私立中高進学通信
2020年11月号
実践!未来の学び「SDGsと探究学習」
十文字中学校
企業とのコラボレーションで
SDGsを学ぶ探究学習
同校の探究学習『Move on プロジェクト』の一環でNECに興味を持ち、自らアポをとって訪問した昨年の高2生。
この訪問が今年度のコラボのきっかけになりました。
生徒の興味や関心を
分析しテーマに
社会で活躍できる自立した女性の育成をめざす同校では、主体的に学び、自らの道を切り拓く力を高めるため、『Move onプロジェクト』を推進。ICT教育や探究学習を中心とする先進的な教育に取り組んでいます。
今年度から日本電気株式会社(NEC)と協働して、探究型学習プログラムの開発に取り組んでいます。自ら課題を発見し、思考力や判断力を働かせて問題解決していく〝探究〟のプロセスを、高1から経験させるのが狙いです。
SDGs(※1)は、今の教育において重要な学習テーマです。生徒がそれらを自分のこととして、テーマを深く掘り下げ考えることで、学びが豊かになります。そこで、ビジネスを通じてSDGsに取り組んでいるNECと協働し、生徒たちの新たな探究学習に活かすことになりました。
このきっかけを作ったのは昨年の高2生です。SDGsを学ぶ探究授業のなかで、自発的にNECにアポイントをとり、企業訪問したことからご縁がつながりました。
コロナ禍による休校中は、オンラインでも探究学習を進められるようにと、NECが同校のためにスペシャルサイトを開設しました。そこにはICTを活用して世界のさまざまな課題を解決した、同社の事例が動画で紹介されています。生徒たちは自宅で動画を視聴し、自分が興味のあるSDGsのテーマについて振り返りをしました。
※1 SDGs…「Sustainable Development Goals」の略。2015年に国連で採択された、2030年ま でに達成すべき17の国際社会共通の持続可能な開発目標。
同校向けのオンライン学習コンテンツを掲載したNECのWebページ(提供:NEC)。
自主性と創造力を
発揮する場が誕生
サイトでの生徒の視聴傾向や振り返りの傾向を分析したところ、貧困や飢餓の問題、医療や教育の平等などに、生徒たちが強い関心を持っていることがわかりました。副校長・高等学校教頭の横尾康治先生は「今回のNECとの協働で、生徒が学んでみたいこと、解決したいと思う内容がはっきりしました」と話します。
これらのテーマを、「社会に出て役に立つ人に」という同校の建学の精神と重ねることで、新たな探究学習の方向性が定まりました。2学期からは、SDGsを遠い世界の出来事ではなく「自分ごと」として捉えられるよう、授業でディスカッションを進めています。SDGsの達成に尽力してきたNECの助言と、生徒の柔軟な発想が、新たなものを生み出す契機になることが期待されています。
このほかにも、生徒の自主性と創造力を引き出す生徒広報委員会も新たに始動するなど、同校の自主性を育む実践的な教育は、さらなる進化を遂げようとしています。
受験生の不安を説明会で解消
「生徒広報委員会が始動」
主体的かつ創造的に1つのものをつくり上げる機会を設けようと、今年度から高2生による「生徒広報委員会」の活動が始まりました。担当する生徒たちは、学校説明会での学校紹介プレゼンテーションやTwitter・Instagramによって学校の情報発信を担当します。教員に指示されたことを手伝うのではなく、「自分たちの学校の良さを自分たちで発表する」生徒主体の取り組みです。
委員の生徒は、8月に開かれる学校説明会に向け、事前に他校の中3生にアンケートを実施し、高校受験で不安に思うことや、女子校に対するイメージなどについて調査しました。そして、一般的な女子校のイメージと同校での実際の学校生活との「ギャップ」を解消しようと、プレゼンテーションをしました。
「生徒たちは、中3生だけでなく、別の高校に進学した生徒にもインタビューをして情報を集めていました。説明会後、我々も初めて聞いて、そこまでやってくれたのかと驚きました。主体的に関わる機会を作れば、生徒は大きな力を発揮できるのです」(横尾先生)
学校説明会でプレゼンテーションする広報委員会の生徒たち。
多彩に体験 自由に表現
「中学で探究学習の基礎を学ぶ」
探究学習の下地は、中1から培っていきます。11月に実施する『上野動物園見学会』では、グループに分かれて、自分たちで観察したい動物を決め、計画表に沿って観察をします。じっくりと時間をかけて観察やスケッチをし、それぞれの動物の特徴を自分たちの好きな形で発表します。
「コンピューターでスライドを作ってもいいですし、劇を取り入れるグループもあり、生徒たちは楽しみながら表現力を身につけています。中学3年間でさまざまなことを調べて発表する経験を積むことが、高校からの探究学習を深めるために重要なのです」(中学校教頭/浅見武先生)
中2では職業調べ、中3では個人の自由研究に取り組み、探究するためのスキルを身につけていきます。
オンライン授業導入
「ハイブリッド学習を推進」
コロナ禍による休校中は、「Google Classroom」(※2)や「Zoom」「YouTube」などを活用したオンライン授業が全学年で実施されました。双方向のライブ授業、後から繰り返し視聴できる動画配信型の授業のほか、音声だけを配信するラジオ講座のような授業まで、生徒の関心が高まるよう、どの教員も工夫していたそうです。
「授業動画を自分のペースで聞き直して理解が深まったという生徒の声がありました。教員にもオンライン授業で使用したICTツールをもっと取り入れていこうという機運が高まり、登校再開後も活用しています」(横尾先生)
ICTを活用しつつ、中学校の補習など、ていねいな指導が必要な授業は、オンラインではなく対面授業で行うなど、「ハイブリッド型」の教育が同校で一気に浸透しました。
※2 GoogleClassroom…Googleの授業支援ツール。課題の配布や振り返りなど、教員と生徒の間の連絡をオンライン上で一括管理できます。
(この記事は『私立中高進学通信2020年11月号』に掲載しました。)
十文字中学校
〒170-0004 東京都豊島区北大塚1-10-33
TEL:03-3918-0511
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