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私立中高進学通信

2020年12月号

The Voice 新校長インタビュー

光塩女子学院中等科

伝統と創生のハイブリッドで
不確かな時代を生きていく

佐野 摩美 (さの まみ)校長先生

佐野 摩美 (さの まみ)校長先生
1962年、東京都生まれ。光塩女子学院中等科・高等科卒業後、上智大学文学部国文学科入学、上智大学大学院修了。
1985年から光塩女子学院中等科・高等科非常勤講師、1987年から国語科専任教諭に。
2002年国語科主任、2011年学校企画室長兼任。2020年より校長に就任。
専門は近代辞書史。上智大学元非常勤講師。文部科学省検定教科書編集委員。

自己肯定感を
高めてくれた恩師の言葉

 約45年前、私は本校の生徒でした。当時校長だったシスター西川は、「あなたがたは神様から創られたかけがえのないユニークな存在」と幾度となく私たちに語りかけてくださいました。この言葉が私の自己肯定感の礎となり、今も通奏低音のように心に鳴り響いています。病気を患った時も、仕事に悩んだ時も、胸にあったのはこの言葉。「ああ、こんな私でも生きていていいのだ」と、いつも励まされてきました。

 その後、上智大学に進学した私は、大学院で近代国語辞書の研究に没頭しました。私にとって、日本初の近代国語辞書『言海』は一生を捧げる価値のある研究対象であり、その編著者である大槻文彦は心の恋人でした。ですが、教育実習で出会った本校の生徒たちは、あまりにもかわいかった! しかも、学び舎は生きた言葉にあふれています。辞書に収められた言葉は美しく整っていますが、ピンで刺した昆虫標本のようなもの。彼女たちと一緒に学びたい、生きた言葉に触れたいという思いが募り、私は非常勤講師を経て、本校の国語科専任教諭になりました。

正解のない時代を
生きるための教養を育む
佐野校長先生の教育理念
  1. 1回限りの命を生きる者同士として、
    互いを慈しむ
  2. 目の前の生徒一人ひとりに、誠実に、
    とことんまで関わる
  3. 丁寧な対話により、自己肯定感を育む

 以来35年間、私は国語科教員として生徒たちとともに歩んできました。カリキュラムの開発にも携わり、約20年前からアクティブラーニングの先駆けとなる『教養演習』を始めました。科目横断型のこの授業では、生命倫理や哲学、ジェンダー、環境問題など幅広いテーマについて考え、小論文を作成します。世の中の諸問題について見識を深め、小論文を書く機会が多い大学受験の入試対策の一つとして、論文の種仕込みに活かしてもらおうという意図がありました。

『教養演習』の特徴は、理系選択の人にも文系のテーマを、文系選択の人にも理系のテーマをしっかり習得してもらう、リベラルアーツの基盤作りにつながる学びである点です。国語科教員の私が、脳死や臓器移植について語ると生徒は目を丸くします。しかし、文系・理系を問わず、生きるうえで大切なことは誰もが学ばなければなりません。教員自身が教科の枠組みを越えた学びを体現することで、身をもってその大切さを示そうと考えたのです。

 そもそも教養とは、ただ知識を学習することではありません。教養とは、生きるうえでの道筋、物事を判断する際に基準となるもの。それを生徒たちに伝えようと思いました。

 今年4月に校長に就任してからも、こうした思いは変わりません。近年はガルブレイスの指摘した「不確実性の時代」より、自然災害・国際情勢等、さらに不確かな時代となり、今年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、先行きはますます不透明になっています。正解がない中、自分自身で判断を下す機会はより一層増えていくでしょう。

 しかも、たとえコロナ禍が収束したとしても、元の状態に戻せないことはたくさんあるはずです。伝統を守りつつも、変えるべきところは勇気をもって変えていく。これからの時代は、その見極めが非常に重要になるでしょう。学校運営においても難しい判断を迫られますが、自己や他者との対話を重ねて「伝統」と「創生」のハイブリッドで生徒たちや先生方と、ともに歩んでいきたいと思います。

