たすことが求められます。
「本校では、高校2年次終了まで文系・理系に分けることなく、どの生徒もまんべんなく多様な科目を学びます。高校3年間の学習成績も推薦に影響するため、定期テストの1回1回にも手を抜かず、確実に基礎学力を強化していくのです。
高校での学びの集大成の一つとして取り組むのが、新カリキュラムで設置される「探究選択」です。生徒は各教科で開講する13講座の中から自分の興味に合わせて対象分野を選択し、それまで培った基礎学力をもとに探究的・発展的な学びを深めることで、大学における高度な学びにつなげていきます」
学校行事や班・部活動を通じて
「質実剛健」「独立自治」
の精神を養う
同校では、大学受験がないことで生まれる自由な時間を活かして、大学や社会を見据えた学び、そして自分のキャリアと向き合うことにじっくりと時間をかけて取り組むことができます。日々の学校生活では、学校行事や班・部活動などを通して、校訓である「質実剛健」「独立自治」の精神を養うことを大切にしています。
「高3生も大学受験に追い立てられることがないので、文化祭などの学校行事を存分に楽しんだり、部活動に全力投球したりすることができます。高3生がこんなに楽しそうに、イキイキと充実した生活を送っている学校は、そう多くはないかもしれませんね。本校の校長がよく『競争する必要はない。生徒同士が協力し、切磋琢磨しながら成長して、皆で明治大学へ行ってほしい』と言うように、ゆとりある環境のもと『大学入試で点数を取るための力』ではなく、社会の一員として集団のなかで活躍するための社会性や精神力を育んでほしいと願っています。生徒がお互いに助け合い、協力し合って健やかに成長していく校風は、本校の誇る伝統の一つです」
長い歴史のなかでめざましい活躍をする卒業生を輩出してきた同校。根底には脈々と続く「質実剛健」「独立自治」があり、そこには鵜澤聡明初代校長が生徒に語りかけた「第一級の人物としての資質をもち、健やかに育ち、社会のリーダになってほしい」という願いが込められていると言います。いつの時代においても求められる「第一級の人物」を育成する学校として、これからも存在感を放つことでしょう。
授業Report!
水曜日の5限・6限に明治大学各学部の教員が集結。A組からG組まで7クラスある高2の各教室で、オリジナルの授業が展開されます。
法学部の授業では実際に交渉をするワークショップ形式の授業を展開
この記事は『私立中高進学通信』2022年12月号に掲載した記事を、一部再編集したものです。
明治大学付属明治中学校
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TEL:042-444-9100
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