私立中高進学通信
2020年神奈川版
コロナに負けない!私学のアクション
神奈川学園中学校
生徒の「つながり」を大切にした
今回の対策を今後の財産にしたい

オンライン入学式では「Zoom」で担任の教員が新入生1人ひとりに呼びかけ
「入学後はみなさんとこんなふうに過ごしたい」という思いを届けました。
神奈川学園の一員になったという意識を
こだわりポイント
- 生徒同士、生徒と教員との
「つながり」を重視する - 生徒の不安や変化に
気を配ってフォローする - 教員が連携を強めて、
指導のノウハウを共有する
生徒と「つながる」こと、そして社会や世界と「かかわる」ことを大切にする同校。今回、新型コロナウイルスによって休校を強いられた期間、生徒同士また生徒と教員のつながりを重視した体制づくりに力を注ぎました。特に配慮したのは、新入生である中学1年生に対してです。中1副担任の中野真依先生(理科)に話を聞きました。
「コロナによって4月の入学式は中止となりました。そこで、学校とのつながりが途切れないように生徒と保護者の方々に向けた『入学準備サイト』を立ち上げたのです。これを見れば連絡事項がわかるようにしました。そして中1の教科書などを生徒に郵送し、『クラスのみんなと顔を合わせる日まで、これを使ってしっかりと勉強しておこうね』と伝えました。4月中はまだオンライン授業を行っていませんでした。5月の連休明けには入学式ができる。そう期待していたので、1ヶ月間だけ自宅学習に励んでもらおうと思っていたのです」
しかし、5月の連休が明けても緊急事態宣言は解除されませんでした。そこで、中1の担任や教科担当はオンライン授業の準備を始めたそうです。まず、オンライン学習システムの「Googleクラスルーム」を開設。新入生のクラスを発表するともに、定期的に各教科からメッセージを伝えるようにしました。
そして5月7日にオンライン入学式を開催。校長が新入生にお祝いの言葉を述べ、担任の教員が紹介されました。この後、オンライン授業が徐々に開始されたのです。
「中1のオンライン授業用に選んだのがビデオ会議システムの『Zoom』でした。グループワークができるブレイクアウトルーム機能があり、生徒同士のコミュニケーションに理想的だと考えたからです。
本校に入学して本校の一員になったという意識は、クラスメートとのつながりによって生まれるものだと思いました。中1はまだ登校していません。そこで『Zoom』でグループワークをしながら、お互いに顔と名前が分かるようにさせたいと私たち教員は考えたのです」
心に余裕を持って新しい生活に馴染む
オンライン入学式後の数日間は、「Zoom」でクラスメートと顔合わせをしたり、「Zoom」の操作を学んだりしたそうです。また、コロナが収束したらどこに行きたいかなどを生徒同士で話し合いました。
オンライン授業が本格的にスタートして最初の2週間は授業を午前中の3時間だけに限定。リラックスして中学校の授業に慣れてもらうことを優先したためです。
5月25日には緊急事態宣言が解除され、6月2日には新入生にとって初めての登校日を迎えることができました。生徒はこれから学ぶ教室で実際にクラスメートと会うことができたのです。すでに顔と名前はオンライン授業で知っているため、生徒はすぐに打ち解け、喜びを分かち合ったといいます。
その後、中1は週2日の分散登校と週3日のオンライン学習を6月いっぱい続けました。完全登校が始まったのは、7月6日からです。
「新入生の学校生活が軌道に乗るまでに2ヶ月以上を要してしまいました。その一方で新入生が抱えるストレスが軽減できたことも確かです。本来なら4月の入学式を皮切りに知らない子ばかりの教室で学ぶなど、毎日が緊張の連続でしょう。しかし、生徒は心に余裕を持って、少しずつ新しい生活に馴染むことができたと思います」
そしてコロナ対策をきっかけに教員間の絆も強まったと中野先生は振り返りました。
また、オンラインと対面式を融合させた新しい学びのあり方も模索され始めるなど、同校には新たな可能性が生まれています。
コロナ対策事例1
オンライン授業では
体育や家庭科の実技教科も
中1は学校から支給されたタブレットでオンライン授業に臨みました。まず、朝のホームルームから始まります。中には制服を着て、タブレットと向き合う生徒もいたそうです。ホームルームでは画面に生徒の家族の姿やペットが映り込むなど、ほほえましい家庭の様子を教員や他の生徒が見ることができました。
「オンライン授業では各教科を50分ずつ行い、午後は課題に取り組んでもらいました。慣れてくると午後に体育や家庭科などの実技教科の授業を行いました。生徒は動画を参考にしてダンスしたり、炊き込みご飯を調理したりしたのです」(中一副担任の中野真依先生)
6月2日からは分散登校が始まり、新入生に向けたガイダンスが数日間にわたって開催されました。中1の生徒は自己紹介をしたり、校内を巡るウォークラリーに参加したりして、初めての中学校生活を心から楽しみました。


