私立中高進学通信
2020年神奈川版
コロナに負けない!私学のアクション
東海大学付属相模高等学校中等部
ICTによって休校中も
生徒は教員と心を通わせ
規則正しい生活を守る

数学のオンライン授業の様子。教員たちが個性を発揮して、質の高い動画を創り上げました。
勉強が遅れがちな生徒に
動画を配信してサポート
こだわりポイント
- 早期からICTのスキルを
身につけさせる - プレゼンテーション能力や
表現力を育む - 教員が生徒の理解度や状況を
常に把握する
同校の併設校である東海大学は19学部75学科専攻・課程の総合大学です。毎年約80%以上の生徒が同校からこの東海大学に内部推薦によって進学。大学受験に縛られない教育環境の中で、生徒は個性と人間性を豊かに育んでいます。
そんな同校の特色のひとつが、基礎学力とともに「生きる力」を育むカリキュラムです。2017年からICTを導入。現在では中1から高2まで全員がiPadを授業や行事で活用しています。中等部副校長の森公法先生に話を聞きました。
「ICTツールを自由に使いこなす力が、ネットリテラシーとともに不可欠な時代となりました。今の子どもが大人になった時には、さらにその傾向が強くなるでしょう。そこで、早期からこうしたスキルを身につけさせようと、東海大学の学園全体でICT教育を推進していました。こうした中、本校はiPadを導入し積極的に教育のICT化を進めてきたのです。
現在、教室には電子黒板の機能を持った単焦点プロジェクターがあり、様々なアプリを入れたiPadとともに有効活用しています。
たとえば、数学の授業では生徒にiPad上で問題を解かせています。教員は生徒が正解をきちんと書けているかどうか、教員のiPadから生徒全員の画面を見ることができます。そのため、一人ひとりの理解度をすばやく把握でき、解答が進んでいない生徒には声をかけて、助言を与えることができます。
他の教科では、意見を書かせることも多く、ユニークな視点から意見を述べた生徒などには、そのiPadの画面をプロジェクターで映し、みんなの前で発表してもらいます。
また、勉強が遅れがちな生徒に対しては、教員が作成した動画を共通のドライブに保存し、生徒が自宅でそれを見ながら復習できるようにしている教科もあります」
オンライン授業では
体育や美術の実技教科も
また、森先生が担当する中1の「総合」の授業では、iPadで調べ学習をし、その成果をまとめて生徒の前で発表。表現力やプレゼンテーション能力を養っています。こうして生徒や教員が培ってきた力が、新型コロナウイルスの影響による休校時に大きく役立ちました。
「6月1日から時間差を設けた分散登校を行い、6月11日からは授業を本格的に再開しました。それまでは休校にし、月曜から金曜まで毎日、オンライン授業を行っていました」
生徒はオンラインによる、朝のホームルームに参加。一年生は制服に着替えて参加していました。その後、オンライン授業を受けます。終わると課題やICT教材の『すらら』で授業を復習しました。またiPadに一日の学習目安と学習目標を入力。学習目安には「1時間半」などの勉強時間を、学習目標には「理科の勉強をしっかりやる」などのコメントを書き込むのです。このような記録と合わせ、『すらら』を使った自宅学習の進捗状況を担任が自分のiPadで確認します。
「担任は朝のホームル―ムの後、これらのデータと生徒の顔を見ながら、オンライン面接を行いました。目標が達成できたかどうか聞いたり、勉強のアドバイスをしたり、励ましたりして、生徒と心を通わせるようにしたのです」
オンライン授業は1日4時間。午前中が3時間で、午後が1時間です。5教科だけでなく、体育や美術などの実技の授業も行ったそうです。体育ではリズムダンスなどを教えたといいます。動画は教員たちが議論を重ねて、生徒がわかりやすい内容や表現にするよう、アイデアを共有して作成したそうです。
「休校中、教員たちの連携がさらに強まるとともに、生徒は学校で教員やクラスの仲間たちと学ぶことの尊さに改めて気づいたようです」
コロナ対策事例
担任が一人ひとりの健康状態を毎朝チェック
休校中、生徒は自宅学習の状況とともに、体調や睡眠時間、起床後や就寝前の体温をタブレットに入力していました。コロナから生徒を守るために、担任の教員はこれらを見て、一人ひとりの健康状態を把握するように努めたのです。
休校中の朝のオンラインホームルームは、生徒の規則正しい生活の維持に貢献しました。朝早く起き、iPadと向き合い、他の生徒とオンライン上で顔を合わせることで、生徒は生活のリズムを整えることができたのです。この取り組みは保護者から評価された、と森公法先生は語ります。体調が悪い生徒には担任が電話をして声かけをしたそうです。
授業が再開された現在も、自宅学習の状況と合わせて、この体調管理のための入力が続けられています。生徒は登校前にも体温を測り、もし、平熱よりも高かったり、体調が悪かったりした場合は学校を休みます。


ICT推進事例
自己評価をして反省点を
次回に活かせる力も育む
中1の「総合」の授業は、週2時間あります。1時間は森先生が教えるプレゼンテーションやコミュニケーションの力などを育む授業。もう1時間はプログラミングを学ぶ授業です。どちらもiPadを活用します。森先生の授業では、自分が住んでいる街についてインターネットで調べたり、気になったニュースを文章にまとめたりして発表。同時に生きる力も育みます。
「たとえば、生徒に『春休みにきちんと勉強しましたか?』と聞くと手があがりますが、『では、その勉強を振り返って、どの点が良くて、どの点が悪かったかを考えた人はいますか?』と聞くとほとんどあがりません。iPadを使って学習計画を立て、それが達成できたかどうか自己評価できる力も『総合』の授業で養いたいと思っています。反省を次に活かせるからです」(森先生)


先生から一言
教室から外に出て学べる日が早く来るように願っています

「新入生にiPadを渡すと、生徒同士で操作を教え合う姿が見られます。まだ、お互いを知らない新入生がiPadの操作をきっかけに会話が弾み、打ち解けてくるのです。
こうして距離を縮めた新入生は、本来なら4月にiPadを手にして『錬成旅行』に行くはずでした。東海大学の建学の地である静岡県を訪れる、毎年恒例の旅行です。生徒は調査船の望星丸に乗り込んでiPadで写真を撮ったり、感じたことを書き込んだりします。早くコロナが収束し、行事も再開して、iPadを教室や自宅の外で活かせる日が来ることを願っています」(森公法先生)
(この記事は『私立中高進学通信2020年神奈川版』に掲載しました。)
東海大学付属相模高等学校中等部
〒252-0395 神奈川県相模原市南区相南3-33-1
TEL:042-742-1251
進学通信掲載情報

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