私立中高進学通信
2020年12月号
コロナに負けない!私学のアクション
横浜翠陵中学校
先の見通せない時代に
『Think&Challenge!』
精神で立ち向かう
オンライン面談の様子。生徒一人ひとりと向き合いながら会話をすることで、生徒の不安を取り除きます。
いつも以上に密度の濃いコミュニケーションを心掛けたそうです。
誰も取り残さない
きめ細かな対応を重視
約3カ月間にわたる休校期間中、多くの学校が手探り状態で対応を進めてきました。そんな中、『Think&Challenge!』をモットーに掲げる同校らしく、コロナ禍で不安の真っ只中にいるからこそ試行錯誤と挑戦を繰り返し、生徒たちができるだけ前向きに過ごせるよう、素早くアクションを起こしています。
休校時について、入試広報部長・保健体育科の庄大介先生は次のように振り返ります。
「政府から休校要請のあった2月28日の段階で、すぐに午後から休校することに決めました。生徒の命が何よりも最優先と考えたからです。ちょうど期末試験が迫っていたのですが中止とし、急きょ2月29日に試験の代替となる課題を生徒たちに伝えました。
4月以降は急ピッチでオンラインツールを駆使したリモートの学習体制を整えていきました。一方で、盤石なWi-Fi環境がない、プリンターがないなど、家庭環境の違いもアンケートで明らかになりました。そこで『誰も取り残さない』ことを徹底するため、初めはプリントなどの課題を一斉に郵送し、すべての生徒が確実に課題を受け取り、学習を続けられるようにしました」
5月以降には、オンラインでの朝礼や課題の配信が始まりました。
「課題は配信するだけでなく、オンラインで提出、質問の受け答えなども行ってきました。
時間割に沿って学習できるようにリモート授業の時間割を組み、月曜日に課題を配信、金曜日に提出というスタイルが定着していきました。5月の半ばには『Google Meet』(※1)を使って、すべての生徒を対象に一対一の個人面談も実施しています」
※1 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
担任が中心となり
生徒一人ひとりに寄り添う
同校では日頃から、生徒の様子をよく観察することを大切にしています。中2の担任で家庭科主任の近藤雅子先生は、休校期間中はとくに注意深く生徒の心に寄り添うことを心掛け、学級運営に力を入れていたと話します。
「多くの生徒が不安や心配を抱える中、学習面の進み具合だけでなく、心のケアを大切にしました。休校中は通信環境などさまざまな面において、生徒の学習状況は常に整っていたわけではなかったと思います。そのため、課題提出に関してはきつく問い詰めたり、強制的に取り組ませたりしないように決めていました。
中学生全員に学校の授業で貸与して使っていたiPadを一人ひとりに発送しました。中2生は1年間使って、操作にも慣れているため、「Google Classroom」(※2)を使ったコミュニケーションもスムーズに行われていました。
それでも状況に応じて、各家庭に電話もしていました。とくに新中1生に対しては、電話をすることが多かったです。やはり声を聞くと、生徒の様子が手にとるようにわかり、私たちも心の通う感じがして、うれしかったです」
教員の思いに応えるように、休校期間中の生徒たちは先生方が想定していた以上にたくましく、有意義に過ごしていたといいます。
「今回の休校期間は、新しいことや急な変化に対して、とにかくやってみようというメンタリティが生徒たちの中に育っていることを実感できた機会でもありました。
私たちも手探りでオンラインの対応を進める中、生徒が自ら新しい勉強方法を発見するなど、生徒を頼もしく感じた場面もありました。今後も不確実なことが多い状況が続きますが、生徒と一緒にチャレンジを続け、新しい学びを創り上げていきたいですね」(近藤先生)
※2 Google Classroom…Googleの授業支援ツール。課題の配布や振り返りなど、教員と生徒間の連絡をオンライン上で一括管理できます。
コロナ対策事例1
休校期間中に
学習習慣を身につける
休校期間中はオンラインを通じて、ホームルームの実施や課題の配信と提出、生徒からの質問などに対応し、「Google Meet」を使った個人面談も実施しました。生徒たちが通常の学校生活を送るのと同様のペースで課題に取り組めるように、オンラインの時間割も配信されました。
リモート授業時間割の目安。この時間割に沿って、課題を学習するように促しました。
コロナ対策事例2
会えなくても心が通い合う
オンラインの学級運営
休校期間中は、特に注意深く生徒の心に寄り添うため、学級運営に力を入れていたという同校。生徒とのやり取りは担任に一本化し、各教科への取り組み方などの学習面と生活面の両面から生徒の状況を把握するように努め、小さな変化も見逃さないようにしていたそうです。
オンラインホームルームの運営の様子を見ると、先生方の思いやりが伝わってきます。
学年の一体感を感じてもらえるように、常に学校からのメッセージも発信し続けていたそうです。
「毎朝『Google Classroom』を通じて学年目標『Compassion(思いやり)』をテーマにしたコラムを配信し、金曜日にはそれらの内容についての感想を生徒に送ってもらいました。
生徒たち以上に、教員たちが生徒に会えないことが寂しくて。『Google Meet』の個人面談が楽しみで、前日はそわそわしていました」(近藤先生)
近藤先生が担当したオンラインコラム。
ヘッダー部分の画像は、生徒たちが登校するはずだった教室の画像を掲載していました。
コロナ対策事例3
登校する生徒たちの安全を確保
登校が始まってからは、校内での感染防止に全力を尽くしています。
「ようやく生徒が学校に来られるようになってからは、密を避けての授業運営や、生徒が下校したあとの清掃・除菌作業などを徹底しています。
分散登校ができるようになった6月からは、教員が2人体制で生徒の登下校の様子を見守りました。バスを利用する生徒も多いので、バスの乗車場所に立って、毎日2回、午前に登校する生徒たちと午後に登校する生徒たちを見守りました」(庄先生)
密を避けてゆったりと机を配置。窓も開け放ちます。
緑に囲まれた同校では、教室を涼しい風が吹き抜けていきます。
未来への展望
休校期間中の経験を活かし
ICTを使った授業が進化
学校が再開してからも、休校期間中に行ったICTを活用した授業を続けているといいます。
「中学生は、これまではiPadを学校で管理していましたが、休校期間中からは、家庭でも使えるようになり、常にiPadを使って学習を進める態勢を続けています。iPadが常に手元にあることで、これまで“今日はiPadを使う授業だ”と準備をしていたことが、授業中に“ここでiPadを使ってみよう”という発想ができるようになりました。
密を避けるためにグループ学習を行うことはできませんが、席が離れていても、全員の意見を一度に共有できるため、とくにロイロノート(※3)を使って意見を共有する機会が増えました。こうした使い方によって、ほかの生徒の考えを知ることができ、より深く考える力が身についてきていると感じます」(近藤先生)
※3 ロイロノート…授業支援のためのクラウドツール。課題配布や宿題の提出に利用できるほか、思考力やプレゼンテーション力を育てるための機能も備えています。
家庭科の授業での活用例。「家庭のはたらき」について、生徒一人ひとりの意見を共有。
(この記事は『私立中高進学通信2020年12月号』に掲載しました。)
横浜翠陵中学校
〒226-0015 神奈川県横浜市緑区三保町1
TEL:045-921-0301
進学通信掲載情報
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