光り輝くための土台を築く
4つのキーワード

 本校の校名は、「あなたがたは世の光、地の塩」という聖書の言葉に由来します。世を照らす光も、ものに味をつける塩も、人々にとってなくてはならないもの。同じように、人は誰でもかけがえのない存在であるという思いが、この言葉に込められています。今年度は、光り輝くための土台を築く「塩」に着目し、サブテーマとして「SALT」の頭文字から4つのキーワードを提示しました。世界や環境についての思考を深め、自己・学びと対峙するためのヒントにしたいと思います。

「S」──Sustainability(持続可能性)。フランシスコ教皇様は、地球を「私たちの家」と表現しています。私たちは地球という家を守り、次世代につなぐ義務があります。環境問題を考えるうえで、持続可能性という視点は重要です。

「A」──Ambition(大志)。次世代に地球環境をつなぐために、まず、自分ができることを探す。そして自分の夢とつなげて人生の歩みを進めてほしい。自分の人生とどう向き合い、どのようにして夢を実現するかを中高時代にしっかり考えることが不可欠です。

「L」──Lux Veritatis(真理の光)。真理を求めての学問探究を通してセレンディピティを身につけて、幸せを引き寄せられたら嬉しいです。

「T」──Tolerance(寛容)。多様性を尊重し、他者に対して認識的な想像力を働かせてほしいと願っています。私たちは目の前にいる友達は尊重できても、地球の反対側の人々にまではなかなか想像が及びません。本校では、異文化への理解を深め、同じ地球に暮らすまだ出逢っていない「もう一人の友」の存在に折に触れて思いを馳せています。

AIにはない
人間の価値を大切に

 本校での学びを通じ、生徒には、AIにはない人間特有の意味と価値を身につけてほしい。AIは問いに対する分析を得意としますが、人間のように問いや課題を発見することはできません。課題発見力・構想力等は、人間にしかない能力なのです。これらの力を伸長するために教員グループ「『探究』探究チーム」を立ち上げ、教科や学年を越えた探究活動を企画しています。高校では2022年度に「新学習指導要領」が導入され、新たに『探究』の名を冠した科目もできるため、その準備も兼ねています。

 さらに、協働力も養ってほしいと考えています。本校は創設以来、「共同担任制」を採用し、6~7名の教員が学年全体を受け持っています。多様な個性を持つ教員が協働することで、生徒たちも刺激を受け、部活動や委員会などで学年を越えた協働力やマネジメント力を育んでいます。

 ほかにも、相手のことを心に留め、気持ちを慮り歓待する「ホスピタリティ」、物事に感動する「センス オブ ワンダー」、へこんでもまたがんばろうと立ち上がる「レジリエンス力(回復力)」など、人間ならではの力はたくさんあります。

 生徒たちは、ダイヤモンドの原石です。さまざまな可能性を秘めた原石に磨きをかけるため、6年間を通しての漢字・英単語テスト、コンスタントな計算トレーニング、評論の多読、新聞記事を要約して自分の意見を記す『新聞ノート』の作成、大学との 連携プログラム等、学力はもちろん、人間性と教養の基盤作りに力を入れています。こうした学びにより、ダイヤモンドのカラット数を上げ、生涯かけてその輝きに磨きをかけてほしい。中高時代の学びで、卒業後も輝き続けるための堅固な土台を築くことを光塩はお約束します。

[沿革]
 1931年、カトリック・ベリス・メルセス宣教修道女会を母体に、光塩高等女学校が開校。1947年、学制改革に伴い、光塩女子学院と改称し、高等科・中等科・初等科を置く。「あなたがたは世の光、あなたがたは地の塩である」という聖書の言葉を建学の精神に掲げ、カトリック精神を基盤とした豊かな人間形成をめざしている。

進学通信 2020年12月号
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