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私立中高進学通信

2021年特別号

実践報告 私学の授業

東京電機大学中学校

理科教育、情報教育、探究学習で
「人間らしく生きる」

情報の授業。3部屋のコンピュータ室に100台以上のパソコンが設置されています。

情報の授業。3部屋のコンピュータ室に100台以上のパソコンが設置されています。

「人間らしく生きる」を校訓とする同校では、理科教育と情報教育という2本の柱に加え、2021年度から中学に「探究」の教科を設定しました。2021年4月から校長に就任した平川吉治先生に、同校の学びについてお聞きしました。

体験を重んじる理科教育、意思を伝えるための情報教育

 100年以上にわたって科学技術を根幹に置いた人間教育を標榜する東京電機大学の系列校である同校は、理系の進路をめざす生徒が多く、そのための基礎学力をつけ、社会的なものの見方を育む教育を実践しています。そんな同校の教育の特色を表しているものが理科教育と情報教育です。

 理科教育では、実験や観察を体験することを通して理科のおもしろさを学びます。「見て・触って・やってみる」を重んじ、5つある理科教室を活用して、中1から高2の間に100種類以上の実験・観察を行います。生徒は各自の「実験BOX」を持ち、手作りの道具や実験に使う試料などをしまっています。実際に体験した実験・観察の結果をもとにレポート化作業をすることで、論理的な思考力、表現力が身につきます。

 一方、情報教育では、単にアプリケーションを使いこなすだけにとどまらず、「何を伝えるか、何を実現させたいか」を考え、そのための想像力、表現力を伸ばします。中学3年間で毎週1時間、情報の授業がコンピュータ室で行われます。生徒たちは100台以上あるパソコンを利用して、自分の意思を的確に伝えるためのスキルを会得します。また、一人1台のタブレット端末を持ち、主体的に考える授業に取り組んでいます。

人生のメニューに書き込むために…

 基本的な教育理念について、新校長の平川先生は、次のように語ります。

「中高での学びは、それをもとにして将来何をめざすかを考えるためのものだと思います。生徒にもよく言いますが、ファミリーレストランで何かを頼むときは、メニューを見ますよね。将来のことを考える際にも、社会のことを知らなければ、ファミレスでメニューがないのと同じように、決めることができません。生徒たちに見えているものは一部にすぎないのです。さまざまなことを体験するなかで、やりたいことを選んでいってほしいと思います。人生のメニューにたくさん料理を書き込めるように経験を積んでほしいのです。

 実際の社会では、思い通りにならないことがたくさんあります。そのときに、強引に進むのか、引き返すのか、立ち止まって様子を見るのか、そこに正解はないでしょう。しかし、自分がなぜそうするのか、説明して行動できるようになってほしいですね。

 理科教育も情報教育も、何かをめざすために学ぶのではなく、本校の生徒の標準として、あたりまえに身につけさせたいと思います。

 また、国際化が進む今、理系だから英語は必要ないということはありません。特別なものと思わず、英語を使って意思を伝えられることがあたりまえと思うような生徒を育成したいですね」

探究力・課題解決能力の育成をめざす探究学習

 このような思いのもとに、中学の教育課程に新しく「探究」を設定しました。中学3年間、週1時間の授業が行われます。これまで年間10回程度の特別活動として行われてきた探究型プログラム「TDU 4D-Lab」を発展させたものです。「探究」の学習目標は、課題認識→調査→分析・思考→まとめ・表現→新たな課題認識というサイクルをたどりながら、「チャレンジ精神旺盛な自立した人間」に求められる探究力・課題解決能力を育成することです。

「現在多くの学校で『探究』がキーワードになっていますが、実は昔から行われていたことです。ものごとをいろいろな角度から見て自分で判断できるようになること。人間は視野がせまく、見えているものだけを真実だと思いがちですが、世界には価値観の異なる人が多く、そのような人たちと話し合って相手の意見を理解することが必要です。それができる力をつけてほしいと思っています」

 中学の「探究」では、課題設定が重要です。たとえば、釘とねじを見せて、「課題を設定してみよう」と呼びかけます。しかし、それだけではなかなか発想できません。課題設定のためには、「いつ」「どこで」「どのように」などのワードを用いると考えやすくなります。「釘はいつつくられたか、ねじはどうか」「ねじの頭にプラスとマイナスがあるのはなぜか」「釘とねじはどのように使い分けられているのか」など、多くの課題が浮かんでくるのです。こうした訓練をすることで、学校で廊下を歩いているときに「この廊下はなぜこの長さなのか」、街を歩いているときに「なぜあのマンションは4階建てなのか」など、生徒たちは日常的に課題設定をするようになります。こうしたことが将来の興味・関心につながり、専門的な課題を見いだせるようになるのです。

「設定した課題について、調べたり考えたりしてまとめていく過程で、ほかの生徒の意見も聞いて違う角度からの疑問をもつことや、異なる価値観に出会うこともあるでしょう。ほかの生徒の発表を聞いて刺激を受けることもあるはずです。そうしたことも含めて探究学習の完成と言えるでしょう。現在の中1生が高校生になる3年後には、高校にも『探究』を導入する予定です。中学から高校へうまくつなげていきたいですね」

新校長より
他人を尊重し、異なるものの見方を否定しない
新校長の平川吉治先生。1987年以来、長年にわたって同校で現代文を教えてこられました。進路指導部長、高等学校教頭を経て、2021年度から学校長に就任されました。新校長の平川吉治先生。1987年以来、長年にわたって同校で現代文を教えてこられました。進路指導部長、高等学校教頭を経て、2021年度から学校長に就任されました。

 子どもたちにとって、学校は安心できる場でなければなりません。大人である私たちは、生徒たちに「安心」を提供する立場です。生徒にとって最もかかわりが深いのはクラスメートでしょう。そのため、他者を尊重するように、異なるものの見方を否定しないようにと、生徒たちに話しています。

 受験を経て入学してきた生徒たちは順位にこだわりがちですが、学校ではそうでなくてよいのです。自分の好きなことを周囲に言えて、周囲もそれを尊重する。好きなことにのびのびと打ち込んで、他人を尊重できる穏やかで優しい子に、ぜひ本校をめざしてほしいですね。

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