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私立中高進学通信

2020年神奈川版

コロナに負けない!私学のアクション

横浜隼人中学校

緊急時だからこそ
労力を惜しまず一人ひとりに語りかける

安全と健康を第一に
心の込もった対応を
生徒一人ひとりと会話を交わすオンラインホームルーム。対面で話すことで不安を解消します。生徒一人ひとりと会話を交わすオンラインホームルーム。対面で話すことで不安を解消します。

 新型コロナウイルスの感染防止のために、多くの学校が休校となり、卒業式や入学式が中止されるなどの影響が広がりました。吉野純三校長は当時の様子を次のように振り返ります。

「本校では休校措置をとる前日の3月1日を高校生の卒業式としていました。中学生は本校の高等学校に進学することもあり、生徒の安全と健康を第一に考え、仕方なく中止としました。高校の卒業式は大きな節目となるものです。なんとしても執り行いたいと考え、万全の対策をして敢行しました。保護者の方の同席ができないなど、制約がある中でも、本校を巣立っていく卒業生を温かく送り出すことができたと思います。
 入学式は予定していた4月7日の前日まで準備を進めていましたが、緊急事態宣言発令に関する報道を受け、やむを得ず、中学・高校ともに延期することとしました。
 新たな希望を胸にスタートを切る新入生にとって重要な式典ですので、入学式は中止とせず、学校が再開できた6月1日に始業式を、3日に午前は中学生、午後は高校生の入学式を行いました。
 入学式は中学生のみ保護者同伴で登校、三密を避けるために1クラスを3つに分け、各教室に設置した大型テレビを利用し、内容も短縮して行いました。入学式を終えてすぐに通常の学校生活スタートという訳にはいきませんが、心の込もった式典ができ、新入生も保護者の方も、ようやく本校の一員として気持ちを新たにできたのではないかと思います」(吉野校長)

 
生徒との心の交流を絶やさない

 延長が続き約3カ月間に渡った休校期間の対応について、三浦弘晶先生は次のように話します。

「学習に関しては、3月〜4月は春休みの課題に取り組んでもらい、5月から徐々に『Classi』(※1)を活用して課題の配信や授業動画の配信をスタートしました。また、『Google Meet』(※2)を使って、オンラインでホームルームも行いました。
 中学校では2年ほど前から生徒への課題配布や連絡のやりとりのためにClassiを導入し、校内のWi-Fi環境の整備も終えていて、1人1台のiPad導入を進めているところでしたが、今年4月の時点では本格的な運用がスタートしていない状況でした。各家庭に協力を仰ぎながら、教員も手探りでオンライン授業の準備を進めてきたことで、結果的に本校のICTの環境整備が進んだことは、メリットだと思います。ただし、4月当初は不安を感じる生徒もいるのではないかと考え、生徒たち一人ひとりを確実にケアするために、ご家庭に一軒一軒電話をしました」 

 5月以降のオンライン対応や休校が明けて学校が再開してからの対応についても、やはり大切にしたのは生徒一人ひとりの心のケアと三浦先生は続けます。

「長引く休校で、学習面の遅れを心配する面はもちろんありますが、学校は学習するだけの場所ではありません。教員やクラスメートと話したり、部活動をしたり、さまざまな学校生活の中の一部に学習があります。学校に来ることができず、そうした機会を奪われた上に学習だけを押し付けてしまうと、ただでさえ不安の中にいる生徒たちのストレスは大きくなってしまいます。
 休校期間中のホームルームでは生徒一人ひとりとコミュニケーションをし、登校が始まるとすぐに生徒と面談をして、休校期間中の様子や、今抱えている不安はないかなどを細かくヒヤリングしました。今後も生徒たちの様子を注意深く見守りながら、心身の健やかな成長を第一に考えて対応をしていきます」

※1 Classi…全国の高等学校中高一貫校の半数で使われているというクラウド型学習アプリ。課題配布や生徒による学習記録、教員と生徒間でのコメントのやりとりなど、多彩な機能を備えています。

※2 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。

コロナ対策事例1
3密を避け
初の登校日に入学式を実施
各教室での入学式の様子。各教室での入学式の様子。

 新入生たちにとって、学校再開後初の登校日となる6月3日。午前中には中学生、午後には高校生の入学式を実施しました。入学式は三密を避けるために1クラスの生徒を3つの教室に分け、各クラスに設置されたモニターを通して、校長式辞、新入生代表による誓いの言葉、在校生代表からの歓迎メッセージなど、内容を短縮して執り行われました。

コロナ対策事例2
電話とオンラインホームルームで
生徒一人ひとりをケアする
「家庭訪問したいくらいでした」と話す三浦先生。「家庭訪問したいくらいでした」と話す三浦先生。

 オンラインの環境整備を進めながら、まずは家庭に一軒一軒電話連絡をして、生徒たちとのつながりを確保。5月からはMeetを使ったオンラインホームルームもスタートしました。

「オンラインホームルームでは、9時から9時30分の好きな時間に生徒にアクセスしてもらい、事前に与えられた質問に答えてもらいながら、学習の進捗や健康面について確認していました。一人ひとりとコミュニケーションを取るので時間も手間もかかってしまいますが、顔を見て話す、声を聞くといった直接のやり取りで、十分なケアができたと思います」(三浦先生)

オンラインホームルームで一人ひとりの課題の進捗も確認。

オンラインホームルームで一人ひとりの課題の進捗も確認。

コロナ対策事例3
授業動画・課題・メッセージを
オンラインで配信
Classiでの連絡には、生徒を励まそうと、課題や授業動画だけではなく先生からのメッセージも配信されました。Classiでの連絡には、生徒を励まそうと、課題や授業動画だけではなく先生からのメッセージも配信されました。

 5月からはClassiを使って、課題や授業動画の配信もスタートしました。授業動画は1日2科目ほど配信。生徒の閲覧状況が確認できる機能を活用して、動画を見れていない生徒には電話連絡をしたり、課題の進捗状況を確認したりと、細やかなサポートも行われました。

ICT担当委員の先生方によって急きょ制作されたマニュアル。オンライン授業に向けた先生方の努力がうかがえます。ICT担当委員の先生方によって急きょ制作されたマニュアル。オンライン授業に向けた先生方の努力がうかがえます。
中1・理科のオリジナル授業動画の様子。Classiに動画ファイルをアップロードし、クリックすればすぐ見られるようにしています。配信した授業動画は、最終的には100本以上となりました。中1・理科のオリジナル授業動画の様子。Classiに動画ファイルをアップロードし、クリックすればすぐ見られるようにしています。配信した授業動画は、最終的には100本以上となりました。
先生から一言
生徒の健康・安全が第一
感染の状況を見て自校で判断

 本校の生徒数は約2,000人。それも公共の交通機関を使って通学してきます。感染者数減少を受け、7月中旬にほぼ通常通りの授業を開始した公立学校が増えてきていますが、何よりも生徒の健康・安全が第一です。本校では政府や神奈川県の方針・判断にかかわらず、引き続き慎重に対応しています。

 その一方で、授業時間数を確保していく必要があると考え、今後はオンラインの学習体制や夏休み・冬休みなどの縮小なども含め、本校ならではの対応策を考え、決断していくつもりです。(吉野校長)

進学通信 2020年10月号
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