コロナ対策事例2
オンライン版「Diary」で
一人ひとりの心に寄り添う
中2と中3は、ガイダンスなどを割愛し、オンライン授業を中1よりも1ヶ月早くスタートさせました。この生徒たちは新入生と違い、学校生活に慣れているためです。しかし、休校中、不安を抱いている生徒も少なくありません。そこで、同校の教員たちは生徒一人ひとりの心に寄り添うように努めました。教頭の及川正俊先生は次のように語ります。
「本校では毎日、担任の教員が生徒と『Diary』でやりとりをしています。これは学習計画表や交換日記の役割を果たすツールです。休校中はこの『Diary』のオンライン版を開設し、生徒たちの様子に気を配りました。また、オンライン授業では学力がつく生徒とそうでない生徒の差が開く傾向にあります。勉強が遅れがちな生徒には『Diary』を参考にしつつ、オンライン面談をしてアドバイスをするなどフォローを心がけました」




中2の数学のオンライン授業。教員の声を聞きながら、手書きの解説を見ることで生徒の理解が深まりました。

休校中に高3生のために開設された「オンライン自習室」。
映されるのは主に生徒の手元ですが、頑張っている仲間の姿に励まされ、自習に身が入りました。
先生から一言
全教員が真剣に向き合う姿に
本校の底力を感じました

本校にはICT推進委員会ともいうべき「情報部」という部署があり、私もそのメンバーを務めています。今回、この「情報部」が中心となって、授業のオンライン化を進めてきました。ICTに不慣れな教員も「情報部」に相談に訪れ、切磋琢磨しながらノウハウを共有してオンライン授業を創り上げていきました。こうして本校の教員たちは今まで以上に心をひとつにすることができたのです。全教員が真剣に向き合う姿を見て、本校の底力を感じました。また、本校がめざしてきた生徒への個別対応もオンラインによって実現できることも実証できたのです。これらは、今後の教育に活かせる財産になりました。
(この記事は『私立中高進学通信2020年神奈川版』に掲載しました。)
神奈川学園中学校
〒221-0844 神奈川県横浜市神奈川区沢渡18
TEL:045-311-2961
進学通信掲載情報

PICK UP!!
紹介する学校
- 生徒の「つながり」を大切にした 今回の対策を今後の財産にしたい神奈川学園中学校
- 「使い方」ではなく「使う人の在り方」を重視したICTの導入サレジオ学院中学校
- 今こそ国際交流!スペインの日本語学校の生徒とオンライン交流会鶴見大学附属中学校
- 生徒の「つながり」を大切にした 今回の対策を今後の財産にしたい東海大学付属相模高等学校中等部
- 「使い方」ではなく「使う人の在り方」を重視したICTの導入日本大学藤沢中学校
- 休校中のオンライン授業は制服を着用して受講 心も生活リズムも安定聖園女学院中学校
- オンラインを上手に活用 校長発信の課題に多くの生徒が参加山手学院中学校
- 生徒一人ひとりがかけがえのない存在 つながりを支えるICT活用横須賀学院中学校
- CLILとESDの特色あるカリキュラムを 休校中もオンラインで実施横浜女学院中学校
- 先の見通せない時代に『Think & Challenge!』精神で立ち向かう横浜翠陵中学校
- 緊急時だからこそ 労力を惜しまず一人ひとりに語りかける横浜隼人中学校
- 緊急時だからこそ 生徒一人ひとりに心から語りかける教育を横浜富士見丘学園中学校
- 世界に「自分」を発信する 複言語×発信力 教育カリタス女子中学校
- 生徒が英語を使いたくなる3つの英語の授業を連携関東学院中学校
- 地球市民講座と言語力活用講座関東学院六浦中学校
- 教科や学年を超えた 未来型の「特別授業」橘学苑中学校
- 生徒を海外に送り出し たくましく生きる力を育む横浜中学校
- CLOUD上とリアル 2つの学校を実現神奈川大学附属中学校
- クリエイティビティを育む『先進コース』の学び北鎌倉女子学園中学校
- 新たな歴史をつくろうと奮闘するきみたちを これからも全力で応援する湘南学園中学校
- 世界標準の言語技術教育をベースに 青海原に漕ぎ出す人財を育てる森村学園中等部
- 教育を「与える」ではなく 子どもの成長を「支援する」プロの教員集団へ横浜創英中学校
- 自分のあり方を見つめる 新たな「探究プログラム」がスタート自修館中等教育学校
- コロナ対策を講じて部活動を再開 難関大学合格に寄与する学習サポート体制聖セシリア女子中学校
- 他者との関わりの中で自己を高める「大学訪問授業」と「TOKO SDGs」桐光学園中学校
- 自ら学ぶ姿勢を身につけるとともに 伝統文化を体験して人間性を育む藤嶺学園藤沢中学校


