私立中高進学通信
2020年12月号
コロナに負けない!私学のアクション
目黒学院中学校
デジタルツールを駆使
対面の温度感も大切にした
充実のオンライン学習

高2の生徒たちの学習計画表を、担任の稲垣先生がiPadでチェック。
先生は「この1カ月の学習量は今後を左右します。このチャンスを逃すな!」といったコメントを記して返却します。
席の間隔を空けて
4月に入学式を開催
こだわりポイント
- 少人数制のメリットを最大限に活かす
- 今まで以上に生徒に声かけするなどの
コミュニケーションを図る - ICTツールを組み合わせて相乗効果を図る
少人数制を特色に、きめ細かい授業と、面倒見の良い指導で評価されている同校。新型コロナウイルス感染拡大により、多くの学校が入学式を中止したりオンラインで行ったりするなかで、同校は工夫を重ねて入学式を開催しました。ICT推進委員で高2担任の稲垣圭一先生と中3担任の小島陵亮先生に話をうかがいました。
「本校は少人数制のため、席間の幅を大きく空けることで入学式を開催することができました。新入生の席の間隔を広く空け、来場される保護者の方々には人数制限を設けさせていただきました。例年は他学年も入学式に参列しますが、今年は参列を中止にし、始業式も全学年で集まらず、クラスごとに行いました」(稲垣先生)
入学式・始業式を行った後は、自宅学習に力を入れるよう教員から生徒に伝えました。
「本校では生徒全員にiPadを貸与しています。4月から使う教科書やテキストなどは、すでに3月に配り終えていました。これらの教材を使って、まずはこれまでの復習や、新単元の予習に取り組んでもらいました」(稲垣先生)
iPadには授業支援アプリ「ロイロノート」(※1)がインストール済みで、すでに授業でも使用していました。各教科の教員は、このアプリを使って、生徒と課題のやりとりを行っていました。
「生徒はiPad上で課題を解いて、答案をロイロノートで提出します。教員は答案の採点をし、コメントをつけて生徒に返却します。このやりとりを5月の連休開けまで続けました」(稲垣先生)
4月の後半にはオンラインでの双方向型授業の導入を検討し、Web会議サービスのZoom(※2)やGoogle Meet(※3)の使用を決定しました。
「各家庭の保護者に2つのアプリのインストールを依頼する連絡を行い、5月の2週目からは双方向型のオンライン授業をスタートしました」(稲垣先生)
※1 ロイロノート…授業支援のためのクラウドツール。課題配布や宿題の提出に利用できるほか、思考力やプレゼンテーション力を育てるための機能も備えています。
※2 Zoom…双方向型のWeb会議サービス。参加者を小規模なグループに分けてグループワークができる機能も備えています。
※3 Google Meet…Googleアカウントを利用して使えるWeb会議サービス。Googleの授業支援ツール「Google Classroom」と連携して使用します。
自宅学習中は担任が
電話をして心のケアを
オンライン授業が始まるまでの間は、生徒が不安にならないよう、担任の教員が定期的に電話でのサポ―トを行っていました。
「担任は各教科の教員と連携して課題の提出状況を把握し、課題が進んでいない生徒には電話をかけて様子を聞いていました。とくに新入生は、担任やクラスメートの様子もわかりません。そのため時間をかけて心のケアをするように努めていました」(小島先生)
オンライン授業は、主要5教科をメインに、中高ともに月曜日から土曜日まで1日4時間の時間割で進められました。1時間の授業のうち、双方向型授業を30分ほど行った後、課題を出して取り組ませ、時間内に終わらない課題は宿題にして、学力の定着を図りました。
オンライン授業初日のホームルームではディスプレイ越しではありますが、久しぶりにクラスメートと再会でき、生徒たちは大喜びしたそうです。
「生徒はイキイキとしており、いかにオンライン授業を楽しみにしていたのかがわかりました。生徒と教員、そして生徒同士が互いの表情を見たり、声を聞いたりできることで、生徒の授業への参加意識や学習意欲が高まりました」
と稲垣先生と小島先生は振り返ります。
6月2日には学校が再開され、生徒は週に3日間のみ登校し、密集を防ぐために通常の教室ではなく、広い教室を利用するなど対策をして授業を行いました。登校再開後もロイロノートを活用するなど、休校時の経験も活かしながら、生徒に寄り添うサポートを続けています。
コロナ対策事例1
2台のデバイスを使用して授業
1台はZoom、1台に教材を参照
「オンライン授業に向けて、各ご家庭にはiPadのほかに、タブレット端末やPCなどもう1台のデバイスを用意してもらいました。この1台をZoom用に使います。生徒はZoomを通してクラスメートや教員の顔を見ながら授業を受け、iPadではロイロノートに配布された教材に目を通したり、課題に取り組んだりしました」(小島先生)
生徒は授業中にロイロノートの『提出箱』に課題を提出。教員は、その課題をその場で添削して、授業時間内に生徒に返却していきました。
「Zoomにはペンで書き込める機能があるのでこれを活用し、理科の授業では、Zoomを黒板代わりに板書して授業を進めました。簡単な実験を行い、リアルタイムで見せながら授業を行う取り組みも行いました」(稲垣先生)
授業動画を撮影してYouTubeにアップする教員もおり、教員全員が教科や内容に合わせて工夫を凝らし、オンラインでもわかりやすく、興味を持てる授業を行うことに熱意を注いでいたのです。


コロナ対策事例2
教員が心を一つにして
健やかな学校生活をサポート
夏休み中の7月21日~31日、8月20日~29日の期間には、午前中のみ授業を行いました。オンライン授業ではカバーしきれなかった範囲の学習を取り戻しました。
新学期を迎えた9月からの1カ月間はできるだけ電車が混み合う前に帰宅できるよう、新型コロナウイルス感染防止対策として、1時間早く下校できるように授業時間を50分から45分に短縮しました。10月からは通常の時程に戻しています。
一方、部活動は夏休み前に再開しました。部活動ごとに、さまざまな工夫がなされています。サッカー部の顧問を務める小島先生は「広いグラウンドを使って、接触せずに練習できるよう注意しています」と話します。
吹奏楽部の顧問を務める稲垣先生は「楽器の演奏では飛沫量が少ないことがわかったので、教室の換気をこまめに行い、夏休みも3時間を超えないようにして練習しました」と話し、感染を防止しながらも部活動が楽しめるように工夫しています。


先生から一言
生徒のやる気を引き出し
活気ある授業を

生徒たちの熱気、黒板にチョークで書く時の小気味良い音、教室に響く生徒や私たち教員の声など、どれもオンライン授業では得られないものです。今回のコロナ禍で普段の授業がいかに尊いものかを再認識させられました。これからは、毎日の授業を今まで以上に大切にしていきたいと思っています。(高2担任・理科/稲垣圭一先生)
心と心が通い合う授業を
今後の授業に活かしていきたい

対面の授業では、生徒の雰囲気から「この生徒は発言したがっている」「今は集中している」という気持ちが伝わってきます。Zoomは生徒の顔しか映らず、得られる情報がわずかです。休校中のオンライン授業で、対面による授業の大切さに改めて気付きました。今後は心と心がさらに通い合う授業をめざしたいと考えています。(中3担任・英語科/小島陵亮先生)
(この記事は『私立中高進学通信2020年12月号』に掲載しました。)
目黒学院中学校
〒153-8631 東京都目黒区中目黒1-1-50
TEL:03-3711-6556
進学通信掲載情報

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