私立中高進学通信
2020年12月号
私学だからできるオリジナル教育
桐朋女子中学校
『本物に触れる教育』
を多角的に実践
これからの時代に必要な、新しいものを創り出す力を伸ばす『本物に触れる教育』。生徒一人ひとりの思考力、発想力、表現力、主体性・協働性を育てています。

個性的でアカデミックな女子教育で知られる同校は、各教科の担当教員が協働し、
創意工夫を加えながら各教科で実物と触れる機会を増やし、体験によって理解を深める教育を実践しています。
桐朋女子ならではの柔軟で
独創性の高いカリキュラム
同校は50年以上の長きにわたり、『こころの健康 からだの健康』をモットーに、創造性あふれる人間を育成する女子教育に取り組んでいます。
このモットーの体現のために大切にしているのは、『ことばの力』の育成です。このために『論理エンジン』(※)を使った授業やレポート作成を実施し、論理的思考力の向上へとつなげています。
どの教科のレポートを作成する際にも、観察結果や事実だけでなく、参考文献から得た知見を加えて考察するよう指導しています。こうして論理的な構成を学び、併せて相手に伝わる表現力を育みます。論理的思考力と表現力を土台に、主体的に協働して物事に取り組むことが、創造力につながるのです。
私学の独自性を活かした、多様かつ柔軟なカリキュラムも特徴の一つです。中高6年間を2年ずつA・B・Cの3ブロックに分け、高2・高3のCブロックでは時間割を生徒が自ら作成しています。選択授業の中には、「中国語」や「総合社会特講」、「素描特講」など、同校ならではの学びも用意されています。
加えて、同校には通知表がなく、成績および評価は個人面談で伝達しています。伝えられた成績だけでなく、反省点や今後の目標は生徒自らが面談ノートにまとめて保護者と共有し、生徒自身が「何を学び、自分がいかに成長しているか」を知り、将来を考える自主性も同時に育んでいます。
※論理エンジン…論理的思考力を伸ばすための副教材。文章の構成を論理的に解析し、要点を読み取る訓練などを盛り込んでいる。グループ学習で行う単元などもあり、ゲーム感覚で取り組める内容も備えている。
各教科で体験や実験を
大切にする授業を展開
同校の教育の大きな柱の一つに、『本物に触れる教育』があります。例えば理科では、全学年を通じて多彩な実験を取り入れ、結果をしっかりと言語化してまとめることで、真の理解を促しています。一般的に座学の学びが多い数学の授業でも、生徒が実際に実験を行い、学習内容も身近な事象に落とし込み、より良い理解につなげる授業を展開しています。
社会科では、社会科見学などの体験を通じて、生徒自らが問いを立てて答えを導き、レポート化するなどの学びを徹底しています。
さらに、実技教科でも独自の教育を行っています。保健体育科では系列の桐朋小学校の児童との触れ合いを通じて、「いのち」や「コミュニケーション」をテーマにした授業も行っています。
また、同校の特徴である芸術教科への取り組みも本物志向です。美術科では、芸術鑑賞の時間を多く設けるだけでなく、美術学校に匹敵する本格的な絵画やデザインの授業にもじっくりと時間をかけ、豊かな情操を育んでいます。
こうした実体験を大切にするオリジナルの教育が、同校の生徒の力を最大限に伸ばしているのです。
桐朋女子オリジナル『本物に触れる教育』の実践
同校では主要5教科から芸術教科まで幅広く、実物に触れ、体験を通して学ぶ教育を大切にしています。各教科を担当する先生に実践例をうかがいました。
高度な実験授業を豊富に用意

理科では、中1で4分野(物化生地)を学び、その後は分野ごとに学ぶことで専門的に理解を深めていきます。その中で、いずれの分野でも実験や観察を重視した授業を行っています。これらは実生活や他教科とのつながりを意識したり、幅広く興味を持つきっかけになります。
私が担当する化学では、実験回数が多いだけでなく、中学はチームティーチングを取り入れながら実験操作の基礎を、高校ではより本格的な実験や希望者は大学レベルの化学実験実習を選択することができるように、連続性を意識しています。
例えば「赤ワインの蒸留」という実験でも、中学では簡単な仕組みの装置を使うことで、原理の理解に重点を置きます。一方で高校では「リービッヒ冷却器」を用いてより精密に実験を行い、「なぜそうなるのか?」という問いに対して自分の考えを論理的にレポートにまとめます。
こういった経験は、生徒たちがなにか困難なことに直面した時に、その状況を打開・解決できる力を育むことにつながると思うのです。

