私立中高進学通信
2020年神奈川版
コロナに負けない!私学のアクション
横浜翠陵中学校
先の見通せない時代に
『Think & Challenge!』精神で立ち向かう

オンライン面談の様子。生徒一人ひとりと向き合いながら会話をすることで、生徒の不安を取り除きます。
いつも以上に密度の濃いコミュニケーションを心掛けたそうです。
誰も取り残さない
きめ細かな対応を重視
約3カ月間にわたる休校期間中、多くの学校が手探り状態で対応を進めてきました。そんな中、『Think & Challenge!』をモットーに掲げる同校らしく、コロナ禍で不安の真っ只中にいるからこそ試行錯誤と挑戦を繰り返し、生徒たちができるだけ前向きに過ごせるよう、素早くアクションを起こしています。
休校時について、入試広報部長・保健体育科の庄大介先生は次のように振り返ります。
「休校要請のあった2月28日の段階で、すぐに午後から休校することに決めました。生徒の命が何よりも最優先と考えたからです。ちょうど期末試験が迫っていたのですが中止とし、急きょ2月29日に試験の代替となる課題を生徒たちに伝えました。
4月以降は急ピッチでオンラインツールを駆使したリモートの学習体制を整えていきました。一方で、盤石なWi-Fi環境がない、プリンターがないなど、家庭環境の違いもアンケートで明らかになりました。そこで『誰も取り残さない』ことを徹底するため、初めはプリントなどの課題を一斉に郵送し、すべての生徒が確実に課題を受け取り、学習を続けられるようにしました」
5月以降には、オンラインでの朝礼や課題の配信が始まりました。
「課題は配信するだけでなく、オンライン上での提出、質問の受け答えなども行ってきました。
時間割に沿って学習できるようにリモート授業の時間割を組み、月曜日に課題を配信、金曜日に提出というスタイルが定着していきました。5月の半ばには「Google Meet」(※1)を使って、すべての生徒を対象に一対一の個人面談も実施しています」
※1 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
担任が中心となり
生徒一人ひとりに寄り添う
同校では日頃から、生徒の様子をよく観察することを大切にしています。中2の担任で家庭科主任の近藤雅子先生は、休校期間中はとくに注意深く生徒の心に寄り添うことを心掛け、学級運営に力を入れていたと話します。
「多くの生徒が不安や心配を抱える中、学習面の進み具合だけでなく、心のケアを大切にしました。休校中は通信環境などさまざまな面において、生徒の学習状況は常に整っていたわけではなかったと思います。そのため、課題提出に関してはきつく問い詰めたり、強制的に取り組ませたりしないように決めていました。
中学生全員に学校の授業で貸与して使っていたiPadを一人ひとりに発送しました。中2生は1年間使って、操作にも慣れているため、「Classroom」(※2)を使ったコミュニケーションもスムーズに行われていました。
それでも状況に応じて、各家庭に電話もしていました。とくに新中1生に対しては、電話をすることが多かったです。やはり声を聞くと、生徒の様子が手にとるようにわかり、私たちも心の通う感じがして、うれしかったです」
教員の想いに応えるように、休校期間中の生徒たちは先生方が想定していた以上にたくましく、有意義に過ごしていたといいます。
「今回の休校期間は、新しいことや急な変化に対して、とにかくやってみようというメンタリティが生徒たちの中に育っていることを実感できた機会でもありました。
私たちも手探りでオンラインの対応を進める中、生徒が自ら新しい勉強方法を発見するなど、生徒を頼もしく感じた場面もありました。今後も不確実なことが多い状況が続きますが、生徒と一緒にチャレンジを続け、新しい学びを創り上げていきたいですね」(近藤先生)
※2 Google Classroom…Googleの授業支援ツール。課題の配布や振り返りなど、教員と生徒の間の連絡をオンライン上で一括管理できます。
コロナ対策事例1
休校期間中に
学習習慣を身につける

休校期間中はオンラインを通じて、ホームルームの実施や課題の配信と提出、生徒からの質問などに対応し、「Google Meet」を使った個人面談も実施しました。生徒たちが通常の学校生活を送るのと同様のペースで課題に取り組めるように、オンラインの時間割も配信されました。
コロナ対策事例2
会えなくても心が通い合う
オンラインの学級運営

休校期間中は、特に注意深く生徒の心に寄り添うため、学級運営に力を入れていたという同校。生徒とのやり取りは担任に一本化し、各教科への取り組み方などの学習面と生活面の両面から生徒の状況を把握するように努め、小さな変化も見逃さないようにしていたそうです。
オンラインホームルームの運営の様子を見ると、先生方の思いやりが伝わってきます。
学年の一体感を感じてもらえるようにするために、常に学校からのメッセージも発信し続けていたそうです。
「毎朝「Google Classroom」を通じて学年目標『Compassion(思いやり)』をテーマにしたコラムを配信し、金曜日にはそれらの内容についての感想を生徒に送ってもらいました。
生徒たち以上に、教員たちが生徒に会えないことが寂しくて。「Google Meet」の個人面談が楽しみで、前日はそわそわしていました」(近藤先生)

