私立中高進学通信
2020年神奈川版
コロナに負けない!私学のアクション
山手学院中学校
オンラインを上手に活用
校長発信の課題に多くの生徒が参加

Googleカレンダーで各学年の時間割を生徒と共有。
その日に学習すべき教科が確認でき、各イベントをクリックすると、教科の課題や授業動画へのリンクが掲載されています。
オンライン学習のすべての情報がここに集約されているので、集中して学習に取り組めます。
誰も取り残さないために
休校中も細かにフォロー
国際交流に力を入れる学校として認知度を得ている同校。『世界を舞台に活躍でき、世界に信頼される人間を育成する』を教育理念に掲げ、自らに誇りをもち、他者の誇りと自由を尊重する姿勢を育てる教育を行ってきました。コロナ禍の学校生活の組み立てにも、この生徒が自由に思考できるような取り組みが見られました。
5月のゴールデンウィーク明けから、本格的なオンラインでの授業をスタート。コロナ禍になる以前から同校ではICT教育に力を入れ、「G Suite for Education Google」(※1)を活用。「Google Classroom」(※2)での課題配信や「Google Meet」(※3)を使った双方向授業などを行い、全教室にプロジェクターを完備し、全教員がiPadを使って授業を行っていました。
そうしたノウハウをさらに休校中の学びに活かそうと、教員がプロジェクトチームを発足。学習から「誰も取り残さない」を目標に、生徒たちの学びの継続に必要な手立てを考えていきました。
まずは生徒とのコミュニケーションの一歩として「Google Meet」を使った朝のホームルームを実施。まだ顔を合わせたことのない中1のクラスでは、毎朝5名ずつビデオをオンにして顔を見せるようにしていきました。
「顔出しを嫌がる生徒もいるだろうと考えてこの方法を取りました。顔出しをした5名にクイズや質問を投げかける流れがルーティン化したためか、全員の紹介が終わる頃には、生徒たちは皆、顔出しを嫌がらなくなりました」
と、中1のクラスを担任する渡辺大輝先生は話します。ホームルーム後は、時間割に沿って授業動画を配信したり、「Google Meet」を使った双方向型授業を行ったりと、教科や単元に合わせたオンライン学習を行っていました。
「普段の授業では、生徒の表情や反応から、集中度を判断して授業を進めています。ですが、オンラインではそうはいきません。授業は生もの、対面でしかできないこともあると実感しました」
※1 G Suite for Education Google…Googleが教育機関向けに作った「G Suite for Education Google」が教育機関向けに作ったGoogleアプリセットのアプリセット。
※2 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
※3 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。「Googleカレンダー」やGoogleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
オンラインがつなぐ校長と生徒の交流
授業動画の配信と双方向型の2つを組み合わせて授業を行うなど、さまざまな工夫を凝らし、「Googleフォーム」(※4)を取り入れて授業の振り返りも行いました。課題などでわからないことが出てきた時には、すぐに教員に質問できるようにと、オンライン上に質問室を設置。多くの生徒が有効活用していたと言います。
なかでも渡辺先生が驚いたのが、校長とのやりとりです。休校中、校長の時乗洋昭先生はホームページを通じて生徒に呼び掛け、オックスフォード大学の入試問題「過去に戻れるとしたらいつにしますか。また、それはなぜですか?」など、毎回生徒たちの思考と想像をかき立てる課題を発信し続けていました。
課題は強制ではなく自由参加でしたが、多くの生徒が校長宛に回答を寄せたのです。
「オンライン上に質問室とは別に『校長の部屋』を作ったところ、生徒からはレポートや動画など、さまざまなものが寄せられました。それぞれの回答に対し、時乗先生自らがていねいにコメントを返すなど、オンラインならではの交流が生まれていました」
6月から全校登校が開始され、7月からは部活動もはじまりました。「今後もオンラインの良い部分は残しつつ、学校に登校することでしか得られないものがあることが、より明確になりました。秋以降の対面の授業では今まで以上にそうした部分に力を入れてやっていきたいと思います」
※4 Googleフォーム…簡単にアンケートを作成、集計、グラフ分析できるGoogleのWebサービス。
コロナ対策事例1
生徒からのフィードバックを大切に
一方通行にならないオンライン学習
中学では学年ごとに時間割を決め、各授業ごとに課題と解説動画を配信。これらはすべて「Googleカレンダー」(右ページ画像参照)からアクセスできます。「Google Classroom」を通して、課題提出させることで学びの定着がなされているかを見守りました。
生徒からの提出物には教員が必ずフィードバックをつけて返信。理解が足りないと思われる生徒には、見直すポイントなどをていねいに指導していました。また、「Googleフォーム」を使ってこまめにアンケートを取り、授業のやり方や理解度などを確認しました。課題や授業動画への感想も聞き取り、互いの思いが届き合うよう、双方向のやりとりをきめ細かく行っていました。
わからないことがあれば、授業時間内に「Google Meet」で教員に質問できる授業も。また、いつでも質問できるよう、教員のメールアドレスを提示するなど、双方向のやりとりを行っています。

授業解説用のスライドに教員が書き込みを入れながら、音声で解説するスタイルの授業動画 で、基礎的な学習を配信。

演習などは黒板やホワイトボードを使った授業スタイルでの動画配信も行っています。

1週間の学習を振り返り、アンケートを実施。教員が作成した授業動画についても、わかりやすかったかどうかを生徒に聞くなど、フィードバックを得るようにしています。質問を書く欄も設け、わからないことを残さないように努めました。

英語では、教員は好きなものについて写真をコメントを送る課題を出し、生徒は写真に英文を付けて提出。教員はそれぞれに感想や英文へのアドバイスのコメントを送りました。
コロナ対策事例2
新入生を気遣い、心のこもった動画を配信
毎朝の「Google Meet」を使ったオンラインホームルームは、生徒たちが規則正しい生活を送るのに一役買いました。オンラインではありますが、登校するのと同じ感覚でクラスごとに集まることができるため、勉強へのモチベーションも高まります。一度も登校することなく休校期間に入った新中1生にとっても、生活を整える大事な習慣となりました。
音楽の授業動画では、新中1生に向けて、広い校内を音楽室へ移動する道順を映像で紹介。また、1日のすべての学習を終えた後、軽く運動しながら教員の顔を覚えてもらおうと作った教員たちによる「終礼体操」の動画も、中1生に安心感を与える役割を果たしていました。


コロナ対策事例3
オンラインだからできた
YouTubeライブ配信の卒業生トーク
自粛期間中は、通常通りの学校説明会ができなかったため、卒業生を交えての座談会を、YouTubeライブ配信で実施しました。卒業生と担任の教員とが学校生活や思い出に残る行事、大学受験をどう乗り切ったかなどを語り合い、多くの視聴者を集める結果となりました。こちらの動画は現在もYouTubeチャンネル「山手学院中学校・高等学校【学校紹介】」にて、見ることができます。また、秋からはじまる学校説明会は今のところ予約制となる予定とのことです。
「多くの皆さんに学校の様子を知っていただけるよう、学校ホームページやYouTubeやFacebookなどで発信をしています。10月11月に行っている入試説明会も入場者を制限しての開催となるため、オンラインとの併用を考えています。
入試や学校説明会などの情報については、Twitter(アカウント名「山手学院中学校・高等学校【入試情報】」)や学校ホームページに掲載していきます」(渡辺先生)


(この記事は『私立中高進学通信2020年神奈川版』に掲載しました。)
山手学院中学校
〒247-0013 神奈川県横浜市栄区上郷町460
TEL:045-891-2111
進学通信掲載情報

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