「理科の実験は、成功した結果だけを求めるのではなく、
失敗によって得られる学びも重視しています。
実験で大切なのは、結果ではなく原理の解明です」と山方先生。
保健体育
小学校や野外での実習授業

保健体育科の『本物に触れる教育』は、多岐にわたります。体育では、実施する種目を専門としている教員が受け持ち、専門性の高い授業を展開できるようにしています。高校では11種目の中から希望する複数種目を学ぶことができ、キャンプやスキーといった野外実習も経験することができます。保健では6年間、本校の教育理念に基づいた「いのち」がテーマのシリーズ学習があります。
なかでも中3では、桐朋小学校を訪問して実習を行い、小学生と相談しながら縄跳びやドッジボールなどで遊んで、他者理解と生きたコミュニケーションを経験します。素直な小学生から新たな気付きを得たり、子供に不慣れだった生徒の心情が変化し、その気持ちを言葉にして記録したりと、生徒たちの精神的な成長につながっていると感じます。

桐朋小学校の児童との「ふれあい実習」。
小1生と小2生4名と中3生6名がグループとなり、
食事をしながら計画を立てて、一緒に遊びます。
数学
問題を解いて終わりにしない

数学の授業では、問題の解き方を教えることが主になりがちですが、本校では「公式や解答を導く数学的思考・表現力」がしっかりと身につくような授業を心掛けています。
例えば、標本調査の単元では、BB弾を使った実験を行い、比率の概念を学べるよう工夫しました。関数の単元での動く図形の問題も、十分に想像させた後にスライドショーで提示することにより、イメージを腑に落とす工夫をしています。
ここで最も大切なのは「生徒が自分自身で考えること」です。また、どの単元の学習においても、問題に対する自分の考えを論理的に記述することを大切にしています。

標本調査の授業では、色付きの500個を含めた6000個のBB弾を準備して実験。
母集団における比率を導き出す計算式の概念を学びます。
社会
“本物”と出会い、学ぶ校外学習

社会科では、社会科見学などの行事や校外学習を活用したフィールドワーク型の学びを取り入れています。
中1の地理では、本校が位置する調布市の調査を行い、その半年後には都内見学として銀座を訪れて商店街の立地を調べ、商店の方にインタビューをしてレポートにまとめるなど、段階的に学習方法も進化させています。
中2の歴史の授業では江戸東京博物館に行って展示物をスケッチしたり、中3の公民の授業では法テラスを訪問して専門家の話を聞いてレポートにまとめたりと、本物に触れて学びを深めています。

銀座を訪れる都内見学。生徒は商店街をグループで散策し、
興味を持った課題を見つけ、調査を進めます。
美術
本格的な絵画・デザイン実習

桐朋学園が芸術教育に力を注いでいることもあり、本校の芸術教育はかなり専門的な内容です。
中学では絵画、立体物の制作、平面デザイン、版画を通じて基礎を築き、高校ではモデルデッサンを行って水彩・油絵を選んで着彩する本格的な絵画や、最寄り駅周辺で行う現地調査をもとに、オリジナルのサインボードを制作するなど、専門校に匹敵する深い学びをめざしています。
また、上野の国立西洋美術館や各種の有名展覧会を訪れて、“本物”を見る機会も多く設けています。芸術教科は生徒の個性がより表れやすい分野。一人ひとりの個性と新たな才能を見いだす機会にもなっています。

高1美術の有機的な形を観察する授業。
「大切なのは、描く対象物を観察する力です。“見る力”は“知る力”につながり、
創造性を高めます」と高田先生。
(この記事は『私立中高進学通信2020年12月号』に掲載しました。)
桐朋女子中学校
〒182-8510 東京都調布市若葉町1-41-1
TEL:03-3300-2111
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