近藤先生が担当したオンラインコラム。
ヘッダー部分の画像は、生徒たちが登校するはずだった教室の画像を掲載していました。
コロナ対策事例3
登校する生徒たちの安全を確保

登校が始まってからは、校内での感染防止策に全力で努めています。
「ようやく生徒が学校に来られるようになってからは、密を避けての授業運営や、生徒が下校したあとの清掃・除菌作業などを徹底しています。
分散登校ができるようになった6月からは、教員が2人体制で生徒の登下校の様子を見守りました。バスを利用する生徒も多いので、バスの乗車場所に立って、毎日2回、午前に登校する生徒と午後に登校する生徒たちの登校を見守りました」(庄先生)

密を避けてゆったりと机を配置。窓も開け放ちます。
緑に囲まれた同校では、教室に涼しい風が吹き抜けていきます。
未来への展望
休校期間中の経験を活かし
ICTを使った授業が進化

学校が再開してからも、休校期間中に行ったICTを活用した授業を続けているといいます。
「中学生は、これまではiPadを学校で管理していましたが、休校期間中からは、家庭でも使えるようになり、常にiPadを使って学習を進める態勢を続けています。iPadが常に手元にあることで、これまで“今日はiPadを使う授業だ”と準備をしていたことが、授業中に“ここでiPadを使ってみよう”という発想ができるようになりました。
密を避けるためにグループ学習を行うことはできませんが、席が離れていても、全員の意見を一度に共有できるため、とくにロイロノート(※3)を使って意見を共有する機会が増えました。こうした使い方によって、ほかの生徒の考えを知ることができ、より深く考える力が身についてきていると感じます」(近藤先生)
※3 ロイロノート…授業支援のためのクラウドツール。課題配布や宿題の提出に利用できるほか、思考力やプレゼンテーション力を育てるための機能も備えています。
(この記事は『私立中高進学通信2020年神奈川版』に掲載しました。)
横浜翠陵中学校
〒226-0015 神奈川県横浜市緑区三保町1
TEL:045-921-0301
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 生徒の「つながり」を大切にした 今回の対策を今後の財産にしたい神奈川学園中学校
- 「使い方」ではなく「使う人の在り方」を重視したICTの導入サレジオ学院中学校
- 今こそ国際交流!スペインの日本語学校の生徒とオンライン交流会鶴見大学附属中学校
- 生徒の「つながり」を大切にした 今回の対策を今後の財産にしたい東海大学付属相模高等学校中等部
- 「使い方」ではなく「使う人の在り方」を重視したICTの導入日本大学藤沢中学校
- 休校中のオンライン授業は制服を着用して受講 心も生活リズムも安定聖園女学院中学校
- オンラインを上手に活用 校長発信の課題に多くの生徒が参加山手学院中学校
- 生徒一人ひとりがかけがえのない存在 つながりを支えるICT活用横須賀学院中学校
- CLILとESDの特色あるカリキュラムを 休校中もオンラインで実施横浜女学院中学校
- 先の見通せない時代に『Think & Challenge!』精神で立ち向かう横浜翠陵中学校
- 緊急時だからこそ 労力を惜しまず一人ひとりに語りかける横浜隼人中学校
- 緊急時だからこそ 生徒一人ひとりに心から語りかける教育を横浜富士見丘学園中学校
- 世界に「自分」を発信する 複言語×発信力 教育カリタス女子中学校
- 生徒が英語を使いたくなる3つの英語の授業を連携関東学院中学校
- 地球市民講座と言語力活用講座関東学院六浦中学校
- 教科や学年を超えた 未来型の「特別授業」橘学苑中学校
- 生徒を海外に送り出し たくましく生きる力を育む横浜中学校
- CLOUD上とリアル 2つの学校を実現神奈川大学附属中学校
- クリエイティビティを育む『先進コース』の学び北鎌倉女子学園中学校
- 新たな歴史をつくろうと奮闘するきみたちを これからも全力で応援する湘南学園中学校
- 世界標準の言語技術教育をベースに 青海原に漕ぎ出す人財を育てる森村学園中等部
- 教育を「与える」ではなく 子どもの成長を「支援する」プロの教員集団へ横浜創英中学校
- 自分のあり方を見つめる 新たな「探究プログラム」がスタート自修館中等教育学校
- コロナ対策を講じて部活動を再開 難関大学合格に寄与する学習サポート体制聖セシリア女子中学校
- 他者との関わりの中で自己を高める「大学訪問授業」と「TOKO SDGs」桐光学園中学校
- 自ら学ぶ姿勢を身につけるとともに 伝統文化を体験して人間性を育む藤嶺学園藤沢中学校


