私立中高進学通信
2021年特別号
実践報告 私学の授業
東洋英和女学院中学部
「敬神奉仕」の精神を胸に、
ICTを活用した生徒会活動を
オンライン授業を通して培ったノウハウを導入

生徒会で制作した『SDGsマスク』のポスターの前にて。
左から、中高部情報システム課の高橋希穂先生(数学科)、
クラブ運営委員長の江崎梨帆さん(高2)、
生徒会長の金山凛子さん(高2)
SDGsの認知度を高め貢献できる活動を全国へ
「毎朝、オンラインで行われるホームルームでは、担任の先生やクラスメートと顔を合わせて一緒に礼拝の時間を持てました。そのため、心を落ち着かせてから1日を始めることができました」
と振り返るのは、昨年、生徒会の副会長だった金山凛子さん(高2)です。金山さんはこの春から生徒会長を務めています。
2020年、新型コロナウイルスの影響によって、同校は4月から6月まで休校となりました。その期間中、教員たちは動画配信やアプリを使った授業で対応、生徒はそれぞれのChromebookで、この授業を受けていました。そしてそれは⽣徒たちの新たな動きへとつながります。会長などの生徒会役員や各委員会の代表で組織される評議会が中心となり、生徒会活動にも導入していったのです。生徒会役員の立会演説会から投票、生徒総会までをオンラインで行いました。
「今年5月の生徒総会は、大講堂から各教室のモニターにオンラインで中継して行いました。大講堂に私たち評議会のメンバーが集まって、各教室のモニターの前にいる生徒たちに語りかけたのです。
私が生徒会長に就任する際、公約に掲げたのは、SDGsの認知度を高め、その目標達成に貢献できる活動を全国の学校に広げていくことでした。そのための具体策である『SDGsマスク』や、今年の楓祭(文化祭)のテーマなどを全校生徒に向けてプレゼンしました」
『敬神奉仕』はキリスト教教育に基づく同校の建学の精神で、神様を敬い、人を愛する精神を表しています。
「英和生の一人ひとりがこの精神で協力してくれた結果、『SDGsマスク』では、想像していた以上の成果と反響がありました。」
各クラブの予算作成から新入生のクラブ登録まで
一方、この春からクラブ運営委員長に就任した江崎梨帆さん(高2)は次のように語ります。
「本校はハンドベル部や合唱部や音楽部といったステージ系のクラブ活動が盛んです。こうしたクラブ活動に打ち込んでいる友人から予算の配分などがうまくいっていないと聞き、ICTを使って解決できたらと思って立候補しました。
私はまず各クラブの予算を表計算ソフトで作成し、各部長と共有しながら希望などをヒアリングしました。クラブ運営委員会でも各部の部長とChromebookを用い、情報を共有した上で話し合うようにしました。その結果、以前より活発に意見交換ができるようになりました」
また、新入生のクラブ登録もオンラインで行い、ペーパーレスを進めたそうです。
「私たちはこうした活動を通して、多くの人たちに支えられていることに改めて気づかされました。今は、これまで以上に感謝の気持ちを持って毎日を過ごさなければならないと思っています」(金山さん)
オンライン授業
生徒の心に届くオンライン授業を実践
高橋先生は、同校の卒業生です。中高部情報システム課の一員としてICT教育の推進を担っています。
「私が中学部に入学した頃にはすでに教員が一人一台PCを持ち、成績処理などしていたようです。ITや新しいモノへの関心が高い集団だったのでしょう。本校は生徒同様に教員もチャレンジ精神にあふれています。そのため、休校期間中、どうすれば生徒の心に届くオンライン授業ができるか創意工夫を重ねていきました」
クラブ運営委員長の江崎さんは、オンライン授業を次のように振り返ります。
「日本史なら、先生がさまざまな資料を画面上に出してくださり、普段の授業と変わりなく理解できました。質問があれば答えてくださるなどマンツーマンの指導もしていただき、生活のリズムを崩さずに自宅で勉強に励むことができました」
現在もコロナの感染防止対策として、ホームルームから保護者会までICTが学校生活のあらゆる場面で活用されています。


生徒の発想力や行動力をさらに活かしたい

教員以上に生徒はICT 機器の操作に長けていたため、休校期間が始まると、すぐにオンライン授業に慣れ親しんでくれました。しかも、生徒は私たち教員が考えもしない柔軟な発想力を持っていたのです。失敗を恐れずに突き進んでいく生徒の行動力にも圧倒されました。こうした生徒の力をさらに活かせるように私たち教員も研鑽していきたいと思っています。
ICTを活用した生徒会活動
マスクにシールを貼り、SDGsの17の目標達成に貢献
会長の金山さんのリーダーシップのもと、生徒会で作成したのが、『東洋英和マスコットシール』とマスクに 貼るSDGsロゴマークのシールです。
「マスクにこのロゴマークのシールを貼るというひと工夫で、SDGsの認知促進と、17すべての目標達成に貢献できます。ロゴマークとマスコットどちらのシールもバナナペーパーという紙でできています。この紙の原料は、アフリカのザンビアで、バナナの収穫ごとに廃棄される茎の繊維などです。このシールを買うことで、ザンビアの人たちの雇用を生み出すとともに環境を守ることにつながるのです。このシールはChromebookから注文でき、約740セットを売り上げました。そして『東洋英和マスコットシール』の収益金の一部は、コロナワクチンが途上国の人々に行き渡るようにユニセフを通じて寄付されます」(金山さん)
また、今年の楓祭でもICTを活用した企画が行われます。そのひとつが『おうちde英和生と話そう』です。
「昨年の楓祭は英和生のみで開催されました。そこで考え出されたのが、この企画です。今年も中学受験生のみなさんにオンラインで学校の様子をお話しすることができます」(江崎さん)



(江崎さん)

英和生の諦めない心が結実した楓祭

金山凛子さん(高2)
2020年度の楓祭では、各部や各委員会が独自のガイドラインを用意し、広報委員会がChromebookで在校生向けと外部向けの2つの楓祭用のホームページを作成しました。困難な状況にあっても諦めない英和生の精神によって誕生した結晶が、昨年の楓祭だったと誇りに感じています。この経験を糧にして、今年は昨年以上に生徒や外部の方たちが楽しめる楓祭を学校全体で創り上げていくことが目標です。
英和生により充実した学校生活を

江崎梨帆さん(高2)
これまでは各クラブの部長が他の評議会のメンバーに対して意見を述べづらい状況があったと思います。しかし、Chromebookを用い意見を共有するという新しい挑戦によって、改善したい点などを伝えやすい環境が生まれました。英和生は全員がクラブに入部します。私は各部長の希望をかなえられるように努め、英和生がより充実した学校生活を送れるように力を尽くしていきたいと思っています。
東洋英和女学院中学部
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